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596話 洞窟へ

「2人とも、さっきの人が出てきたよ」


洞窟に視線を向けると、年配の男性が大量の荷物を持って出てくるところだった。

あんな大量の荷物を持って、暴走した魔物がいる森を歩くつもりだろうか?

それとも、暴走した魔物を近付けさせないマジックアイテムでもあるのだろうか?


あっ、見張り役の人が年配の人に近付いた。

苛立っているみたいだから、近付かないほうがいいのに。

それにしても、どうしたんだろう?

ずっと空中を見つめていたのに。


「クスリ……くれ」


かすれた声が耳に届く。

本当にクスリの事しか頭にないんだ。


「ちっ、煩い。どけ」


「クスリ、クスリ」


虚ろな目で、年配の男性に近付く男性。

あれ?

あの男性、手に何か持ってない?


「いい加減にしろ! お前のようなゴミに構っている、ぐふっ……」


あれっ、もしかして刺された?


「き、さまっ……」


年配の男性の手から荷物が落ちる音が聞こえた。

ぐらりと傾く体。

刺した男性は、それを見ながら「クスリ」と言っている。


「あの年配の奴が、クスリを与えていたみたいだな。ウル、あれは助けるべきか?」


お父さんが、ものすごく嫌そうな表情をする。

助ける気なんて全くないのが、一瞬で分かる表情だ。


「あれは、どう見ても自業自得だろ。という事で、俺は何も見ていないからな。それに、彼は逃げる予定だったんだろ? 逃げる場所がちょっと変わっただけだ」


ウルさんも、全く助ける気はないようだ。

それにしても逃げる場所が変わっただけ?

どう見ても、年配の男性は助けないと死にそうなんだけど……。


「アイビー」


「はい?」


ウルさんを見ると、


「オットミス司教からは、逃げられたんだから希望通りだろう?」


……まぁ、そうなのかな。

確かに、オットミス司教からは逃げられたと言えなくもない……のか?


ズルズルッ、ズルズルッ、ズルズルッ。


「クスリ、とり……いこう」


刺した男性は年配の男性の腕を掴むと、引きずって森へ入って行く。

年配の男性は腕を放させようと暴れているが、逃れる事が出来ずそのまま引きずられ森の中に消えていった。


「後味が悪いな」


ウルさんがため息を吐くと、木の影から周りを見ながら出る。


「そうだな。で、どうする?」


先ほどまでは、村に戻る予定だったけど。


「とりあえず、洞窟をざっと見ていくか? あっ、あの3人と遭遇したら面倒だな」


ウルさんが、3人の冒険者が向かった森へ視線を向ける。

確かに会ったら面倒になるだろうな。

でも、彼らは此処に戻ってくるかな?

年配の男性を怖がっていたけど、関係は希薄に感じたし、暴走した魔物の怖さは分かっているようだった。

なんとなく、暴走した魔物を探すより、早くここから離れようとしている気がする。


「あいつ等なら、逃げているような気がするが」


お父さんも私と同じ考えだ。

まぁ、ウルさんも頷いているから、皆同じ意見だね。


「にゃうん」


シエルの鳴き声に上を見ると、ふわりとシエルが降りてくるところだった。

本当に身軽だよね。

あの大きな体で、どうして音もなく降りられるのか不思議。


「シエル、お疲れ様」


「にゃうん」


頭を撫でて喉を撫でると、ゴロゴロと音が聞こえる。


「アイビー、シエル。洞窟には一緒に来るか? それとも、外で待っているか?」


ウルさんの言葉に、シエルを見る。


「私は一緒に行くけど、シエルはどうしたい? 一緒に洞窟の中に入る?」


「にゃうん」


「シエルも一緒に入ります」


嬉しそうにすり寄るシエル。

ウルさんが、私の答えを聞いてシエルを撫でる。


「了解。すぐに入るけど問題は?」


首を横に振ると、ウルさんがお父さんを見る。


「問題ない。行こうか」


お父さんの言葉にシエルが、先頭に立って洞窟へ歩き出す。

どうやら、案内役になってくれるらしい。


「洞窟に入る前に、この血を消していくか」


ウルさんが、洞窟の前にある年配の男性の血を見る。

遠くからでは分からなかったけど、結構な量の血が流れていたようだ。


「そうだな。逃げたとするなら、これは無い方がいいだろう」


そうだよね。

普通は、大怪我を負っている状態で、魔物がいる森の中を逃げようとなんてしないからね。


「確か、血を消すマジックアイテムが、あったはずだ……これか? 違うな。こっちか?」


ウルさんがマジックバッグから、色々なマジックアイテムを取り出していく。

それを呆れた表情で見るお父さん。


「少しは整理をしたらどうだ?」


「これでも整理した後なんだが……」


「えっ、それで……あっいえ、何でもないです」


つい、驚いて言葉にしちゃった。


「アイビーに呆れられた」


「そりゃ、そうなるだろう。それよりまだか?」


お父さんの言葉に、不満そうな表情をするウルさん。

それにお父さんは肩を竦める。


「あった! これだ、使い方は……血の上に置いてボタンを押すだけだ」


ウルさんから、マジックアイテムを受け取ったお父さんが、それを地面に広がった血の上に置いてボタンを押した。

すぐに地面に広がっていた血の赤い色が緑に変わっていく。

なんとも不思議な光景に、傍に寄ってみる。

一体、どんな変化が起きているんだろう?


「このマジックアイテムを使うと、血の痕跡を完全に消してくれるし、においも消してくれるんだ。あとでどんなに調べても、血の痕跡は一切出ない」


においまで消してくれるんだ。

それだったら、血のにおいで集まってくる魔物の心配もないね。

でも、この緑の何かが残っていたら、駄目だよね。


「あっ!」


マジックアイテムで緑に変わった物が、目の前でスーッと消えていく。

凄い、何の痕跡も残ってない!


「終わったみたいだ。凄いな、このマジックアイテム」


お父さんがマジックアイテムのボタンを押して動作を止めると、ウルさんに返す。


「俺の仕事上、必要な物だからな。ちょっと金を出して、いい物を買ったよ」


ウルさんの仕事上という事は、調査員で必要なのかな?

ん? 血の痕跡を消す?

……あ~、うん。

調査員は大変だね。


「さて、洞窟からは何が出てくるかな? ラビネラの事もあるしな」


1つ息を吐き洞窟に入るウルさん。

その隣をシエルが歩く。


あれ?

そういえば、年配の人の荷物は……あぁ、洞窟の入り口の奥に隠したのか。

あれは、村に帰る時に持って行くつもりだね。


「ドルイド、アイビー。こっちだ」


洞窟に入ると、すぐにウルさんから声が掛かる。

洞窟内は、少し開けた空間があり、そこから奥に続く道が2本ある。

そのうちの右側にウルさんの姿があった。


「シエルが、こっちだと」


「にゃうん」


ウルさんとシエルの後に続き、右側の道を進む。


「この道、(くだ)っているみたいだな」


「そうだね。下りてるね」


ゆるやかな勾配で気付きにくいが、微かに下りている感覚がする。

5分ほど歩くと、広い空間に出た。


「これって……」


目の前の光景に、言葉が途切れる。

広い空間には、大きな檻が5個。

そのすべてに、大量のラビネラが閉じ込められている。

そして微かにする血のにおい。


「実験を、していたみたいだな」


ウルさんが指す方を見ると、テーブルの上に死んだラビネラがいた。

傍には、ナイフや鋏などが置いてある。

年配の人が白衣を着ていたのは、もしかしたら研究者だったからなのかもしれない。

まぁ、まともな研究をしていたとは思わないけど。


「ウル。檻の中の床を見ろ」


「ん? これって……洗脳の魔法陣か何かか?」


「たぶん、そうだろう。ハタカ村の魔法陣で見た記号だ。それに、サーペントが閉じ込められていた洞窟でも見た事がある」


「ん?」


お父さんの言葉に首を傾げるウルさん。


「後で説明する」


「あぁ、頼む」


檻に近付き魔法陣を見る。

確かに見覚えのある記号が魔法陣に使われていた。


ごめんなさい。

途中からウルさんがジナルさんになっていました。

ご指摘、ありがとうございます。

これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。


8月20日に「最弱テイマー」5巻が発売されます。

オリジナルグッズ、アクリルキーホルダーも完成しました!

どうぞよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 血の痕跡を完全に消すマジックアイテムって販売をライセンス認証制度にしないと完全犯罪し放題かもしれませんね。 というかやけにマジックアイテムの技術力が、高いですね。
[一言] いつも楽しく読んでいます。 修正ありがとうございました。 暑い日が続きますが、熱中症などお身体お気をつけください。 今後のストーリーどうなるのか楽しみです。
[一言] >逃げる場所がちょっと変わっただけだ うん、あの世にですね。 ラビネラ達が可哀想。 黒幕が誰か分からないけど、相応の報いを受けて欲しいです。
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