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486話 夫婦? 妹?

「ソラ、ありがとう」


マリャさんが増えた事で、寝床にする場所の確保が少し大変になった。

2人と3人。

たった1人だけど、寝床に広さが必要になったためだ。

まぁでも、そこはソラ。

3人とソラたちが寝ても十分な寝床を見つけてくれた。

ソラを撫でまわしていると、背中にボスっと衝撃がくる。

慌てて振り向くと、シエルが背中に頭をぶつけていた。


「どうしたの、シエル?」


「にゃっ!」


シエルは短く鳴くと、森の方へ向かって歩き出した。

また、どこかへ行くのだろうか?


「お腹が空いたの?」


2日前に食事しに行ったはずだけどな。


「……」


私を見たシエルは首を横に振る。

お腹が空いているわけではないのか。

マリャさんに持ってきたパスカの実のように、何かあるのかもしれないな。


「帰ってくる?」


ほんの少し不安になったので、シエルの目をじっと見る。


「にゃうん」


当然とばかりに頷いたシエルに、ホッとする。


「分かった。魔物には気を付けてね。危ないと思ったら逃げるんだよ。無茶はしない事」


「にゃうん」


「あれ? どこかに行くのか?」


シエルと話をしていると、枝を拾いに行っていたお父さんとマリャさんとフレムが帰ってきた。


「そうみたい。枝、ありがとう」


「どういたしまして。シエル、気を付けるんだぞ」


「にゃうん」


走り去るシエルを見送ると、焚火に枝を追加する。


「一応、乾燥してそうなのを選んだけど、大丈夫か?」


「うん。大丈夫そう。夕飯は、もう少し待ってね」


お鍋に入れて煮ていた野菜の硬さを見る。

あと少しという所まで柔らかくなっているので、残りの野菜と肉を入れる。

臭み取りのための薬草と香りのための薬草を入れると蓋を少しずらして乗せる。


「そう言えば、お父さん。この辺りには、どんな魔物がいるの?」


マジックバッグからポーションと剣、マジックアイテムを取り出しているお父さんに声を掛ける。

マリャさんはお父さんに言われたのか、ソラとフレムの前にポーションを並べている。


「そうだな。この辺りはまだフォーが多いな。フォーは、体が大きく強いから広範囲に生息しているんだよ」


フォーは強いのか。

シエルから逃げていく後ろ姿しか見てないから、大きさとかちゃんと把握できないな。

でも、遠目からでも大きいのは分かったけど。


「あっ、今日のお肉はそのフォーだよ」


「『チェチェ』の店主とケミアさんに貰って来たやつか?」


「そう。煮込んでも美味しそうだったから」


「それは、楽しみだ。マリャ、そのポーションはトロンのだから、ソラの前には置かないで」


「あぁ、すみません」


「焦らなくていいから、落とすぞ」


「はい」


「ほら、話し方。もっと気安く、緊張せずに」


「は……うん」


あれ?

夫婦ってこんな感じなのかな?

何だろう、お父さんとお母さんというより……。


「ほら、危ない。焦る必要ないから」


「はい」


「言葉」


「う~」


ふふっ。

あっ、そろそろ味付けをしないとな。

どんな味にしようかな?

野菜とフォーからいい出汁が出てるから、それを生かしてちょっとだけソースを入れてみようかな。


「マリャ、それじゃないよ。それはトロンのポーションだから。ソラは青のポーションだから。劣化版だからちょっと分かりづらいかもしれないけど、それは紫」


「あれ? えっと」


「利き腕の方がトロンの紫ポーションだ」


「利き腕ですか?」


「今、上げた腕だ」


「あっ、こっちがトロンの方なんですね」


「言葉」


「う~」


くくくっ。


「マリャ。そこの土は、湿っているから気を付けるようにって言ったのに。あっ、膝!」


「あれ? うわっ」


「あ~、後でアイビーに手伝ってもらって汚れを落とそうな」


「はい、後でお願いしてみます」


「言葉」


「う゛~」


ぷっぷぷ、くくくっ。

何だろう、すごく面白い。


「アイビー、どうしたんだ?」


「いや、なんでもないよ。それより、そろそろ食べられるから」


ちょっと味見。

うん、美味しい。

野菜にもしっかり火が通っているし、お肉も大丈夫。


「分かった。ソラたちの食事も終わりそうだし、マリャは座ってていいぞ」


「はっ……うん」


お父さんが出してくれたお椀に、野菜とお肉がごろごろ入ったスープをよそう。


「今日はパンでいいか?」


「うん。適当に出していいよ」


「薬草が混ぜてあるパンは、まだあるよな?」


薬草?


「お父さんは、薬草を混ぜ込んだパンが好きなの?」


薬草を使ったパンは3種類ある。

どれが好きなんだろう。


「あぁ、ちょっとピリッとした刺激がすごく気に入っている」


あぁ、あれか。

今度はあの薬草を混ぜたパンを多めに作っておこう。

おにぎりもパンも食べやすいから、沢山作りたいけどマジックバッグの容量もあるし、難しいな。


「「いただきます」」


マリャさんが驚いた表情をした後、私たちの真似をする。


「いただきます」


何だか、可愛らしい人だな。

食事をしながらマリャさんの様子を見る。

薬草を混ぜたパンも、美味しそうに食べてくれている。


「あっ、そうだ。アイビー」


「うん。何?」


「マリャの膝の部分が土で汚れているんだ」


知っているよ。


「悪いんだが、後で汚れを取ってあげて欲しいんだ」


「分かった、良いよ」


お父さんとマリャさんを見る。

夫婦には見えないな。

お父さんが老け顔だからかな?


「どうした? マリャ、こぼれているぞ」


「あれ? 本当だ」


「落ち着いて食べたらいいから。誰も取りに来ないから」


「うん」


どう見ても、夫婦には見えないな。

色々な形の夫婦があるみたいだけど、夫婦として見ると違和感があるな。


「ん? 何だ?」


「えっと、夫婦より、お兄ちゃんと妹? そんな感じに見えるなって思って」


見た目は年が近いように見えるけど、話している内容は幼い妹の世話をするお兄ちゃんだ。


「ははっ。確かにそうかもしれないな」


「えっ? えっ?」


お父さんと私の会話に、首を捻るマリャさん。

うん、お母さんよりこっちの方が私もしっくりくる。

お父さんを見ると、マリャさんの様子に笑っている。


「この際、お父さんは?」


「ん?」


「マリャさんのお父さんになるのはどう?」


「年齢的に無理があるだろう」


やっぱり無理か。

お父さんが33歳で……あれ?

マリャさんは何歳だっけ?


「マリャさんは、今幾つですか?」


私の質問に、少し困った表情をするマリャさん。


「分からないです。7歳までは分かります。でも、あれから何年たっているのか」


変化のない毎日を送っていたら分からなくなるよね。


「7歳の時、何かなかったか?」


お父さんの質問に首を傾げるマリャさん。


「何か?」


「あぁ、両親から聞いてないか? どこかの村や町で何かがあったみたいな」


「7歳の時。あっ、オカンケ村で大きな魔石が取れたと言ってました。魔石がどんな物なのか、その時に初めて触らせてもらったから、よく覚えてます」


オカンケ村?

確かここより王都に近い村だったよね。


「それが7歳の時?」


「はい」


「そうなると、マリャは今27歳だ」


「27歳?」


「あぁ、20年前に見つかったオカンケ村の魔石は、かなり有名だ。洞窟からは出ないと言われていた大きさの魔石が出たからな」


「そうなんだ。すごい魔石が出たんだね? 大きさは?」


私の言葉にお父さんがぐっと拳を作る。


「情報によれば、大人の男性の拳2個分ぐらいだそうだ。魔石のレベルも3と高レベルだったから、一攫千金を狙う冒険者が集まって、すごかったらしい」


拳2個分のレベル3。

それは確かに人が集まりそう。


「まぁ、そのあとその洞窟から出てきたのは、他の洞窟と同じレベルの魔石ばかり。1年ぐらいで熱も冷めたと聞いたな。まぁ、それは良いとして。マリャは間違いなく27歳だと思う」


「27歳か。やっぱりお父さんの妹だね」


「そうだな。夫婦より良いかもしれないな」


マリャさんについての感想をありがとうございます。

当分はお父さんとアイビーで見守る感じです。

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] マリャさんは丁寧語が普通の口調ということ良いのではないでしょうか。子供っぽさが出ないのが少々過酷な環境下だったのが伺えます。今後はそうなるのかもしれませんけれども。 ドルイドさんが、…
[一言] 逃げてるんだから、本当は名前も変えた方がいいんだけどね~(//∇//)
[気になる点] リア充爆発とか言ってたら、この作品リア充だらけやん… どのキャラも大抵相方が居る ドルイドの性格悪い二人の兄どっちも嫁居るとか、流石にやりすぎだと思ったし
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