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591話 スキルの確認

「おはようございます」


門番さん達に挨拶をして、森へ出る。

門番さん達以外に冒険者達の姿もあるが、数日前と違ってかなり落ち着いている。

不安で暴力的になっていた冒険者達を、騎士の人達は上手に落ち着かせたようだ。


「本当に大丈夫なんですか?」


門番さんの1人が、心配そうにお父さんを見る。


「俺もウルも強いから問題ない。それにここ2日ほどは周辺に暴走した魔物は出ていないんだろう?」


「それはそうですが……」


「本当に大丈夫だから。じゃ」


お父さんが歩き出したので、門番さんに小さく手を振る。

戸惑いながらも手を振り返してくれた彼は、かなり人が好いんだろうな。


「あいつ、あんなんで大丈夫か?」


門番さんの様子を見ていたウルさんが、ちょっと心配そうな表情を見せる。


「何がですか?」


「騙されやすそうに見える」


騙されって……確かに、ちょっと気が弱そうには見えたけど……。

後ろを振り返ると、まだこちらを不安そうに見ている姿があった。


「そうかもしれないですね」


強く勧められたら、断り切れないかもしれない。

いや、門を守る自警団員がそれじゃ駄目だよね。


「ふわっ」


ん?

ウルさんを見ると、欠伸をしながら腕を上に伸ばしている。

昨日は、ジナルさん達がこれからの事を話し始めたから、お父さんと私は先に休ませてもらったんだよね。


「昨日は、かなり遅かったんですか?」


「そんな事はないよ」


そのわりには、眠そうだけどな。


「ところで、昨日聞くのを忘れたんだが、ウルが俺達に紹介された理由は?」


お父さんが、ちらりとウルさんを見る。

まだ少し警戒をしているのだろうか?


「あ~スキルだ。俺は、認識阻害スキルを持っているんだ。組織では、逃がし専門要員ってところだな」


認識阻害スキル?

えっと、人の目に触れても認識されないって感じかな?


「つまり、ジナルはこの村に何かを感じているという訳か?」


お父さんが眉間に皺を寄せるとため息を吐いた。


「多分な。アイビーとドルイドに危険が迫れば、逃がせと言われている」


そうなんだ。

魔法陣が関わっていた前の時は、洗脳を解いていけば解決したから今回もそんな印象だったんだけど。

もしかして前の時より、危険な感じなのかな?

村の様子からは、何も感じなかったけどな。

あっでも、それは前の時も同じか。

不安感を魔法陣の力で抑え込まれていたから、村の様子は他の所と変わらなかったもんね。


「あっ、スキルと言えば。ジナルからプラフのスキルについて聞いたか?」


プラフさんのスキル?

お父さんと私が首を傾げると、ウルさんが大きなため息を吐く。


「ジナルの奴、忘れたな。どうも2人の前だとジナルは気が緩んでいるな」


「そうか?」


お父さんの質問に頷くウルさん。


「あぁ、気が緩んでいるから必要な事を言い忘れるんだよ。で、プラフのスキルなんだが『スルー』というものらしい。何か知らないか?」


スルー?

えっと、どこかで聞いた事があるような気がする。

どこでだったかな?

旅の中で、誰かが話していたのを聞いたのかな?

なんか違うような……あっ、前世だ。

うん、そうだ。

前の私の知識だ。

確かスルーは、気にしない事や、無視する事だった気がする。


「アイビー?」


「えっ?」


お父さんの声に視線を向けると、少し離れた場所で心配そうに私を見ている姿が見えた。

どうやら立ち止まって考え込んでいたみたいだ。


「ごめん、大丈夫。ウルさん、『スルー』は気にしない事や、無視する事という意味だと思います」


慌ててお父さんの傍によると、ポンポンと頭を撫でられた。


「えっ? アイビー、知ってたのか」


驚いたウルさんの言葉に、首を傾げる。

もしかして、言ったら駄目だったのかな?

お父さんを見ると、苦笑している。


「警戒心を忘れないように」


「あはははっ」


お父さんの言葉に笑って返してしまう。

全く知らない人だと警戒するんだけど、ウルさんだったから……。

言い訳は駄目だよね。

ちゃんと気を付けないと。


「気にしないや無視するか、なるほどね」


「プラフの持つスキルが何かあるのか?」


納得したように頷くウルさんに、お父さんが首を傾げる。


「ジナルから聞いてないか? プラフだけ洗脳されていなかったって」


「その事なら『冒険者ギルドのギルマス代理という立場なのに、洗脳されないのはおかしい。裏切り者かもしれないから、気をつけろ』と、聞いている」


そうなの?

ソラはプラフさんに、全く反応してなかったけどなぁ。

肩から提げている、ソラたちが入っているバッグを見る。

そろそろ、バッグから出してもいいかな?

周りを見渡しながら、細かく気配を探る。

暴走した魔物の気配は探りにくいけど、周辺にいる動物たちが異様な緊張感に包まれた気配になるので、そこに何かがあるという事は分かる。

暴走した魔物以外の理由かもしれないけど、警戒は出来る。


「立場的に、洗脳されていないのが不自然だったからな」


ギルマスの代理という事は、冒険者ギルドのトップだもんね。


「洗脳されなかった原因がスキルか。だが、スキルで洗脳を防げると敵に知られたら厄介だな」


「そうなるよな。まだ知られてはいないと思うが、保護対象にするかジナルと相談だな。でもプラフは、ギルマス代理なんだよなぁ。すぐに保護は無理だよな」


ウルさんが、ため息を吐くと、お父さんが彼の肩をポンと叩いた。


「まっ、頑張れ!」


笑って言うお父さんに、ウルさんが悔しそうな表情を見せた。

そんな2人の様子に、つい噴き出してしまう。


「アイビーにも笑われた」


「すみません」


拗ねた口調のウルさんに再度笑いそうになるが、何とか耐えて謝る。

肩は震えていたけど、気にしない。


「今回は、洗脳の特徴がプラフのスキルをうまく隠してくれたな」


「ハタカ村の洗脳は人が変わると聞いたが、そんなに分かりやすかったのか?」


「知り合いだと、違和感を覚えたようだ。俺たちのように旅で訪れた者達でも、洗脳に掛からなければ町の異常性にすぐに気付くだろうな」


確かに今回の洗脳の特徴が、プラフさんが洗脳に掛かっていない事を隠してくれたよね。

いつもと変わらない生活が出来る洗脳でなければ、プラフさんはすぐに敵に目をつけられただろう。


「あっ、確認を忘れてた。アイビー、スルースキルの事についてジナルに話してもいいか?」


「もちろんです」


ジナルさんに話すぐらいなら、確認は必要ないんだけどな。


「そう言えば、森に出る理由を訊いてないんだが、どうしてだ?」


「シエルが森に来たがっていたので」


「あぁ、あの子。不思議な柄の入ったスライム」


ウルさんの視線が、ソラたちが入っているバッグに向く。

丁度いいから、バッグから出そう。

周りの気配をもう一度確認してから、バッグの蓋を開ける。


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「にゃうん」


「ぺふっ」


元気に飛び出すソラたちに、ウルさんが嬉しそうな表情を見せる。

どうも彼は、可愛い物が好きみたいだ。


「にゃうん」


シエルは皆から少し離れると、ぐっと体を縦に伸ばした。

スライムの体でそのままするすると伸び、本来の姿へと戻っていく。

シエルはやっぱりこっちの姿の方が、好きだな。

可愛いスライムのシエルもいいけど、やっぱりカッコいいシエルだね。


どさっ。


「えっ?」


ウルさんの声に視線を向けると、地面に座り込んでシエルを凝視している。

どう見ても、知らなかった人の反応だ。

おかしいな。

ジナルさんに、シエルの事は聞いているはず……だよね?


「あ、あ、あ……だら、あだん!アダンダラ!」


凄いな。

ここまで動揺する人は、初めてじゃない?


「大丈夫ですよ。シエルは、襲ってきたりしないので」


「あぁ、……悪い。……あの変わった柄のスライムなんだよな?」


「はい」


「そうか」


ウルさんが大きなため息を吐く。


「アイビー、まだ驚く事ってあったりするかな?」


「ぷっ……失礼。無いと思います」


スライムがアダンダラになる以上の事は、無いよね?


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― 新着の感想 ―
この反応は久々ですね。
[気になる点] サーペントさん……はここまでは来ないしなぁ あとは食事??
[一言] スルーの意味の説明にモヤっとする。前世の記憶がフワッとしか残ってない設定だからとは分かるんだけど。モヤっとする。
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