表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
591/1105

548話 のんびり次の村へ

「整備された道を歩き続けるのって、久しぶり……いや、初めてかも」


私の言葉にお父さんが笑う。


「アイビーとの旅は、ほとんど森の中だな。中というか奥だな」


「ふふっ。確かにほとんど森の奥だね」


ジナルさんと合流するまでは、村道をゆっくりと歩くと決めた。

森の中に入ってしまうと、合流出来ないかもしれないからなんだけど。

歩きやすい。


森の中を歩くのも好き。

色々な風景を楽しめる。

特に森の奥は、そこにしかない花があったりする。

ただ、木の根っこや地面から飛び出している岩などでとても歩きにくい。

それが、オカンケ村を出てからずっと歩きやすい!

整備されていると言っても、ちょっと地面がならされているだけなのに、ここまで歩きやすいとは。


「ジナルも、そろそろ合流できるだろう」


フィーシェさんの言葉に、お父さんが頷く。

すべき事が終わったら、すぐに来ると言っていた。

傍でサーペントさんが頷いていたので、きっとサーペントさんに乗ってくるだろう。


「あれ? サーペントさんに乗って来るなら、森の中で合流してもよかったんじゃ」


私の言葉に、フィーシェさんが首を横に振る。


「オカンケ村とオカンイ村の間には大きな川があって、森の中を横断するのは難しいんだ」


大きな川?

そういえば、地図にかなり大きな川が載っていた。

あまりにも大きく描いてあったから、描き間違いかと思っていたんだけど、本当にあるんだ。


「あの地図の川は、描き間違いかと思ってました」


「そう思うほど、川幅が広いからな。オカンケ村からオカンイ村に行くには、村道か村道周辺の森を歩いていかないと、行けないんだ」


フィーシェさんの言葉に、もう一度地図を思い出す。

確か、村道とその周辺の所だけ川が途切れていた。

でも、あの大量の水はどこを流れているんだろう。

村道の下を通っているのかな?


「川の水がどこに行ったのか、不思議か?」


お父さんの言葉に頷く。


「川は大きな地下空洞に繋がっているらしいぞ。水の勢いが強いから、傍から様子を見るぐらいしか出来ず、空洞の中がどうなっているのかは今も分からないようだが」


そうなんだ。

水が流れる地下空洞かぁ。

ちょっと面白そうだけど、危険みたいだし近付かないほうがいいだろうな。


「あっ、忘れてたけど、オカンケ村の印の調査はどうだったんだ?」


フィーシェさんの言葉に首を傾げる。

印の調査って何だろう?

……あっ、2種類の花が咲く木と大きな岩の事かな?

オカンケ村に向かうのに、ジナルさんたちの記憶と地図が違ったから調べたんだよね。


「あれは村の有力者が、金を握らせて地図から削除させていたんだ」


お父さんがため息を吐く。


「削除?」


「あぁ。2ヶ所目の印の傍に、高額な薬草が生えてくる場所があるんだ。それを独占するために、金で消していたらしい。冒険者は迷わないように印に向かって歩くだろう? それを、させない為だったんだろうな。亡くなったギルマスにばれて、関わった者たちは処分されたと聞いたよ」


「そうだったのか」


フィーシェさんが、お父さんの話に呆れた表情を見せた。


「悪いな。面倒くさい事を調べさせて」


フィーシェさんの言葉にお父さんが笑う。


「村人に訊いたら、すぐに話してくれて面倒ではなかったから。それより調べた結果を言い忘れていた、悪い。地図については、冒険者ギルドの職員に分かりにくいと伝えておいたから。多分どちらかの印の木に紐が結ばれるだろう」


村道を挟んで似たような印がある場合、紐を結んだりして区別するのが普通らしい。


「そうか、ありがとう」


あれ?

なんの音だろう?

今何か……聞こえたような……。


「あっ、水の音だ!」


森の奥から水の流れる音が、響いてくる。

全然、川なんて見えない場所なのに。

それだけ大量の水が流れているって事なのかな?


「ぷっぷぷ~」


ん?

ソラのちょっと興奮した声に視線を向けると、ソワソワと森の奥を見ている。

これは注意をしておかないと、危ないかも。


「ソラ、今日は駄目だよ」


「ぷっ?」


私の言葉に不思議そうな声を出すソラ。


「この近くの川はとても大きいんだって。水の流れも速いだろうから、いつもみたいに遊べないの」


地図に描かれている川が正しい大きさなら、大変な事になってしまう。


「そうだぞ、ソラ。いつもみたいに遊んだら、きっと流されてしまう。シエルでも助け出せないだろうから、諦めような」


お父さんの言葉に、ソラがシエルを見る。


「こらっ、シエルに確認しないの」


「ぷ~」


不服そうに鳴くソラ。

でも今回ばかりは、諦めてもらおう。


「ソラは水が好きなのか?」


フィーシェさんの言葉に首を傾げる。

水なのかな?

いや、湖の時は川ほど興奮してなかったような気がする。

川と湖の違いは……。


「流れる水が、好きなんじゃないか?」


あっ、なるほど。


「ぷっぷぷ~」


お父さんの言葉に賛同するソラ。

確かに、川の流れに転がって楽しそうだったな。


「流れに身を任せるのも楽しいよな」


「ぷっぷぷ~」


フィーシェさんは、楽しそうに笑うとソラを抱き上げる。


「でも、この近くの川は危険だぞ。水の量がすごいんだ。身を任せて流れると、あっという間に知らない場所に流されて、アイビーと会えなくなるかもしれないぞ」


「……ぷっ」


あれ?

ソラの様子が……。


「あっ、流されても大丈夫な川を探そうな」


「ぷっぷぷ~」


ソラが嬉しそうに、フィーシェさんの腕の中で揺れる。


「その約束はどうなんだ?」


お父さんの言葉に、フィーシェさんが肩を竦める。


「いや、思ったよりソラが落ち込んでしまったから」


確かに、私に会えなくなると聞いた時のソラには、ちょっと驚いた。

何だろう「ガーン」みたいな?


「まぁ、確かに驚く反応だったよな」


お父さんが、フィーシェさんの腕の中にいるソラを撫でる。


「喜怒哀楽が他のスライムとは段違いだが、それでも今の変化はすごかったな」


フィーシェさんの言葉に、お父さんが苦笑する。


「確かにすごい意思表示をするよな」


「最初に見た時は、本当に驚いたんだ。スライムとは別の魔物かと思ったぐらいだ」


フィーシェさんの言葉に、首を傾げる。


「スライムに似た魔物がいるんですか?」


私の言葉にフィーシェさんが首を横に振る。


「いや、いないよ。だから新種が現れたのかと思ったんだ」


あっ、新種。

サーペントさんに乗っても新種と噂されたな。


「そうだ。今回のサーペントさんの移動も噂になるのかな?」


私の言葉に、フィーシェさんが視線を逸らす。

なに、今の反応。


「たぶんサーペントについての噂は流れるだろうな。ただ、移動とは別の噂だと思う」


移動とは別の噂?

……別?

何も思い当たる事が無いんだけど。


「気にしなくていいよ。噂なんて」


お父さんに、ポンと頭を撫でられる。

そう言うなら、気にする必要はないのかな。

聞かせたくない話なのかもしれないし。


「分かった」


「ドルイドの勘が恐ろしい」


ん?

今、フィーシェさんは何を言ったんだろう?

のかん?


「何か言いました?」


私の言葉に首を横に振るフィーシェさん。


「にゃうん」


シエルの声に視線を向けると、歩いてきた方を振り返っている。

何か気になる事でもあるのかな?


「どうしたの?」


立ち止まりシエルの頭を撫でながら、森の奥の気配を探る。


「魔物?」


「そうみたいだな。こっちに来ているようだ」


フィーシェさんが剣を鞘から抜いて、構える。

お父さんを見ると、既に森の奥に向かって構えていた。


「アイビー、木の後ろに隠れてろ」


「うん」


ソラたちに声を掛けて、近くの大木に隠れる。

でも、なんだか魔物から感じる気配がおかしい。

なんていうか……怯えてる?


「様子がおかしいな。怯えてるのか? 森の奥で何か……この気配って、サーペントか?」


フィーシェさんの言葉に、気配を探る範囲を広める。

魔物のもっと遠くに、確かにサーペントさんたちの気配を感じた。


「サーペントさんたちみたいです」


ジナルさんかな?


「来るぞ」


お父さんの言葉に視線を向けると、魔物がすごい勢いでお父さんたちに向かってきていた。

が、脇目も振らずに横を通り過ぎていく。


「サーペントの気配に混乱しているみたいだな」


フィーシェさんが剣を鞘に仕舞う。


「この混乱なら、襲ってくることは無いな。走っているのを邪魔しなければ、怪我もしないだろう。それにしても、すごい混乱だな」


お父さんも剣を仕舞い、魔物が走ってくる方を見る。

確かに、サーペントさんたちだけでこんなに混乱するかな?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 今回の川の流れが速い訳は、地下に流れる部分の落差からですかね?
[一言] つい、「ソラ、(再会前提で)流されちまいな!」って思ってしまいました。すみません。 だって、新しい登場人物が出てきても『この人、敵かな?味方かな?』って考える間もなく善悪判定されちゃうから…
[良い点] ソラが可愛い [一言] ソラ達は完全に人語を理解してるよね^^
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ