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618話 見たのは?

「ウル、スキルが増える事例はあるのか?」


首を横に振るウルさんにお父さんがため息を吐く。

アルスさんは、2人の反応に小さくなってしまっている。


「お父さん、ウルさん」


考え過ぎてアルスさんの状態に気付いていない2人に声を掛けると、ハッとした表情をした。


「アルス、悪い」


「いえ」


ウルさんが困った表情で私を見るけど、慰める方法なんて知らないし。

でも、このままではアルスさんが、落ち込んだままだ。

えっと、どうしたらいいんだろう?

そういえば、スライムと言っていたけど、どの子を見たんだろう?


「アルスさん、どんなスライムを見たんですか?」


「あっ、青いすごく綺麗なスライムで……」


青いスライムはソラだよね。

そうか、ソラの事を見たのか。


「その……」


ん?

何か言いづらい事でもあるのかな?

まさか、ソラに何かあるの?


「ソラに何かあるんですか?」


「いえ、違います。どうしてか、ガルスの頭の上で飛び跳ねていて」


「あぁ、何だ、そっか」


つまりソラは、ガルスさんを気に入るのか。

頭で暴れているなら、そういう事だよね。

次に会った時に、謝っておくべきかな?


「えっ? あれ?」


「はい?」


アルスさんと私は、見つめ合って首を傾げる。

えっ、どうしてアルスさんがこんな反応なんだろう?

何かおかしかった?


「えっと、アイビーさんがテイムしたスライムが、ガルスの頭の上にいたんです」


「はい。聞きました」


ちゃんと理解しているから、詳しく言わなくてもいいのに。


「「ぷっ」」


ん?

笑い出したお父さんとウルさんを見る。

今の会話で笑うところなんて無かったよね?


「どうしたの?」


「アイビー、前にも言ったがソラ達は普通ではないからな?」


それは知ってるけど……。


「あっ、そうか。テイムした魔物って、テイムした人にしか触らせないんだっけ?」


確か、そんな事を聞いたような気がする。

本にも、そう紹介されていたはず。


私にとってソラ達の行動が基本になるから、つい忘れちゃうんだよね。

だって、私には本に載っている情報が役に立たないんだもん。


「そういう事。アルス、君が見たスライムはアイビーがテイムしたソラだ。ソラはレアスライムで、一般的なスライムとは異なる行動をとるから。ガルスの頭に乗っていたとしても、特に気にする事は無いから」


お父さんの説明を真剣に聞くアルスさん。


「そうだったんですね。よかったです。実は言えなかったんですけど、次の夢でガルスがそのソラというスライムを両手で掴んで歩いている姿を見てしまって、もしかしてアイビーさんから盗んだのかと思って。そんな事をする人ではないと分かっていても、もしもという事があるかもしれないから。ガルスは時々変な事をしでかすので、ちょっと頭がどうにかしてしまって、奪ったのかと」


えっと、今ちょっとガルスさんに対して凄い事を言わなかった?

頭がどうとか。

それに彼女は、こんなによく話す人だったんだね。

ちょっと驚きだな。


「いえ別に、ガルスの頭が変とは言ってないですよ。ただ、時々思い切った事をしちゃうというか、でも人の物を盗んだ事は無いです。それは本当です。ちょっと情報を盗んだぐらいで――」


「アルス、アルス、大丈夫だから。落ち着こうか」


ウルさんが慌ててアルスさんを止める。

なんだか、そのまま放置するとガルスさんの秘密を言っちゃいそうだったもんね。


「あっ!」


アルスさんも気付いたのか、さっと顔色が悪くなる。

その反応を見た、お父さんとウルさんが苦笑した。


「大丈夫だから。何も聞いてないし」


「あぁ」


お父さんの言葉にウルさんが頷くと、アルスさんが小さく頭を下げる。


「すみません。テイマーとテイムした魔物の間には他者には分からない絆があると聞いた事があったので、もしも盗んだんだとしたら大切な絆を引き裂いた事になるし。だからガルスを止めようと思っても、どうしたらいいのか思いつかなくて。そうしたら色々と考えちゃって」


そうか。

アルスさんは、無理やり家族との絆を引きちぎられたから。

だから少し過剰に反応してしまったのかも。


「ソラに会いますか? 他にフレムにシエルにソルがいるんですよ」


「……えっ?」


あっ、驚いている。


「私の大切な家族です。紹介します」


笑って言うと、アルスさんはちょっと嬉しそうに笑みを見せる。


「夢で見て、可愛かったから気になっていたんです」


「ありがとう。とっても可愛いです」


ソラの可愛さを分かってくれて嬉しい。


「よし、アルス。ガルスとエバスはどうした?」


急に関係ない事を言い出したウルさんに首を傾げる。

アルスさんも戸惑っている。


「えっと、昨日の夜2人で遅くまで話し込んでいたみたいで、お昼を食べたら寝てしまって。今もまだ寝ていると思います」


「そうか。起こしてきてくれ。ドルイドとアイビー、それとガルスとエバスとアルスで契約をしよう。お互い秘密があるから、契約は必要だ。アルスの夢で、一緒に旅に出るみたいだし。それなら契約をとっとと結んで、もう少し関係を深めた方がいい」


契約か。

まぁ、そうなるだろうと思っていたので驚きはない。


「アイビーは、それでいいか?」


お父さんを見ると、真剣な表情をしている。


「うん。契約が大切な事なのは知ってるから」


「そうか」


お父さんが、嬉しそうに笑うので私もつられて笑ってしまう。

ちゃんと私の意思を確認してくれるのが嬉しい。

まぁ時々、聞かずに突っ走る事もあるけどね。


「アルスはどうだ?」


ウルさんの質問に、アルスさんがかなり困惑した表情を見せた。

それに、お父さんとウルさんが首を傾げる。

これからの事を考えると、契約は必要だと思うんだけどな。


「どうした?」


「その……」


目が泳いでいるアルスさんに、お父さんの眉間に皺が寄る。


「何を隠している?」


「ドルイドさん達に対してではないです。あの、ここに来た事をガルス達に言い忘れた事を思い出して」


えっ?

つまり、ガルスさん達に相談せずに私たちに夢の秘密をしゃべっちゃったの?

あぁ、アルスさんが1人でここに来た時に、疑問に思うべきだったんだ。

ガルスさん達の様子から、1人で重要な事を話させるわけないんだから。


「それは……。アルス、すぐにガルス達を起こしてここに来るように言ってくれ。俺から説明するから」


「すみません」


慌てて立ち上がったアルスさんが、急いで離れに戻っていくのを見送る。


「彼女、大丈夫か?」


うん。

お父さんの気持ちがよく分かる。

それにしても、アルスさん大丈夫かな?

ガルスさんに怒られたりしないかな?

そうだ。


「気持ちを落ち着けるお茶、用意しますね」


どこまで効果があるか分からないけど、とりあえず用意しておこう。

それにしても、アルスさんはもっと慎重に行動する人だと思っていたな。


「あっ、来たな」


離れから、アルスさんとガルスさん、エバスさんの気配がこちらに来たのを感じた。


「だから、何があったんだ?」


アルスさんを問い詰めるガルスさんの声が聞こえる。

その後を、アルスさんが何か言っているが、此処からではよく聞こえない。


「はっ? 言ったのか?」


あ~、話しちゃった。とウルさんが苦笑しながら、扉を開けてガルスさんに声を掛ける。


「おはよう、ガルス。とりあえず、中に入ってくれ」


少し怒った表情のガルスさんと、戸惑った表情のエバスさんが部屋に入ってくる。

アルスさんは、ガルスさんをちらちらと見ている。


「とりあえず、アルスから夢の事について聞いたから」


あれ?

ウルさんの話を聞いた時、一瞬だけどガルスさんが泣きそうな表情をしたように見えたけど見間違いかな?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アイビーちゃん、家族ですよの件で、トロンだけ忘れていますか。スライムでは無いけれども、トロンも家族ですよね。気になりますねら、 [一言] 占い師のスキルは増えるのね。けれども未来視でア…
[気になる点] 「私の大切な家族です。紹介します」って書いてあるのになんでトロンの名前ないの?スライムだけ?
[気になる点] アイビーがみんなを紹介するときにトロンを言わないのがちょっと気になる、アイビーなら言わないのはおかしいかな~あ~木の魔物だからとか理由があるなら別ですが
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