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483話 どんなスキル?

「お父さん、マリャさんのスキルが何か分かる?」


呪いを解くことが出来るスキルって何だろう?

病気なら光なんだけど。

それともう1つのスキル。

あれって、その人の未来を見てるのかな?

それだと……。


「マリャ、確認したいんだが」


「はい」


「人に触れたら見えたと言ったよな?」


お父さんの言葉に頷くマリャさん。


「その時に見えたモノと一緒に数字は出たか?」


「数字?」


私が首を傾げると、お父さんが頷く。


「占い師が持つスキルかと思ったんだが……どうだ?」


「いいえ、触れた人が出てくる場面だけです」


「そうか」


お父さんの表情が少し困惑したものになる。


「お父さん? 大丈夫?」


「あぁ、ちょっと驚いて。マリャのスキルは『光』とたぶん『未来視』だと思う」


「光と未来視」


未来視は確か、消えたスキルの1つだったはず。

あれ?

誰に聞いたんだっけ?


「俺も信じられないが、まさか未来視のスキルを持つ者がいるとはな」


お父さんの言葉にびくりと震えるマリャさん。


「そんなに珍しいの?」


「珍しいというか。存在しないスキルだからな。欲しいスキルとして話に出る事はあるが」


あれ?

存在しないスキル?


「スキルは消えたんだよな?」


「えっ、はい。何度も調べた。消えた」


マリャさんの言葉に、お父さんが安堵の表情を見せる。

それを不思議そうに見るマリャさん。


「お父さん?」


「教会の奴らが何度も調べたのなら、確実に消えたんだろう。スキルが消えるなんて聞いた事はないが」


確かにスキルが消えるなんて、1度も聞いた事がない。


「ありえない事なの?」


「まぁな。でも、教会の奴らがそう判断した事で、マリャを探す奴らが確実に減る」


確かに。

光と未来視のスキルを今も持っていたら、何が何でも探しに来ると思う。

でも、消えたんなら教会はそんなに力を入れないはず。


「んっ? 誰かマリャさん探しに来るの?」


マリャさんの話から、必要ないと思われたみたいだし、誰も探しに来ないのでは?

私の言葉に、マリャさんが不安そうにお父さんを見る。


「残念ながらいるんだよ。確実にマリャを探しに来る馬鹿どもが」


馬鹿ども?

……貴族の事?


「マリャ。見えた未来の中に、犯罪が含まれていなかったか?」


マリャさんは、お父さんの言葉に顔を青くして頷く。


「あっ、マリャさんを探しに来るのは貴族が雇った人たち?」


「あぁ、マリャの証言で犯罪が明るみに出る。それを避けたい貴族は多いだろう」


マリャさんの表情が悲しそうに歪む。

見たくもない未来を見させられて、利用されて。

これからは追われるの?

何とかならないかな?


「マリャ。これからどうしたい?」


「えっ?」


お父さんの言葉にマリャさんが、お父さんを見つめる。


「これからの事だ。どこかに行きたいところはあるか? 何かしたい事は?」


マリャさんを見ると、戸惑った表情をして視線を彷徨わせている。

そういえば、お母さんと離れ離れになったって……。

いや、これは触れないほうがいい。

教会の事だから、きっと最悪な結果になっているかもしれない。


「私は……どうしたら?」


途方に暮れた表情のマリャさん。

それもそうか。

ずっと教会に閉じ込められていたから、分からないのかもしれない。


「マリャ。俺たちは王都へ向かって旅をしている。安全なところまで一緒に来るか? ただ、旅だからマリャには少し……かなりつらいと思う」


ん?

それ以外に何かできる事ってあるのかな?


「他には?」


「俺が信頼している人に手伝ってもらって、マリャを保護してもらう事も出来る」


お父さんの言葉に、マリャさんがお父さんの手をとっさに掴む。


「ん?」


「一緒。お願い」


お父さんを掴むマリャさんの手が震えている。


「旅は体力がいる。頑張れるか?」


「頑張る」


「アイビーもいいか?」


「もちろん」


「あの、ハタル村には行けない? 私を連れだしてくれたあの子にお礼を言いたい」


「悪い。行かないほうがいい。あそこには教会に手を貸す者が多くいる」


ギルマスさんたちが頑張ってくれたはずだから、今はどうか分からない。

だけど危ないかもしれない所には、近付かないほうがいい。


「マリャさん。安全なところに着いたら手紙を送ろう?」


「手紙?」


「そう。ギルマスさんと団長さんはお父さんの知り合いなの。だからビスさんにマリャさんの気持ちを伝えてもらえるよ」


マリャさんがお父さんを見る。

それに頷くお父さん。


「あいつ等なら大丈夫だ。マリャの事を誰かに漏らすことは無いから」


「ありがとう。これから、お願いします」


頭を下げるマリャさん。


「ぷ~」


不意にソラの鳴き声がすると、マリャさんから小さな声が漏れた。

見るとマリャさんの膝の上に乗っているソラ。


「ソラ、驚かせたら駄目だよ」


「ぷ?」


マリャさんの膝の上で不思議そうにするソラ。


「分からないふりしても駄目。分かっているでしょ?」


「ぷっぷぷ~」


やっぱり。

でも、ソラのお陰でなんだか空気が軽くなったな。


「あの……この子は」


「マリャさん。私はテイマーなんです。で、その子はソラ。あと……」


話に夢中で、みんなの事を放置してしまっていた。

慌てて、周りを見るとシエルの傍にいるフレムとソルを見つけた。

トロンは……あれ、いない。

トロン専用のバッグを見るが、いない。


「えっと、その子がフレムで横の黒いスライムがソル。で、大きい子はシエルです」


紹介しながら周りを見回す。

いないな。


「どうした?」


「トロンが居なくて。どうしよう」


お父さんも周りを見る。


「シエル、トロンがどこにいるか知っているか?」


「にゃうん」


良かった、知っているんだ。


「どこにいるの?」


座っていたシエルは立ち上がると、歩き出す。

それに付いて行くと、大木の傍で止まった。


「ここ?」


「これは……」


お父さんが大木の様子を見て、険しい表情をした。


「なに? この木に何かあるの?」


大木を見上げる。

あれ?

葉っぱが異様に少ないな。

それに、枝のところどころが黒くなってる。


「病気?」


木魔病(きまびょう)だ」


木魔病?

初めて聞いたけど、病気?


「木の内部に魔力が溜まってしまう病気だ」


木の内部。

そっと手を伸ばすとお父さんに掴まれた。


「触らないほうがいい。どれだけ魔力が溜まっているか分からないから」


「分かった。このままにして大丈夫?」


「いや、大丈夫じゃないな。木魔病を放置すると、周辺の木を巻き込んで腐るんだ。それに地面が大きく陥没する。それだけだったらいいんだが、その陥没したところに魔力が溜まりやすいのが問題なんだ」


「魔力が?」


「あぁ、異様に早く魔力が溜まるらしい。だから見つけたら木を燃やすんだが……デカいな」


「そうだね」


燃やすにしても、まずはこの大木を切って……。

あれ?


「お父さん、この木枯れてない?」


「……そうだな。目の前で一気に枯れたな」


「あっ、トロン!」


「ぎゃっ!」


知っている鳴き声に、視線を向けるとにょきにょきと土から這い出てくるトロン。

うん、不気味だ。


「ぎゃっ! ぎゃっ!」


「ん? どうしたの?」


あと少しという所で、トロンがじたばた地面の上で暴れ始めた。

近付いてみると、根というか足がまだ地面から出ていない。

バタバタ。

バタバタ。


「もしかして……足が引っかかったの?」


私の言葉に、暴れるのを止めて見つめてくる。


「お父さん、何か地面を掘れるものある?」


「木の枝ならあるぞ」


お父さんとマリャさんも手伝って、トロンの周りの土を掘る。

少し掘ると、トロンが足を地面から引っこ抜いた。

その反動でコロンと転がるトロン。


「……えっと、最近家族になったトロンです」


マリャさんに紹介すると、トロンも転がった状態で葉っぱを揺らした。

あっ、最初からあった葉っぱが成長してる。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「いいえ、触れた人が出てくる場面だけです」 ここだけ妙に流暢で、最初に見たときは誰の台詞かと思いました。
[気になる点] ラトミ村の占い師の先読みスキルは未来視とは違うの?
[一言] 一瞬 その魔力溜まってた木が少し見ぬまに急成長したトロンかと思ったうちです そしてシエルと同じようにスラ化すると予想 スラパーティかな?
感想一覧
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