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498話 のんびりゴミ拾い

「アイビーとマリャはポーションを拾ってくれるか? 俺はマジックアイテムを拾うから」


「分かった」


お姉ちゃんが小さく深呼吸してから頷く。

捨て場は、岩穴とは村を挟んで反対側だった。

朝食後にゆっくり歩いてきたが、お姉ちゃんの体力ではちょっとした運動になったようだ。


「私はまだまだね。アイビーの体力にはいつ追いつくんだろう」


そう言って、ため息を吐くお姉ちゃん。

体力がない事を気にしているが、焦っても仕方ない。


「5歳の頃から森を走り回っていた私と比べたら駄目だよ。ゆっくりでいいから気にしないで」


走り回っていたというか、生きるために足掻いていた感じだけどね。


「うん」


「それに1週間前に比べたら、ちゃんと体力がついてるよ?」


歩く速さや休憩までの時間を見ればすぐに分かる。

最初に比べてかなり体力が付いてきている。


「本当?」


自分の事は分かりづらいのかな?


「うん。本当だから大丈夫」


嬉しそうに笑うお姉ちゃんとポーションを探す。

この村の捨て場は管理されているようで、捨て場だけど整理整頓されていて探しやすい。


「青と赤と紫……」


ポーションや空き瓶などが捨てられている場所で必要な物を拾っていく。

視界の隅に、飛び跳ねるソラとフレムが見える。

2匹の様子を見ると、競うようにポーションを食べているようだ。

その姿を見ながら、今日は夕飯もいらないだろうなと思う。

本当に捨て場に来ると、食べ放題を楽しんでいるよね。

ん?


「あっ、フレム! 魔石は――」


ぽん。

遅かった……。

今までポーションを食べていたのに……。


「フレム」


そんなすごい期待した目で見られると、駄目だとは言いづらい。


「えっと、魔石は3つまでね。あとレベルの低い魔石だと嬉しいかな」


あっ、体を傾けて可愛い顔してる。

……駄目だ。

これを見たら、ついもっと復活させてもいいと思ってしまう。


「てりゅ?」


「5個までね」


あっ、言ってしまった。


「ぶっ、あははははっ」


後ろからお父さんの笑っている声が聞こえる。

だって、うるうるした目でこてんとかされると、ついお願いを聞きたくなってしまって……。

でも、一瞬は耐えたんだよ?

でもさ、「だめ?」みたいな鳴かれ方したら……。


「アイビーはフレムやソラのそれに、甘いよな」


「お父さんもね」


私の言葉に、お父さんが笑いながら頷く。

2人とも自覚があるのに、拒否できない魅力があるんだよね。

ソラたちの体をちょっとだけ横に倒す「こてん」には。


「ポーションは駄目だぞ。かなり溜まっているからな」


お父さんの言葉にフレムとソラがちょっと不服そうにするが、すぐに引き下がってくれた。

マジックボックスの中を見せて、溜まっているポーションを見せたのがよかったのかもしれない。

魔石が溜まっている様子も見せておこう。

復活させるのを、控えてくれるかもしれない。


「さて、縄も拾っていくか?」


「そうだね。待っているだけじゃ暇だし、罠でも作って仕掛ける?」


「そうしよう。縄とカゴと……」


「お父さん、この辺りは何が狩れるの?」


「ハタル村と一緒でフォーだな。あとはガルガという魔物だ。罠で狩るならラッポだな」


ガルガにラッポ。

ガルガは本で読んだ事があるな。

確か、2m弱で2本足で飛び跳ねる魔物。

頭に角が有ってそれで襲いかかってくるんだよね。

確か気性が荒いと書いてあった気がする。


「ガルガは気を付けた方がいい、魔物だよね」


私の言葉に、マジックアイテムを拾っていたお父さんが私を見て頷く。


「動きがとにかく速いんだ。角にも気を付けないと駄目だが、そちらに気を取られていると尻尾で攻撃される。少し厄介な魔物だよ」


そんな危ない魔物がいたのか。

気配を探ってはいるが、特に魔物の気配は感じない。

この捨て場周辺にはいないのかな?


ラッポは頭に角があって、野兎の2倍の大きさだったよね。

大きなカゴがいる事と、カゴの強化が必要だったはず。


「カゴを多めに拾っていかないと、数は作れないね」


「そうだな。まぁ、ある程度数は作れるだろう。大量に捨てられているから」


お父さんが指す方を見ると、確かに壊れたカゴが大量に捨てられている。

これは良い罠が作れそうだな。


「げふっ」


ん?

音がした方を見ると、ソルの体が少し大きくなっているような気がする。

捨て場に入ってから、ずっとマジックアイテムを食べ続けていたソル。

その量にちょっと不安だったが、間違いなく食べ過ぎだろう。


「ソル、大丈夫? 食べ過ぎじゃない?」


「ぺふっ!」


ちょっと不服そうなソル。

私の方へぴょんと……飛べなかった。

少し浮いたが、そのままドンと落ちる。

体が重くなって、飛び跳ねられないとかどれだけ食べたの?


「……ぺふっ」


ソルは跳べなかったことが衝撃だったのか、ちょっと固まってからちらりと私を見る。


「ゆっくり休憩したら大丈夫。私たちの作業が終わるまで、そこでゆっくりしていてね」


私の言葉にプルプルと揺れるソル。

まさか食べ過ぎで動けなくなるとは。


ポーションやマジックアイテム、縄やカゴを大量にマジックバッグに詰め込む。

持ってきたマジックバッグがどれも一杯だ。


「そろそろ、待ち合わせの洞窟まで行こうか?」


「そうだね。お昼は洞窟に着いてからでいい?」


「あぁ」


お父さんとマジックバッグを半分ずつ持つと、お姉ちゃんが小さく私たちにお礼を言う。

自分だけ何も持っていないのが気になっているみたい。


「ほらっ」


お父さんが、一番小さいマジックバッグを渡す。


「あっ、はい」


嬉しそうにマジックバッグを受け取るお姉ちゃんに笑みが浮かぶ。

ソルを見ると、食後にゆっくりしたのがよかったのか、元気に飛び跳ねている。

皆で捨て場を出ると、トロンを見てもらっていたシエルの下へ行く。


「ありがとう。遅くなってごめんね」


「にゃうん」


トロンを見ると、まだ寝ていた。

トロンのカゴを肩から下げると、洞窟へ向かって歩き出す。

何か、情報を掴めたかな?


お姉ちゃんの息が切れてそろそろ限界になるかという頃、洞窟に着く。

洞窟は、本当に人気が無いのか周辺に人の気配が全くしない。


「お昼を食べながら待つか」


「うん」


マジックバッグから、ゴザを出してサンドイッチやおにぎりを出す。

朝作って入れておいた、スープも出す。


「「「いただきます」」」


「ぎゃっ」


「あっ。トロン、おはよう」


トロンがカゴの中からきょろきょろと周りを見る。

私と視線が合うと、葉っぱがプルプルと揺れた。


「トロンもご飯を食べる?」


「ぎゃっ、ぎゃっ」


拾ってきたばかりの紫のポーションをマジックバッグから取り出し、専用のコップに少し入れる。

その間に、お父さんがトロンをカゴから出してくれたので、目の前にコップを置く。

トロンは、いそいそとコップの中のポーションに浸かり満足そうに目を細めた。


「面白い光景だよな」


お父さんの言葉にお姉ちゃんが笑う。

確かにコップの中で満足そうに目を細める木の魔物。

面白いね。


お昼を食べだしてしばらくすると、微かにこちらに来る気配を感じた。

気配を探ると、向こうも気付いたようだ。

ジナルさんたちの気配を、内緒で探るのは難しいな。


「ジナルさんたちが来たみたい」


「そうか」


急いでお昼を食べきって、後片付けをする。

人数分のお茶を入れるため、火をおこしてお湯を沸かす。

お湯が沸いた頃に来たジナルさんたちは、フィーシェさんがやたら疲れている以外はいつも通りだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] どこぞの魔女見習いが作ってしまったマンドレイクモドキか!
[一言] 劇画風のかおでショックを受けているソルが頭に浮かびました
[一言] 食べ過ぎで飛べなかったソルが、太り過ぎてジャンプできなかった猫みたいだと思いました^^;
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