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595話 洞窟を守る存在

「あの見張り役、何かおかしくないか?」


ウルさんが隠れている木から少し身を乗り出し、洞窟の前に立ってる男性を見る。

洞窟が見える場所に来た時は、洞窟の前に4人の男性がいた。

暫く様子を見ていると、3人の男性が洞窟の中に入っていった。

そして残された見張り役の男性なのだが、どうも様子がおかしい。

最初に見た時は気付かなかったが、どこかぼんやりとしているのだ。


「もしかして、クスリか?」


「あぁ、夢の中を漂っているのか」


お父さんが嫌そうに言うと、ウルさんが冷笑する。

もう一度男性の様子を見る。

体が左右にふらふらしていて、視線も空中を向いたまま動かない。

そして、表情も虚ろな感じで……、


「気持ち悪いね」


どこか薄気味悪いものを感じる。


「あれは、相当依存しているな。おそらく、手遅れな状態だろう」


お父さんの説明に頷く。

カリョの花畑をトロンが枯らした時に、クスリについて勉強した。

クスリは複数あるが、カリョの花から採れるクスリは依存性が高いとお父さんが言っていた。

そして、最も死亡率の高いクスリだとも。


「それにしても、あんな状態の奴を見張り役にするか?」


ウルさんの言葉にお父さんが頷く。


「おかしいよな」


見張り役の男性の状態は、どう見ても見張りの役目を果たしていない。

彼の状態を見る限り、おそらく日常生活にも支障をきたしているはず。

そうなれば、彼と一緒に仕事をしている者達は気付くはずだ。

「こいつはもう駄目だ」と。

それなのに、今も見張り役をしている。

何らかの意図があるのだろうか?


「洞窟から誰か出てくるな」


ウルさんが、洞窟から見えないように身を隠す。

シエルは、木の上で待機中。

もし、私達の存在がばれた時には、木の上から降りてもらってちょっと暴れてもらう予定だ。


「どういう事だ! なぜ、1匹も戻って来ない!」


洞窟から4人の男性が出てくる。

先頭にいるのは、周りより一回りほど年配に見える男性でかなり怒っているようだ。

しかも医者が着るような白衣姿だ。


「ちっ、本当にいない。なぜだ? 何があった?」


年配の男性が、隣に立っていた男性の胸倉を掴む。

胸倉を掴まれた男性は、慌てて首を横に振っている。


「分からないんです! 本当に何が起きたのか、いつも通りだったのに!」


「分からないじゃない! 奴らがいないと誰がここを守るんだ!」


1匹という事は、動物か魔物の事だよね。

もしかして、魔物か動物にこの洞窟を守らせていたという事かな?

という事は、あの胸倉を掴まれている男性はテイマーなの?


「はぁ、少し前にもかなりの数が消えたというのに。クソが! クソが!」


あっ、テイマーかもしれない男性が叩かれてる。

ちょっと、痛そうだな。

あれっ、今「かなりの数」って言った?

そういえばさっきも、帰ってこなかった魔物か動物は「1匹も」と、言ったよね。

この言い方だと、あの叩かれている男性は、かなりの数の動物か魔物をテイムしている事になる。

……実は、すごいテイマーなのかな?

そういう事だよね?

あれ?

……でも、逃げられたんだっけ?

逃げられるという事は、テイマーとしては……。


「まさか、制御装置を壊したのか? 作るのには、時間がかかるんだぞ!」


制御装置?

年配の男性が、叩いていた男性から何かを取り上げる。


「反応しているので、壊れていません! 大丈夫です! でも、何回ボタンを押しても、戻って来ないんです!」


ボタン……制御装置?

テイマーじゃ、無い?


「あぁ、くそっ。あの騎士どもが邪魔をしなければ」


騎士ども?

それって、ホルさん達の事かな?


「あの……騎士達が、実験体を倒したというのは本当なんですか?」


胸倉を掴まれていた男性とは別の男性の言葉に、年配の男性が恐ろしい表情を見せた。


「ひっ」


聞いた男性が、年配の男性から数歩後退る。


「騎士のクソどもが。俺の作った物を殺しやがって」


ホルさん達が倒したのは、暴走した魔物だよね。

えっ、今、あの年配の男性は「作った」と言ったよね?

それって、暴走した魔物を誕生させたという事になるよね?


「……」


隣にいるお父さんと、近くにいるウルさんを見る。

2人の表情はかなり険しく、怒りを含んでいるのが分かる。


「どうして戻って来ない! 戻れ!」


カチッ、カチッ。

年配の男性が、制御装置らしき物を何度も押している。

が、暫くたっても魔物の姿はどこにもなかった。


「くそっ。こんな事が、オットミス司教にばれたら……」


あっ、教会と繋がった。

つまり、教会が暴走した魔物を誕生させて、この洞窟を守っていたんだ。

あれ?

カリョの花畑の見張り役を殺したのは、暴走した魔物だったよね?

……前から、制御出来ていなかったんじゃないの?


「ちっ。お前ら、森に入って実験体を探して来い!」


年配の男性が、周りにいる男性に指示を出すと、彼らの顔色が変わった。


「無理ですよ! それで制御が出来なくなっているなら、会った瞬間に殺されます」


「うるさいっ! お前らは指示に従えばいいんだ! やれ!」


うわ~、凄い横暴。

周りの男性は、かなり酷い顔色になってるな。

まぁ、暴走した魔物の恐ろしさは分かっているみたいだからね。

でも、今までその年配の人に協力してたみたいだから、自業自得だよね。


それにしても、暴走した魔物は何匹ぐらいいるんだろう。

帰ってこなかった原因は、制御が出来なくなったから……あっ、もしかしたら倒されている可能性もあるよね。

あっ!

頭上に視線を向ける。

隣にいるお父さんも、上にいるシエルを見ている事に気付いた。


「「……」」


シエルは、ここに来る前も暴走した魔物と遊んでたよね。

しかも、かなり長く遊んでいた。


お父さんと、顔を見合わせる。

そして、にこりと2人で笑い合う。

シエル、よくやった!

何匹の暴走した魔物を倒したのかは分からないけど、かなり痛手を与えたみたい。


「くっ」


小さな声に、隣を見るとウルさんの肩が震えている。

なんで笑っているのか分からず首を傾げると、ウルさんと視線が合う。

ウルさんの指が、頭上のシエルを指す。

あぁ、シエルが倒した事に気付いたのか。

にこっと笑うと、にこりと笑い返された。


「行けっ! 早く探して来い!」


年配の男性が、3人の男性の背中を押す。

押された男性たちは、真っ白な顔色で泣きそうだ。

暴走した魔物が何匹残っているのか知らないが、がんばれ~。

ふらふらと、洞窟から離れていく3人の男性を見送る。


「なんでこんな事に……。オットミス司教に、なんて説明したらいいんだ?」


あぁ、こっちも顔色が悪くなってる。

オットミス司教という人は、相当恐ろしい人なのかな?


「逃げるか? そうだ、逃げればいい。そう、そうだ」


年配の男性が、洞窟内に慌てて入っていく。

残されたのは、空中を見ながらふらふらしている見張り役の男性のみ。


「なんか、凄い事が色々と分かったな」


「そうだな」


お父さんが感慨深(かんがいぶか)い表情で言うと、ウルさんが同じような表情で頷く。


「ふぅ。これからどうするかな」


ウルさんが洞窟へ目を向ける。

見張り役はいるが、年配の男性が逃げ出してしまえば、あの洞窟を調べる事は出来るだろう。


「村へ戻ろう。あの洞窟は、仲間に調べさせるよ」


ウルさんが地図を取り出すと、洞窟の場所を確認しようとする。

が、すぐに首を傾げてしまう。


「どこか、分からないのか?」


苦笑したお父さんが地図を覗きこむ。

でも、お父さんも分からなかったのか、2人で首を傾げた。

シエルに確認したら、早いのに。


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― 新着の感想 ―
[一言] シエルに頼るという考えがサッと出てくるあたり、なんかなぁw
[良い点] 面白いです。 アイビーの周りの大人が護ろうとキチンと動いているのが良いと思います。 [気になる点] ウルさんが最後の方ジナルさんになってます。
[一言] 途中からウルかんとジナルさんがゴッチャになっていません?
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