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488話 えっ? なんで?

「それは?」


お姉ちゃんが私が作っているモノを見て首を傾げる。


「罠で使うカゴを修繕しているの」


「罠?」


「そう。野ネズミや野兎が通る場所に設置しておくと、運がよかったら罠にかかってくれるから」


お父さんが言うには、野兎がいるらしい。

確かに小動物の痕跡は私も見つけた。

ただ、他で見た痕跡と少し違ったから、それが野兎なのかはちょっと不明。


「私でも作れるかな?」


「もちろん」


お姉ちゃんに用意していた壊れたカゴを5個渡す。


「縄が結べたら作れるよ。ただ、縄はしっかり結んでね。弱いと、獲物が中で暴れると壊れちゃうから」


「分かった」


「この5個を綺麗なカゴの形になるように重ねて、縄でしっかり結んで欲しい」


「分かった」


隣に座ったお姉ちゃんは、壊れたカゴ2つを色々な重ね方をして首を傾げている。

最初はどうすれば、綺麗なカゴの形になるか悩むもんね。

私も最初の頃はかなりいびつなカゴになってたな。

いまでは、頭の中である程度どの部分を重ねればいいか考えられるようになったけど。


「あれ? カゴにならない」


一生懸命カゴの形にしようとしているお姉ちゃんに、助言をしながらカゴを仕上げていく。

カゴの形になったら強度を上げる為に縄をカゴに絡めていく必要がある。


「ただいま」


「「おかえり」」


罠を仕掛ける場所を探しに行っていたお父さんが戻ってきた。


「どこかいい場所はあった?」


「あぁ、数か所見つけてきた。 おっ、良い感じに作れているな」


出来上がったカゴを持つお父さんは、カゴに少し力を入れて強度を確かめている。


「いい感じだな」


「うん。上手く作れたと思う」


今回は、あまり劣化していない縄を捨て場で見つけていたので、少し強めの強度を持つ罠を作ることが出来た。


「ぷっぷぷ~」


ソラの鳴き声に視線を向けると、出来上がったカゴの一つから顔を出していた。

カゴの中から私たちを見て、満足そうな表情をしている。


「ソラ、それは仕掛けに使う罠だからね。遊んじゃ駄目だよ」


「ぷ~」


不服そうに返される返事。


「そんな声で鳴いたって駄目。それは罠で使います」


「ぷっぷ」


ソラが少しだけ体をカゴから出して、私の傍に置いてあるトロンが入っているカゴを見る。

そして不服そうに鳴く。


「ソラ、トロンが羨ましいんじゃないか? トロンだけでカゴを使っているから」


えっ?

トロンを見る。

確かにソラたちが入っているのは、ソラたち専用に購入したバッグだ。


「ソラもカゴを使いたいの?」


「カゴがというより、トロン専用の物があるのが羨ましいんだろう」


あっ、そういう事か。

確かに、トロンだけでカゴを使ってるね。

最初、か弱そうに見えたから、押しつぶされないようにカゴにしたんだよね。

そっと足元を見る。

カゴの中で気持ちよさそうに寝ているトロン。

そう言えば、今日はよく寝てるな。

木魔病にかかった木を枯らしてから、トロンの幹がほんの少しだけ太くなった。

と言っても、まだ不安になる細さではあるけれど。


「ソラ専用は難しいよね。ソラに作ったらフレムたちにも必要になるだろうし」


「そうだな。それぞれに専用の物は難しいかもな」


どうしたらいいかな?

それぞれに専用かぁ。


「あっ、寝床はどうだろう?」


「寝床?」


「うん。バッグはさすがに無理だから、それぞれに専用の寝床をカゴで作ってあげるの」


ソラを見ると、こちらを窺っているのが分かる。


「ソラ、どう? バッグを専用には作れないけど、ソラ専用の寝床は作れるよ」


「ぷっぷぷ~」


嬉しそうに鳴くソラ。

そんなに専用の物が欲しかったのかな?


「てっりゅりゅ~?」


フレムが私を窺うように見る。

その隣にはソル。


「もちろん、フレムにもソルにも専用の寝床を作るよ」


「てっりゅりゅ~」


「ぺふっぺふっ」


よかった。

何とか皆の望みをかなえてあげられそう。

色々お世話になっているからね。

私に出来る事はしたい。


「次の村に行ったら材料の調達だな。今からどんな物を作るか考えておこうか」


「うん」


ソラたちは、綺麗でカッコいいからな。

今から作るのが楽しみだな。


「出来た」


お姉ちゃんの初めての罠が完成した。

ちょっといびつな形のカゴだけど、しっかり縄で強度をつけているので大丈夫だろう。


「これ、使えるかな?」


お父さんがお姉ちゃんからカゴを受け取ると、先ほどしたように少し力を加える。

最初のカゴの組み合わせに少し無理な場所があるのか、カゴが歪むのを縄がしっかり補助している。


「大丈夫だろう。お疲れ様」


お姉ちゃんを見ると、腕をぷるぷるさせている。

何気にしっかり結ぶ時に力がいるんだよね。


「よしっ、罠を仕掛けに行くか」


お父さんを先頭に、お姉ちゃんと私。

周りをソラとフレムたちが歩く。


「この木のあたりに、野兎の痕跡があるんだ」


お父さんが指す方を見れば、確かに足跡に糞がある。

よく見ると、周りにも足跡や糞が沢山見られる。


「いいね。この場所」


「そうだろ? 魔物の足跡は少ないし、かなりお薦めの場所だ」


「うん。ここにしよう」


罠を隠すための枯れ葉と小枝や木の枝をお姉ちゃんと一緒に集める。

集めた物を両手いっぱいに持ってお父さんの下へ行くと、既にカゴの設置は終わって後は隠すだけになっていた。


「これぐらいあれば大丈夫だよね」


「あぁ、アイビーもマリャもありがとう」


仕掛けたカゴの上に、運んできた枯れ葉や小枝を乗せていく。

全体が枯れ葉などに覆われると設置完了。


「完全に見えなくなったな。よし、お終い」


「ぷっぷぷ~」


ソラが仕掛けた罠を覗きに行く。


「危ないよ」


悪戯するけど、邪魔はしないソラだから罠に何かする事はないと思うけれど、一応声を掛けておく。


「ぷ~」


ちょっと不服そうに鳴くソラ。

可愛いので、頭を撫でておく。

まんざらでもない表情になるソラは、やっぱり可愛い。


「あれ?」


何かを感じて視線を周辺に向ける。

もう少しその何かを探るために、広範囲に気配を広げ気になったモノを探す。

もしも気になった何かが魔物の気配だった場合は、すぐに対処をしなければならない。


「どうした?」


「何かが気になって」


あっ、気配だ。

魔物とは違うし動物とも違う。

これって……人の気配!


「誰かがこっちに近付いて来るみたい」


「えっ!」


お姉ちゃんの顔色が一気に悪くなる。


「急いで、テントのところまで戻ろう」


「うん」


罠を仕掛ける為に持ってきた道具を片付け、急いでテントまで戻る。

あれ?

まだかなり遠いのに、気配がしっかり読めた。

なんで?

それにこの気配、知ってる気がする。

どこでだっけ。


「どうした?」


「知っている気配のような気がして」


「そうなのか?」


「うん」


まだまだ遠い気配を手繰り寄せる。

うん、やっぱり知ってる。

ここ最近出会った人だ。

あっ! 

彼らの気配に似ている。

きっと向こうからも気配を送って、私に知らせてくれているんだ。

そうじゃないと、この距離でこんなにはっきり気配が読めるわけがない。


「お父さん、多分ジナルさんたちだと思う」


「えっ? ジナル?」


お父さんの驚いた声に、頷く。

まさか、こんなに早くジナルさんたちと再会するなんて。

あっ、と思って、お姉ちゃんを見る。

自ら問題を抱え込んだって知ったら、怒られるかも。


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― 新着の感想 ―
揉め事に巻き込まれてたってしったら、しゃーないかってなりそうだなw
[一言] 最新話まで読んでますが、専用の寝床を作ってあげてないですよね? コレをしようって言っておいて、そのまま何もせずスルーするのは何か意図があるんですか? 以前も矛盾点を感想に書きましたが、コメン…
[気になる点] 読み返してたんですが、専用の寝床って作られてましたか? 578話 孤児 で綺麗な色のカゴは売ってたけど結局最新話まで専用の寝床が作られてない気がして…。 既出でしたらすみません…!
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