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577話 噂とか色々?

「村に入った時にもらえる、許可証を発行しますね」


プラフさんが机の上に、許可証と四角い石を置く。


「身元を証明する物を石の上に置いてもらえますか?」


ジナルさんが石の上に冒険者カードを置くと、石が白く光って消えた。


「悪い、プラフ」


「はい?」


ホルさんが、隣の部屋へ行く扉を指す。


「騎士達だけで話し合いたいから、隣の部屋を借りてもいいか?」


「もちろん、どうぞ」


「ありがとう。すぐに戻る」


ホルさん達が隣の部屋に行くと、なんとなく部屋が広くなったような気がする。

やっぱり背が高くて体格の良い人が集まると、圧迫感があるよね。


「アイビー?」


プラフさんの不思議そうな声に、慌てて商業ギルドのカードを出す。


「すみません」


石が白く光ると、すぐに許可証が貰えた。


「ありがとうございます」


「いえ。巻き込んでしまって申し訳ありません」


プラフさんが、頭を下げるので首を横に振る。


「大丈夫です。よくある事なので」


「えっ?」


顔を上げて首を傾げるプラフさんに笑って返す。


「あははっ」


これで何回目だろう。

本当に。


「プラフ。我々は一度村から出て騎士として入り直すことにするよ」


「えっ、そうですか?」


不思議そうにホルさんを見るプラフさん。


「あぁ。正規の騎士としてこの村に入った方が、後々動きやすいだろうからな。それに、クスリについて証言するのも、その方がいいと判断した」


後々?

騎士という立場が役立つという事?


「貴族対策だと思ってくれ」


「あぁ。なるほど」


私はまだ理解できていないが、プラフさんは納得したのか頷いた。

貴族対策。

あっ、そうだった。

ジナルさんやお父さんも、今回の事に貴族が関わっていると思っているんだった。

騎士は貴族より強いのかな?


「騎士の中には爵位を持っている者もいるんだ。おそらく彼らの中にもいるんだろう」


なるほど。

貴族には、貴族をぶつけるという事か。

お父さんを見ると、肩を竦めた。


「冒険者より騎士の方が、貴族達に信用される。そこに爵位を持っている者がいたら、もっとだ。貴族を抑え込むのに、冒険者ではどうしても力不足だからな」


それは知っている。

人身売買の組織と関わった時に、すごく感じたから。


「それと、正規の騎士が確認した証拠は、それがたとえ冒険者が集めた物であっても証拠と認められる」


それはありがたいけど、おかしいよね。

冒険者が集めた証拠が、貴族以外の時はちゃんと証拠として採用されるのに、貴族だった場合は不十分と判断され採用されなかったりするのって。

今回は、正規の騎士がいてくれたからよかったけど、本当におかしい!


「ドルイド、アイビー。また後で」


話が終わったのか、騎士の人達が荷物を持って玄関に向かった。

ホルさんが私とお父さんに片手をあげる。


「気を付けてくださいね」


暴走した魔物がどこに潜んでいるか分からない。

ガルスさんの話では、村の近くでも目撃されているのだし。


「ははっ。大丈夫だ。村から出てすぐに門から入ってくる予定だから」


そうだけど。


「でも、何処に潜んでいるか分からないからな。十分気を付けるよ」


「はい」


ホルさんの言葉に笑みを浮かべる。

ホルさんたちは3回も暴走した魔物に襲われているけど、勝ったのだからかなり強いのだろう。

それでも心配だから、気を付けてもらえるなら少し安心できる。


ホルさんたちが建物から出ていく。

何となく不思議な感覚だな。

村に入った手順が今までと違ったためか、村にいるのに実感が薄い。


「いつも通りの行動って大切なんだね」


「ん?」


お父さんが首を傾げて私を見る。


「門を通らずに村に入ってきたから、何となく違和感を覚えて」


「あぁ、確かにあるな。門をくぐる事で『村に来た』という気持ちになるからな」


「そうそう」


今回はそれが無かったから、どこか違うんだよね。


「ドルイド、アイビー」


ジナルさんに呼ばれて視線を向ける。


「この建物を俺たちが借りる事になったから、何処でも好きな部屋を使ってくれ」


この建物を?

確か、両ギルドが隠し持っていた場所だよね。

そんな場所を借りてしまって、いいのかな?


「あと、ホル達は門から直行で冒険者ギルドに行く事になっている。そこで騎士としてプラフと初対面する予定だ」


初対面か。

確かに、ここでのことが内緒ならそうなるのか。

あっ、でも、荷物運びとしてプラフさんに目撃されていたよね?

他の人にも見られていると思うけど、どうするんだろう?


「ジナルさん。ホルさんたちは既に目撃されてますよね? この村から馬車で出発している時に」


「あぁ、それは『極秘任務中でした』で済む。いいよな、騎士ってだけで、なんでも極秘に出来るんだから」


確かに、かなり便利だな。


「あっ、そうそう。プラフからのお願いで、騎士2名を下位冒険者を指揮する立場として借りる事になったみたいだ」


門の外で混乱している冒険者を落ち着かせるのが目的かな。

たぶんそうだろうな。

暴走した魔物ではなく、恐怖と混乱で人同士で喧嘩が勃発しそうだもんね。


「分かった」


お父さんの返事と一緒に私も頷く。


「そうと決まったなら、アイビー、買い物に行こう」


「ん?」


「食料と消耗品の買い出しだな」


それと、噂の調査と村の様子を見る事だよね。


「分かった。準備は……必要ないね」


服を見ると、少し汚れている。

この状態で村を回ると、村に来たばかりだと分かってくれるから、色々と情報を教えてくれる。

例えば安くていい物が手に入るお店とか。

危険な場所や、危険な人まで教えてくれる事もある。


「どこか、行きたい所はあるか?」


お父さんの言葉に、足りない物が何かを考える。

作り置きのご飯は騎士の人達におすそ分けした事もあり、ほとんどない。


「食料が欲しいかな。作り置きが無くなりかけてるから」


この村にいつまでいるか分からないから、準備だけはしておきたい。


「そうなると、食料品店からだな。安い店を聞ければいいが」


来たばかりだからね。

時々、間違った情報をわざと教える人もいるから気を付けないと。


「食料品店ですか?」


「えぇ、大量に買うので安い店を知りませんか? もちろん品質も安全な店で」


お父さんの言葉にプラフさんが頷く。


「大量に安く買うなら、いい店があります。俺が紹介したら、きっと売ってもらえると思います」


売ってもらえる?

つまり、紹介がないと売ってもらえない?

どういう店なんだろう?


「紹介して大丈夫なのか?」


そうだよね。

今日、会ったばかりの人を紹介するとか駄目でしょう。


「大丈夫ですよ。ドルイドさん達はいい人みたいなので」


みたいって……。

ギルマス代理が、それでいいのかな?


「そうだ。どうしてギルマス代理になっているんですか? 冒険者じゃない事は皆が知っているんですよね?」


普通は、ギルマスの次に力がある人が代理をするはずなんだけど。


「補佐も一緒に倒れてしまったから、誰が代理を務めるか揉めたんです。その時に父の友人達が、俺に代理を務めろって」


ギルマスさんの友人達?


「その友人達は信用できるのか?」


お父さんの言葉に、少し考えるプラフさん。


「正直、分かりません。こんな状況なので、誰を信じていいのか」


それはそうだよね。

誰を信じて……肩から提げているバッグを見る。

ソラにお願いすることは出来る。

プラフさんを見る。

彼は信用していいと、私は思う。

お父さんはどうなんだろう?


「まぁ、そうだろうな。ギルマスも信用できると思った者に会いに行って、今の状態になっているからな」


お父さんを見ると、唇の前に人差し指を立て私に笑みを見せた。

内緒か。

というか、どうして私の考えが分かったんだろう。

そんなに分かりやすい行動をとったかな?


「プラフ。紹介してくれる店はどこなんだ?」


「冒険者ギルドに行く途中です。行きますか?」


「頼む。アイビー、行こうか。ジナル、俺達は買い物に行って来るから」


「分かった。色々頼むな」


色々?

噂と町の様子と……後は何だろう?

とりあえず、私は私が出来る事をやろう。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「それと、正規の騎士が確認した証拠は、それがたとえ冒険者が集めた物であっても証拠と認められる」 それはありがたいけど、おかしいよね。 冒険者が集めた証拠が、貴族以外の時はちゃんと証拠…
[一言] ギルマス代理の「巻き込んで済まない」も、もう新しい村に来た時の定番だなぁ。あと何度見るのかな? まあ、アイビー程度の歳でほいほい事件に巻き込まれる経験してきたなんて誰が思うだろうか、って事で…
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