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603話 私みたいに?

「騎士服の胸に勲章(くんしょう)がある奴には気を付けろ。屑だから」


勲章は業績を表彰するために授与された記章(きしょう)だよね?

それを持つ人が屑?


「多い奴ほど、金を積んだという印だ」


お金で買えちゃうんだ。


「本当の屑だな」


お父さんが呆れた表情をすると、騎士が諦めた表情で頷いた。


「部下の功績を、掻っ攫っていくような奴ばかりだよ」


なんだか色々あった雰囲気だな。

それにしても、部下の功績を奪うなんて。

人として最低最悪。

それにそんな事を繰り返していたら、部下の人達はやる気が無くなっていくだろう。


「1つ、確認があるんだが」


「なんだ?」


お父さんを見ると、周りを確認してから騎士に1歩近づく。


「俺達とガルス達以外に、村から出た者はいないか?」


ガルスさん達を見張っていた人の事を聞きたいのかな?

騎士を見ると、不思議そうな表情で首を横に振った。

いないのか。


門を見る。

暴走した魔物がいるから、きっちりと閉じられている。

あそこから出入りするには、門番もしくは下位冒険者が開ける必要がある。

出入りしたら、絶対に分かるよね。

という事は、隠し扉の方を使ったのかな?


「村から出た者はいないが、森に行った者達ならいる。あっ、ちょうど戻ってきたな」


「冒険者か」


お父さんが(いぶか)しげに、森から出てきた2人の冒険者を見る。

そうか、門を開けなくても森に行ける人たちがいたね。


「不気味な音が聞こえると言い出して周りを不安がらせるから、大人しくさせるために森の巡回を頼んだんだ。昨日までは周りと同じように怖がっていたくせに、今日はなぜかやる気を見せて森の巡回に行った下位冒険者達だ。不思議だよな。昨日までは門の外に出るのも怖がっていたくせに、今日は2人だけで森に入れるんだから」


凄い意味ありげな言い方だ。

チラリと騎士を見ると、冷ややかな視線を冒険者達に向けている。


「奴らが森で何をしたんだ?」


「たぶん、ガルス達の見張りだ。ただ気配を完全に消していたから、絶対にそうだとは言えないが」


お父さんの言葉に、騎士が驚いた表情を見せる。


「気配を消すマジックアイテムを持っているのか? 下位冒険者が持てる物じゃないだろう。ちょっと揺さぶるか?」


揺さぶる?


「……その格好では駄目じゃないか?」


「……ちっ」


悔しそうに舌打ちする騎士に、お父さんが苦笑する。

騎士の格好をしていると揺さぶれない?

……脅し?

「凄い物を持っているのを知ってるぞ」みたいな?


「この格好は少しの無理は通るが、規律に縛られるからな。残念だ」


本当に残念そう。


「ウルに頼むか。おそらくそういう事が得意な者がいるだろう」


「いるだろうな。あの組織はそういう事に抜かりはない」


騎士が少し遠い目をすると、疲れた表情でため息を吐いた。

一体何を思い出したんだろう。


「話が済んだみたいだ」


お父さんの視線を追うと、休憩室からウルさん達が出てきた。


「見張られていたのは、ウルの後ろを歩いている3人で間違いないか?」


お父さんが頷くと、騎士が今まで以上に声を潜める。


「女性は知らないが男性2人、王都で少し関わった事がある者達だ。その時、ガルスという名前では無かったはずだ」


「えっ!」


名前が違うという事は、私と同じで変えたという事だよね。

あっ、驚いて声が出ちゃってた。


「前に会った時に『あれ』とは思ったんだが、8年ぐらい前の事だったから断定はできなかったんだ」


8年も前なんだ。


「森に出ていく2人を、ゆっくり観察して間違いないと確信が持てた。ただ、前に呼ばれていた名前までは思い出せないんだが」


「分かった。ありがとう」


お父さんは流石だよね。

驚いているはずなのに、態度に全く出ないんだから。

私はとりあえず、ウルさんに手を振っておこう。

あっ、ウルさんに不審気に見られてしまった。


「遅くなって悪かったな」


「いや、話は無事に済んだのか?」


何事もなかったように、ウルさんとお父さんが話す。

私の態度でウルさんも何か気付いたはずなのに……。

あれ?

今ガルスさん、騎士を見て驚いた?

ガルスさんも、騎士の人の事を覚えているのかな?

でも、村を出ていく時も騎士の人を見てるよね?

隠れ家でも会ってるはずだし……あれ?


「あぁ、ラビネラについては、調査が入るだろうと門番が言っていたよ」


今のラビネラを調査しても、何も出ないんだろうな。

無駄足になると分かっていても何も言えないのは、ちょっと申し訳ないよね。

何か言えたらいいんだけど……。

いや、言っちゃ駄目だけど。


ぽん。


「えっ?」


「アイビー、行こうか」


お父さんを見ると、肩が微かに揺れているし口元が引きつっている。

どうやら笑いを堪らえているようだ。

でも、何に笑っているんだろう?


「アイビー、何か言いたそうにしては止めてを繰り返してるのがまるわかりだぞ」


えっ、そんなに態度に出てた?

お父さんを見ると、小さく笑っている。

もう少しうまく感情を隠さないとな。


お父さんが、私の頭をぽんぽんと撫でる。

チラリと視線を向けると、すっと顔が近づく。

ん?


「ウルには、騎士から聞いた話を簡単に言っておいたから」


小声でささやかれた内容に、いつの間にと唖然としてしまう。

そんな私の態度に噴き出したお父さんを、つい睨んでしまう。

これって、周りからは遊んでいるように見えるんだろうな。

お父さん、きっとわざとだ。


騎士や門番さん達にお礼を言って、村に入る。

隠れ家に向かって歩き出すと、ガルスさんとエバスさんが、門の方を窺っている事に気付いた。

ガルスさんだけでなくエバスさんも騎士を覚えているのだろうか?

2人を見ると、微かに緊張しているのが分かる。

その2人の様子に、アルスさんも表情が硬くなっている。


「ガルス達は、これからどうするんだ?」


ガルスさんが警戒するようにお父さんを見る。

騎士から何か聞いていると思っているのかも。


「借りている宿に戻ろうかと……」


宿?

周りに人がいる大通りで、隠れ家とは言えないか。


「そうか。それなら一緒の方角だな」


「はい」


お父さんは、ガルスさん達の様子を一切気にせずに屋台へと視線を向けている。

それに少し警戒を解いたのか、ガルスさんが小さく深呼吸をした。


「アイビー、何か買っていこうか? 今日は疲れただろう?」


確かに、ちょっと疲れた。

襲われて、走って、色々知って、森に消えていく人を見送って……すごい1日だ。


「うん、買ってかえろう」


今日は(らく)させてもらおう。


「だったら、お薦めの店があるから紹介するよ。ドルイドは肉でいいよな? アイビーは何が良い?」


ウルさんのお薦めのお店か、楽しみ。


「お父さんと一緒でお肉がいいです」


今日はなんだかすごくお腹が空いているし。


「大通りにある道具屋『あるある』を左に曲がって少し歩くと『ちょう』という店があるんだ。そこがお薦めの店だ」


「あっ」


ん?

今の声はエバスさん?


「どうした?」


「いえ、なんでもないです」


なんでもないと首を横に振るが、エバスさんの顔色が少し悪い気がする。

お父さんも気になるのか、様子を窺っている。


「悪い、俺達は先に宿に戻るよ」


エバスさんの背に手を置いたガルスさんが、ウルさんに声を掛ける。


「分かった。夕飯を、買っていこうか?」


「いや、俺達は――」


「奢るよ。離れではなく、俺達が泊っている方に来てくれ」


ガルスさんの言葉を遮るようにお父さんが言うと、答えを聞く前に私の背に手を当てて歩くように促した。

その行動に首を傾げながら、付いていく。

ウルさんも、少し戸惑っているがお父さんの行動を止める事はしないようだ。


「どうしたんだ?」


「エバスは自分たちに見張りがいる事に、気付いたのかもしれない」


だから顔色が悪くなった?


「見張り?」


お父さんが頷くと、ウルさんが嫌そうに顔を歪めた。


「森で会った時に気付いたんだ。あの3人を見ている視線に」


「気配は感じなかったが……マジックアイテムか?」


「おそらく」


お父さんの答えを聞いて、大きく息を吐き出すウルさん。

今日は本当に、色々あるなぁ。

夕飯、ゆっくり食べられるかな?


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― 新着の感想 ―
[一言] アイビーちゃんの最初の人達が運良く善人ばかりだったので、屑ばかりが目について痛いですね。
[気になる点] 声をかけた相手とその後のセリフを発した相手が同じなのか、違うのかわからない。 間違いなのかどうかもわからない。 どれが誰のセリフか、合っているか見直してほしい。
[気になる点] 登場人物がややこしすぎる。
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