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522話 隠れ村?

「ひっ」


大丈夫だと言われても、怖い!

まさかあの崖を登る事になるとは、再会を喜んでいた時には思わなかった。


「すごいな、手を離しても体が動かない」


お父さんの声が聞こえるが、恐怖から言葉の意味がすぐには伝わらない。

そっと右隣を見ると、お父さんがサーペントさんから手を完全に離してしまっている。

その様子をじっと見ていると、少し恐怖心が和らぐ。

ギュッと抱きついていたサーペントさんから体を離す。

サーペントさんの魔法で体が固定されているので、不安定になる事はない。

が、見た目では無防備に見えるため、どこか恐怖を感じてしまう。


「分かっていても、下を見ると怖いな」


左隣にいるジナルさんが後ろを振り返っているのが、見えた。

釣られて、ついつい後ろを振り向いてしまう。

ほぼ直角に登っているので、見えるのは地面。

見たのは一瞬なのに、クラリと眩暈が起こる。

慌てて前を見ると、サーペントさんから感じていた魔法が少し強くなった。

不思議に思ってサーペントさんに視線を向けると、心配そうに私を見ていた。

ふらついた事に気付いたのかもしれない。


「大丈夫だよ。ありがとう」


私の言葉にお父さんが視線を向けてくる。


「何かあったのか?」


「ちょっと後ろを見てクラってきちゃって」


隠すと心配度が増すので、説明するとじっと顔を見てくる。


「少し青いか? あと少しだ、頑張れ」


「うん」


崖を登ること1分弱。

あっという間に崖の上に到着した。


「ありがとう」


お礼を言ってサーペントさんから降りると、お父さんがすぐに来てくれた。


「大丈夫か?」


「大丈夫だよ」


休憩する場所を探そうと周りを見ると、体がふらついてしまった。


「無理をするな」


お父さんはさっと私を抱き上げると、近くにあった岩に座らせてくれた。


「顔色が悪い」


その言葉に両手で頬を押さえる。

既に眩暈は治まっているが、体が冷えているのがわかる。


「ほらっ」


お父さんから水の入ったコップを受け取ると、一口飲む。

と、そのまま一気に飲み干す。

緊張していたのか、喉がかなり渇いていたようだ。


「ありがとう」


「まだ、いるか?」


「大丈夫」


緊張が解けたのか、体から力が抜けたのが分かった。

お父さんもそれに気付いたのか、安心した表情をした。


すっと影が差したので見ると、サーペントさんがじっと私を見ている。

私を乗せてくれたサーペントさんだ。


「落ち着いたから大丈夫だよ。乗せてくれてありがとう」


下を見ないようにしてたのに、つい見てしまった私のせいで体調が悪くなったので申し訳なくなる。

せっかく、崖の上に一気に連れてきてくれたのに。

私にそっと顔を寄せるサーペントさん。

鼻のあたりを撫でると、目を細める。

良かった、安心してくれたみたい。


「速かったな」


ジナルさんの言葉に頷く。

確かにすごく速かった。


「確かにな」


フィーシェさんがふらふらと私の傍に来ると、地面に座り込む。


「大丈夫ですか?」


「あぁ。あの速さの中で、下なんて見るものじゃないよな」


そうですね。

ゆっくりだったら大丈夫だったかもしれないけど、すごい勢いで地面が離れていくのは、初めて見る光景で怖いですよね。

フィーシェさんと視線が合うと、2人で苦笑する。

良かった、仲間がいた。

お父さんもジナルさんも平気なんだもんな。


「なんだ、フィーシェ。情けない」


ジナルさんの言葉にむっとするフィーシェさん。


「なんで平気なんだ」


「刺激的で楽しかったじゃないか」


ジナルさんの言葉に、フィーシェさんが嫌そうな表情をする。

刺激的すぎると思う。


「立てそうか?」


「うん。大丈夫」


お父さんの言葉に、岩から降りて背を伸ばす。

ふらつきもないし、体も冷えてない。

大丈夫だな。


「それにしてもすごく見晴らし良いですね」


肩から下げていたバッグがごそごそ動くので、ソラたちをバッグから出す。

もしもの事を考えて、崖を登る時はバッグに入っていてもらったのを忘れていた。


「ごめんね。今、出すね」


バッグから勢いよく出てきたソラたちが周りを見て、興奮している。

確かに今までで一番遠くまで見られる場所だ。


「ぎゃ」


「おぉ、久しぶりに鳴いたな」


お父さんの言葉にトロンを見る。

トロンは今、ジナルさんが肩から下げているカゴバッグに入って顔だけ出している。


「相変わらず、面白い鳴き声だよな」


「ぎゃ~!」


ジナルさんの言葉に、トロンの葉っぱがバサバサと動く。


「トロン、おはよう。3日ぶりのお目覚めだね」


トロンは最近寝始めると数日間、目が覚めない事が多くなっている。

最初の時は心配で起こしたが、またすぐに寝るので今では様子を見ている。


「ぎゃっ!」


私の言葉に嬉しそうに揺れるトロン。

今回も特に問題ないようだ。


「ご飯いる?」


寝ている時に紫のポーションをあげてみたが、吸収せずに流れ落ちてしまった。

なので起きている時だけ、与えるようにしている。


「ぎゃ」


「はい」


トロンが答えると同時ぐらいに、お父さんから紫のポーションが渡される。

それを受け取ると、ジナルさんからトロンの入ったカゴを受け取る。

お腹が空いているのか、葉っぱをフルフルさせているトロンに紫のポーションを少しずつ掛けていく。

勢いよく吸収されていく、紫のポーション。


「食べる勢いはいいな。問題は無さそうか?」


「うん。大丈夫だと思う」


トロンが体をぶるぶると震わせるまで、紫のポーションを与える。

体が震えたら、満足の合図。


「お腹いっぱいになったみたいだね」


「ぎゃっ」


カゴの中で背を反らすトロン。

ジナルさんとフィーシェさんが、興味深そうにトロンを見ている。

トロンが動くとよくある事なので、最近では笑えてくる。


「また、見てるのか?」


お父さんもちょっと呆れ気味だ。


「珍しいんだから仕方ないだろう? 木の魔物だぞ? それの子育てだぞ?」


子育て?

そうなるのかな?

ポーションの瓶をマジックバッグに入れると、もう一度周辺を見渡す。

遠くに大きな山が見える。

それに川があって、湖も見つけることができた。


「あれ? ……村がある」


「村?」


お父さんが私の言葉に首を傾げながら、私の視線を追う。

少し遠いが確かに家らしきものが見える。

中心には少し大きな建物があるように見える。


「ジナル。この辺りに村なんてあったか?」


「ドルイド。ガリットがいないから、ここがどこかも不明だ。それにしても、こんな場所に村?」


ジナルさんが、村がある方へ視線を向ける。


「確かにあれは村に見えるな。ここからだと、人の存在を確認するのは無理だな」


崖から村までは少し距離があるため、見てわかるのは家などが限界だ。


「おかしいな。あの村に行く道がない」


ジナルさんの言葉に、見つけた村の周辺を見る。

確かに、道がどこにも無い。


「隠れ村か? それともすでに滅んだ村か?」


フィーシェさんの言葉にジナルさんが首を傾げる。


「滅んだ村だとしても、道の痕跡ぐらいは残っているだろう」


ジナルさんの言葉にお父さんが頷く。


「そうだな。家がまだ原形をとどめている以上、道があったのなら何かしら痕跡が残っているはずだ」


私の見た限りでは、その痕跡は見当たらない。

という事は、隠れ村という事かな?

隠れ村は、犯罪者が集まって作る事もあれば、何かの組織や貴族から逃げてきた人たちが集まって作ることもあると聞いた。


「行ってみるか?」


ジナルさんの言葉にお父さんが難色を示す。

犯罪者が集まった村なら、危ないもんね。


「ドルイド、周りを見ろ。犯罪者の集まりと俺たち、どっちが危険だ?」


周り?

村から視線を外して、周りを見る。

ソラたちが楽しそうに遊んでいる姿が見える。

トロンが、その傍で草を枯らしている。

食べているんだろうか?

その様子を少し離れたところから、シエルとサーペントさんたちが見守っている。

あれ?

サーペントさんが10匹になってる。


「犯罪者がどんなにいたとしても、脱兎のごとく逃げ出す最強集団だろ、こっちは」


ジナルさんの言葉に、お父さんとフィーシェさんが苦笑した。


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― 新着の感想 ―
サーペント10匹は反則やんw
いいなぁ、最強集団!仲間に入れてほしい。
[一言] 良かったトロンは3日も眠っていただけなのですね。ずっと気配がなかったので。
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