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551話 美味しい!

すみません、投稿が前後しています。

この話は「釣りに挑戦!」の続きです。

「美味しい」


「旨いな」


私とお父さんの感想に満足そうなジナルさん。


「釣りをして、よかっただろう?」


「はい。ふわふわです」


ジナルさんの言葉に、頷いてまた一口食べる。

川魚の身はふわふわで柔らかく、脂が適度に乗っていて美味しい。

泥臭さは全くなく、これならいくらでも食べられそう。


「この川魚は、この周辺で釣らないとこの味にはならないんだ」


「えっ?」


ジナルさんの言葉に、食べながら首を傾げる。


「あぁ、そう言えばそうだったな」


フィーシェさんも食べながら頷く。


「川下でも同じ魚を釣る事は出来る」


川は繋がっているから、それは当然だよね。


「でも、味が違うんだ。身はここまでふわふわじゃないし、脂の乗り方も違うんだ」


「そんなに、変わるんですか?」


あっ、食べきっちゃった。


「ほらっ、焼けたぞ」


お父さんが、程よく焼けた魚を渡してくれる。


「ありがとう」


口に入れると、熱々だけど美味しい。

この味がここでしか味わえないのなら、沢山食べておこう。


「オカンイ村でも食べられるが、味が全然違うから驚くと思うぞ」


そんなに変わるんだ。

餌が違うのかな?


「冒険者ぐらいだな、この魚のこの味をいつでも楽しめるのは」


ジナルさんの言葉に首を傾げる。

冒険者だけ?


「マジックバッグに入れて、オカンイ村に運べばいいのでは?」


味を変えずに運べるよね。


「その運搬方法は、許可を取った者しか駄目なんだ」


許可?


「昔、何も決めてなかった頃に、この魚は姿を消しているんだ」


「それって、捕り過ぎてですか?」


私の言葉にジナルさんが頷く。


「そう。馬鹿みたいに捕って、いなくなったんだ。それから決まりが出来たらしい。この魚を運んだり売ったり出来るのは、許可を持った者だけ。しかも春から初夏まで。稚魚は川に戻す。他にも細かい決まりがあるらしいけど、俺たちが知っているのはこれぐらいだな」


魚を守りながら、漁をする方法なのかな?

あれ?

食べていた手を止めて、魚を見る。

今は夏の中盤。

捕っていい時期から外れているよね。

食べていいの?


「アイビー。冒険者は、その場で食べるぐらいは釣ってもいいとされているから」


魚を見て固まった私を見て、ジナルさんだけでなくお父さんも笑っている。

それがちょっと恥ずかしいが、釣っていいという言葉にホッとする。


「だからいつでもこの味が楽しめるのは冒険者だけなんだよ」


なるほど。

またここを通ることがあったら、釣りたいな。

今度釣りの道具を買ってマジックバッグに入れておこうかな。


「釣り道具を買うなら、お薦めを紹介するぞ」


そんなに私って表情に出るのかな?

顔を手で隠すと、笑って頭を撫でられた。

ジナルさんが、鋭すぎるんだな、きっと。


「こっちの唐揚げも旨いな」


ん?

お父さんを見ると、大きめに切って揚げた唐揚げを食べていた。

そう言えば、焼き魚に必死で唐揚げがまだだった。


「味付けがいいな。これなんだ?」


フィーシェさんの言葉に嬉しくなる。


「し、ポン酢と薬実とお酒です」


醤油と言いそうになった。

前世の私は、醤油に思い入れでもあるのかな?


「薬実?」


「はい。夏によく食べる薬実のショカの汁と酒をポン酢に混ぜて、少し漬け込みました」


ショカは、肉だけじゃなく魚にも合うんだよね。

でもショカは、なかなか手に入らない。

だからショカの花が咲くカカの木を見つけたら、必ず木の根元を調べちゃうんだよね。


「ショカって、あの高級な薬実のショカか?」


高級?


「あっ。なかなか採れないから高いんでしたね」


売らないから、忘れてた。


「確か、森の奥でしか育たないカカの木の根元だけに咲く、花の根っこだったっけ?」


「そうです」


フィーシェさんの言葉に、唐揚げを食べながら頷く。

焼き魚とはまた違って美味しい。

揚げても、あのふわふわが残っているし、味付けも問題なかったみたい。

ただ、唐揚げはお試しだったから、それほど無いんだよね。

もっと私が釣っていたら、もう少し唐揚げが出来たのに……。

明日は、出発するから釣りは出来ないし、残念。


「ぷっ。明日は、朝に釣りをして午後から出発するか?」


ジナルさんの言葉に、頬がちょっと熱くなる。

また読まれた。

でも、魅力的なお誘い。


「いいな、それ。もっと唐揚げが食べたいし」


「「あっ!」」


最後の唐揚げを、お皿から取って口に入れるお父さん。

ジナルさんとフィーシェさんがちょっと不服そう。


「俺も賛成」


フィーシェさんも、まだ唐揚げが食べたいのかも。


「急ぐ旅でもないしな。じゃ、明日は朝から釣りな」


明日は今日より釣りたいな。


「アイビー。朝方の方が釣れると聞いた事があるから、楽しみだな」


「はい」


「そうと決まれば、今日は早めに寝るか。シエルたちも疲れているみたいだしな」


ジナルさんの視線の先には、既に熟睡中のシエルたち。

川には入れなかったが、川辺に生息する小さな生き物たちとずっと遊んでいたので疲れているのだろう。


食事の片付けを終わらせると、寝床を作り横になる。


「お休みなさい」


お父さんたちに声を掛けると、それぞれが返してくれる。

半日、ただ竿を持って立っていただけなのに、思いのほか疲れていたようですぐに睡魔が来た。

明日はコツを教えてもらおう。


…………


「あっ、まただ……」


針に刺さっているはずの餌が無くなっている事に、ため息を吐く。


お父さんに起こされて、皆で軽く朝食を食べてからすぐに釣りが始まった。

ジナルさんが言ったように、朝方の方が釣れるみたいだ。

ただし、私以外だけど。


「竿を動かすと警戒されるから、なるべく動かないように気を付けて」


フィーシェさんの言葉に返事をしながら、針に餌をつける。

釣ろうとしている魚はとても警戒心が強いらしく、ちょっとした変化に敏感だとジナルさんが教えてくれた。

なので、釣る時のコツはひたすら竿を動かさずじっとしている事。

自分ではじっとしているつもりなんだけど、どうも微妙に動いてしまっているらしく、見事にエサだけ食べられる。


「難しいですね。じっとしているのって」


「ふふっ、そうだな。慣れない間は難しいかもな」


せっかくフィーシェさんが教えてくれているのに……。

とりあえず、じっと動かない!

……ん?

糸が引っ張られたような……気のせいかな?

……まさか、また?

そっと竿を持ち上げていく。


「……そろそろ料理に取り掛かろうかな」


ため息が出てしまう。


「ぷっ」


フィーシェさんとは反対側にいるジナルさんを見ると、肩が揺れている。

顔の向きは私の反対側。


「竿が思いっきり揺れてますよ」


「くくっ、悪い。相性が悪いのかな?」


そうなのかな?

でも、ここまで釣れないとは……。

頑張って、料理しよう。

皆の釣った魚を持って、料理を始める。

まぁ、皆の希望通りほとんどが唐揚げになるんだけど。

これから釣れる分は、焼き魚にしようかな。


料理が出来上がる頃に、お父さんたちが戻って来た。


「いい匂い。あれ? 違う料理がある」


ジナルさんは目敏いな。


「ポン酢で煮込んでみました」


記憶にあった料理なんだけど、米と合うらしい。

なので朝から米も炊いてしまった。


「豪華だな、朝から。そうだ、最後に釣った魚は内臓処理をしてマジックバッグに入れてあるから」


それっていいのかな?

まぁ、今日中に食べればいいのかな?

でも、ちょっと作り過ぎたよね。


「食べて休憩したら、出発するか」


「はい」


あっ、そうだ。

地図を見て不思議に思った場所があったんだった。


「お父さん、地図に黒い線で囲まれてる場所があるけど、これは何?」


「あぁ、呪いの森だよ。入ったら呪われると言われている所」


呪いの森。

入らないように黒く囲っているのか。


「そこには行く事は無いから」


フィーシェさんの言葉に頷く。

確かにわざわざ呪われに行く事もないよね。


「本当に呪われるんですか?」


「さぁ?」


お父さんが肩を竦める。

その様子から、特に構える必要はないようだ。


話が飛んでいると、教えてもらうまで気づきませんでした。

感想、ありがとうございます。

そして、すみません。

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― 新着の感想 ―
[一言] この場所に長期間滞在する理由が無いから監視する必要も無いとかじゃないの 美味しい魚が食べられるからって売る事もできないのに依頼にも関係無い場所に長々留まるのはおかしいし
[一言] 禁猟ルールがガバカバですね。屁理屈のようですが、極端な話し、解禁期間外に大食間の旅の冒険者パーティーが、大人数で、しかも数日もこの場に留まり、毎日の様に大量に釣っては食べまくったら、結局乱獲…
[良い点] なんて飯テロ回。こんな時間なのに唐揚げ食べたくなる。
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