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570話 運が無さすぎる

「騎士という事は、守っているのは王族関係か?」


ジナルさんがちらりと騎士たちを見ながら、傍に落ちていたバッグを拾う。

王族関係?

あっ、人形は王族の身代わりか。

でも、狙っている人は人形なんかに騙されるのかな?

傍にあったバッグを拾うと、まだ動きづらそうにしている騎士たちの傍にそのバッグを置く。


「ありがとう」


騎士の1人にお礼を言われたので、首を横に振る。

騎士の人を見かけた事はあるけど、こんな風に話したのは初めてだな。


「すまない。助けてもらっておいて悪いんだが……」


「言えないか。いや、訊くべきではないな。俺達も、巻き込まれるのはごめんだ」


騎士の人が言葉を濁すと、ジナルさんが嫌そうに首を横に振る。

確かに王族関係の問題に関わるのは、断固拒否したい。


「今は複雑な時期だからな」


お父さんが肩を竦めると、フィーシェさんが頷く。

そういえば、王位継承権をめぐって王子の2人が争っているんだったよね。


荷物を全て1ヶ所に集めると、小さく息を吐く。

馬車が勢いよく倒れたのか、かなり荷物が四方に散乱していた。


「思ったより時間が掛かったな」


「うん。これで最後?」


「あぁ、もっと遠くに飛ばされていたら分からないが。もういいだろう」


お父さんと周りを見回すが、見える範囲の荷物は全て集め終わったようだ。

それより、騎士たちの馬はやられている。

これからどうするんだろう?


少し離れた場所で話をしているジナルさんと1人の騎士を見る。

これからの事かな?

雰囲気から、いい話には思えないな。


「ドルイド、ちょっと来てくれ」


ジナルさんの言葉に、お父さんが私を見たので、「大丈夫」と頷く。

お父さんから見える範囲にいよう。


「アイビー、あまり騎士に近付かないように」


「えっ? 分かった」


何か気になる事でもあるのか小声で言うと、私の返事を確認してからジナルさんの下へ行った。

お父さんを見送りながら、首を傾げる。

騎士たちを見ると、荷物を集めるだけで疲れたのか地面に座り込んでいる。

この姿を見る限り、何かを企んでいるようには見えないけど……。

でも、お父さんが言うんだから、絶対に近付かないようにしよう。


「お疲れ。飲むか?」


フィーシェさんが騎士たちに、温かいお茶を配っているのを見る。

お茶を飲んだ騎士たちが少し驚いた表情で、お茶が入っている器を見ている姿にちょっと笑ってしまう。


「森で自生している茶葉を使っているんだよ」


「うまいです」


「あぁ」


フィーシェさんが私をちらりと見るので、小さく笑みを返す。

頑張って収穫しておいてよかった。


「いてっ」


ん?

1人の騎士が腕をさすっているのを見る。

正規のポーションを使用したけど、痛みが残ってしまったようだ。

おそらく騎士がさすっている場所の傷がひどかったのだろう。

正規のポーションだとひどい怪我は痛みが残るし、疲労感も取ってはくれない。

ソラたちのポーションだったら、それもすぐに治るんだけどな。


「お茶、ありがとうございました。そういえば、あなた方は何処へ向かっていたんですか?」


「オカンイ村だよ。ゆっくり旅を楽しむつもりだったんだけどね」


フィーシェさんの微妙な表情に、騎士たちが首を傾げている。

それを見たフィーシェさんが肩を竦める。


「色々あってな」


色々か。

……麻薬とか、違法なゴミとか、ギルマスとか……あり過ぎるよね。


「オカンイ村ですか」


そう言った騎士が、倒れた馬車を見る。

もう少ししたら、騎士たち全員で馬車を起こすらしい。

ただ、馬が亡くなっているのでどうするんだろう。


「我々も馬の手配が必要となったので、ここから近いオカンイ村に戻るかもしれません。そうなったら、一緒に村へ向かうかもしれませんね」


「そうだな」


そうか。

目的が同じなら、一緒に行動する事になるのか。

ソラたちが入っているバッグを見る。

ちょっと窮屈な思いをさせてしまうかもしれないな。


フィーシェさんの傍から離れて、馬車に近付く。

お父さんを見ると、まだ話し込んでいるようだ。

じっと見ていると、お父さんがこちらを見たので馬車の傍にいる事を伝えるために、馬車を指す。

伝わったのか、小さく頷くお父さんに笑みがこぼれた。


倒れている馬車の損傷を調べると、それほど大きく壊れていない事に気付く。

地面に触れている部分に、亀裂が入っている程度だ。

地面には、馬車が倒れた後に滑った痕跡があるので、その亀裂だけで済んだのはすごい。

車輪も無事なようなので、少しだけ直して、あとは馬さえ用意できれば動かせるだろう。

馬車の全体を見る。

装飾などは一切なく、質素な印象を受ける。

これに王族関係者が乗っていたと聞いても、本気にしないだろうな。


「どうした?」


後ろからお父さんの声が聞こえたので視線を向ける。


「お疲れ様。王族関係者が乗るには、質素な馬車だなって思って」


私と同じ感想を持つ人は多いだろうな。


「そうだな。だが、そのお陰で損傷が最小限で抑えられた」


えっ、そうなの?

もう一度、馬車を見る。

質素のお陰?


「あっ、装飾した部分は引っかかりやすいから、被害が大きくなるんだ」


「そう。特に地面にこすれた時は、違いがすごい」


確かに地面に装飾が引っかかったら、そこから壊れていくもんね。

この馬車だったから、この程度の亀裂で済んだのか。


「そうだ。話し合いは、どうなったの?」


騎士の人が言っていたように、一緒にオカンイ村まで行く事になったのかな?


「ジナルも俺も迷ったんだが、一緒にオカンイ村まで行く事になった。下手に拒否すると怪しまれるだろうからな」


確かに。


「それと、俺たちが見つけた洞窟の麻薬について話しておいたから」


「そうなの?」


「あぁ。騎士だからな」


お父さんの言葉に首を傾げる。

騎士だったら、何なんだろう?


「王から直接任命された騎士は、貴族を抑えるのに役立つから」


貴族。

お父さんやジナルさんは、今回の事に貴族が関わっていると思っているんだ。

まぁ、確かにあれだけの規模だもんね。

貴族ではなかったら……同じくらい力を持っている教会?


「アイビー、今嫌な想像しただろう」


「えっ?」


なんで分かったんだろう。


「気付いてないのか、すごく嫌そうな表情をしてたぞ」


そう言うと、額を指でトントンと軽く叩かれる。

これは眉間の皺を言っているな。


「そんなに表情に出てた?」


「あぁ、目つきがかなり鋭かった」


目つきが?

全然分からなかった。


「そうだ。騎士の人達は何に襲われたの?」


ずっと気になっていたんだよね。

だって、あの体格を見る限り、かなり実力がありそうだから。


「暴走した魔物に襲われたそうだ」


「そうなんだ」


まだ、いたんだ。


「3回も」


えっ、……3回!?

それはまたなんて言うか……。


「運がないよな」


お父さんの言葉につい頷いてしまう。

だって3回。

運が無さすぎるでしょ。


「あれ? 暴走した魔物は何処に?」


今の状態になったのは、3回目の暴走した魔物のせいだよね?

騎士たちは生きていたんだから、魔物は倒したはずなんだけど……周りに魔物の死骸は無い。


「3回目の魔物もしっかり処理がされているから、大丈夫だ」


ん?

首を傾げると。


「こうなったのは、疲弊しているところに人形を狙った者達に襲われたからだそうだ。今まで見つかった事が無かったのに、今回は見つかったらしい」


人形?

あぁ、王族関係者か。

それにしても、騎士の人たちが可哀そうになってきた。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 襲撃者さんは、変装までした囮の王族護衛騎士達を、正確には王族人形を襲ったということは、明確に王族が狙われたということなんですね。巻き込まれたく無いですよね。 ですが、別途暴走魔物に襲…
[気になる点] >麻薬について話て置いたから 「話し」と「話」の使い方がいつも?逆だった気がする しが要る時に入れず、要らない時に入れてる 「話し 話」で検索して使い方を調べてみるといいかも
[一言] >それと、俺たちが見つけた洞窟の麻薬について話て置いたから 話しておいた
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