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60話 この知識は?

炎の剣のリーダーは、セイゼルクさん。 

他の3人は、ラットルアさん、シファルさん、ヌーガさん。

私に一番話しかけて来たのはラットルアさんだ。


「テントは持っているか?」


「はい」


「だったら、俺達のテントの隣がまだ空いているはずだ、そこを使えばいいだろう」


セイゼルクさんに教えてもらった場所を確認する。

1人用のテントなので、余裕で設置が出来そうだ。

テントを設置している間に、炎の剣のメンバーが私の事を周りに知らせてくれた。

オーガについての情報交換もしているようだ。

テントを張り終わって中を整えて外に出ると、なぜかラットルアさんが待ち構えていた。


「今日、食事当番なんだ。アイビーは食事どうするの?」


周りを見回すと、火を焚いて調理をしている姿がちらほら見える。

調理をしてもいいのなら、捌いた野兎を焼こうかな。


「えっと、野兎でも焼こうかと」


「えっ! もしかして狩りをしながら旅をしているの? 1人なのにすごい。あっでも、野兎って臭くない?」


狩りをした訳ではない。

貰いものだ、アダンダラからの。

なので何だかちょっと後ろめたいな。


「たまたまです。野兎の臭みは、ちゃんと下ごしらえをするので大丈夫です」


「下ごしらえ? それしたら臭いの無くなるの?」


「えっ? ……はい、そうですけど」


「そうなんだ! 知らなかった。よし、一緒に夕飯を作ろう!」


「えっ? えっ?」


「実は俺、料理が苦手なんだよな~。味見して作っているのに、いつも変な味がするって言われる。どうしてだと思う?」


どうしてと聞かれても、分からない。


「よし、作ろう!」


宣言の後、腕をギュッと掴まれた。

顔を見ると、必死な視線が私を見ている。

まぁ、一緒に作るのは特に問題がない。

それに、そんな視線を向けられると断れない。


「何を作るのですか?」


「えっと、肉を焼いて、芋を焼いて、ハクカを焼いて、塩コショウ」


……料理?

葉物野菜のハクカはスープの方がおすすめだけど。

というか、焼いて塩コショウだけなら私は必要ないと思うが。


「アイビーは料理が出来る?」


「簡単なスープなら」


「スープ! すごい。俺は仲間達から二度と作るなって言われた」


どんなスープを作ったんだろう?

二度と作るなって、ちょっと気になるな。


「そうだ、アイビー、スープ作って! 夜はやっぱりスープが欲しいんだよね。体が温まるし」


確かに、それほど寒くはないが夜は温かい物が欲しくなる。

スープ、良いな。


「駄目? 駄目? 調味料も食材も自由に使っていいから!」


ものすごく必死に見えるのは気のせいかな?


「簡単なスープしか作れないですが、良いですか?」


「大丈夫!」


テントに戻って、野兎の肉と森の中で集めたハーブなどが入ったバッグを持って出る。

ラットルアさんは自分たちのテントから、大きめの鍋を持って来てくれた。

水も用意してくれたので、鍋に入れて火にかけて温める。

野兎の肉に臭み取りのハーブと塩をまぶしてもみ込む。

温めたフライパンで一口大に切った野兎の肉を焼きながら、隣の鍋に野菜などを入れて煮込む。

肉の表面が焼けたら、鍋に移して、独特の香ばしさがある木の実を入れて塩で味を調える。

ポイントは、臭みを消すハーブを煮込むときにも使う事。

これでじっくり煮込めば完成だ。


「なんだか、良い香り。嗅いだことが無い香りだけど」


嗅いだことが無い香り?

もしかして失敗したかな?

味見をする。

野兎の臭みはハーブで消えているし、問題ないと思うけど。

ちょっと心配だな。

ラットルアさんが持って来た肉の塊。

モウという動物の肉らしい、初めての食材だ。

匂いを嗅ぐが、臭みは感じられない。

ピリッとした辛みを感じる乾燥ハーブと塩を混ぜた物をすり込む。

少し時間をおいてからフライパンで焼く。

ジュワ~っと上がる、お肉の焼ける匂い。

そう言えば匂いで魔物って寄ってこないのだろうか?


「あの、匂いで魔物が集まって来たりしませんか?」


「匂い?あぁ、この周辺には魔物回避剤を使用しているから。大丈夫」


魔物回避剤?

たしか、匂いで魔物を寄せ付けなくするモノだったはず。

かなり高額だと聞いたことがある。

それを使っているという事は、かなり上位の冒険者が参加しているという事だろうか?

……そう言えば、炎の剣はオトルワ町で有名だって言っていたような。

目の前の人を見る。

お肉が焼けるのを凝視している……よだれが。

有名にも、いろいろあるのかもしれない。


お肉をこんがり焼きながら、スープの様子を見る。

あと少しで完成だ。


「ラットルア、お前アイビーに作らせたのか?」


「えっ! いや、一緒に……あれ? 俺、何もしてないな」


「はぁ~、悪いアイビー」


「いえ、大丈夫です。簡単ですし」


「アイビーが作ったのか? なら今日は美味いご飯にありつけそうだな。おっ、スープか。今日は諦めていたからうれしいよ」


セイゼルクさんがラットルアさんの頭を軽く叩いている。

ヌーガさんは申し訳なさそうな顔をしながらも、視線がちらちらと焼ける肉に向いている。

シファルさんは、まっすぐスープの鍋に。

皆、お腹が空いているようだ。


スープとお肉をそれぞれ分けていると、セイゼルクさんが黒パンを持って来て切り分けてくれた。

私の分もあるようでうれしい。

黒パンか、2回ぐらいしか食べた事が無いな。


「うまそ~……はぅっ……」


シファルさんがスープを口に含みちょっと止まった。

あれ?

もしかして不味かった?

どうしよう。


「なにこれ、美味い!」


違った、美味しいようだ。

短時間で作ったので、ちょっと心配だったのだ。


「本当だ、美味い。これってもしかして野兎?」


「はい、そうです」


「野兎って、干し肉の時は燻製されているから気にならないけど、独特の臭みがあるよな? これには感じないが」


「アイビーってすごいんだよ。下ごしらえって言うので、臭みをなくすんだって」


下ごしらえって、当たり前じゃないのかな?

……料理には絶対下ごしらえって必要だよね?


「この微かな匂いって薬草ですよね。薬草で匂いを消しているのですか?」


薬草?

……ハーブの事?


「はい、森にある葉っぱを乾燥させて使っています」


「すごいだろ」


「ラットルアがどうして自慢げなんだ。肉の方も、ピリッとした味が良いな」


「あぁ、これは美味い。ラットルアが当番で不安だったが、アイビーのおかげで美味い飯にありつけた。ありがとう」


「いえ、気に入っていただけてうれしいです」


一口スープを口に入れる。

広がる香ばしい香り、芋とハクカをもらって一緒に煮込んだのだが、どちらも美味しい。

うん、成功だ。

薬草か……ハーブとは違ったのか。

あれ?

私、どうしてハーブなんて知っていたんだろう?

……もしかして、前の私の記憶?

まさか、違うよね?


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― 新着の感想 ―
[気になる点] シファルさんが多分敬語キャラ?この先の話でもそうなのですが、登場した時からシファルさんはサバサバ&柔らか?爽やかドS?というか、「〜だよね、〜だろう?」みたいな話し方のイメージがついて…
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