表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
512/1157

474話 準備と話

「ただいま」


「あっ、お帰り」


戻ってきたお父さんの表情を見て、ホッとする。

出かける前のお父さんは微かに緊張をしていた。

きっと、団長さんとギルマスさんが変わってしまった可能性を危惧していたんだと思う。

でも、今のお父さんの表情から、団長さんもギルマスさんも変わっていなかったのだろう。


「久しぶりに会ってどうだった?」


「2人とも昔と変わらなかったよ」


「良かったね。心配してたでしょ?」


「気付いてたのか?」


「ふふっ」


少し驚いた表情のお父さんに笑みがこぼれる。

お父さんが私の少しの変化に気付くように、最近はお父さんの小さな変化に気付けるようになった。

それが何気に嬉しい。

あれ?

でも何か様子がおかしいような気がする。

何かあったのかな?


「どうしたの?」


「2人から色々と話を聞いて、明日には村を出発しようと思ってる」


明日?

それは、急だね。


「出発に関してはもう少し準備が必要だけど、大丈夫。大体は終わっているから。でも、何があったの?」


「フォルガンの討伐でこの剣を使っただろ?」


お父さんが肩から下げている剣を前に出す。

あれ?

魔石が無くなっている。


「教会に手を貸している冒険者が狙っているそうだ」


「うわ~、最低だね」


「あぁ、貴族にまで話がいって余計な事を言われる前に、出発した方がいいと助言をもらったよ」


なるほど。

それならすぐに出発した方がいいね。


「お父さん、魔石はどうしたの?」


「あぁ、ここにある」


お父さんがいつも持ち歩いているマジックバッグの中から魔石が出てくる。

いつ見ても綺麗な魔石。

これを見たら欲しくなる人はいるよね。


「あれ? でもお父さん、いつもは魔石の部分を布で隠してるよね?」


確か、戦っている時も布で隠していたのを見た気がする。


「戦っている時に、布がずれてしまったみたいなんだ。途中で気付いて直したが、見た奴がいたらしい」


布がずれるなんて、運が悪かったな。


「そっか。お父さんの弟子仲間に会ってみたかったけど、明日出発なら無理だね。残念だな」


「余計な事を言いそうだから、会わせたくないな」


「それを楽しみにしてたのに」


私の言葉に少し嫌そうな表情をするお父さん。

そんなに嫌なのかな?


「まぁ少し時間が作れたとしても、あの2人は襲われた処理もあるし、他にも忙しそうだったから挨拶ぐらいしか無理だろうな」


「団長さんたちは、やっぱり忙しいのか。ん? ……襲われた?」


あまりに普通に言うから、聞き逃すところだった。

襲われたってどういう意味だろう?


「あぁ。俺と別れた後に襲われたはずだ。魔石を俺から譲られて、持っていると思ってな」


だから剣に魔石がついてなかったのか。


「大丈夫なの? 団長さんもギルマスさんも強いとは思うけど」


「それは心配してないよ。あいつらキレてたし」


キレてた?


「少し長い話になるから、お茶でも飲みながら話そう」


「分かった。あっ、その前にまだ時間があるならお風呂に行ってきたら? 明日出発でしょ?」


当分あの気持ちよさともお別れだし。


「あ~、そうだな。次の村まで10日ぐらいか?」


「村道を普通に進めばね」


シエルとかソラとかが、あっちこっちに行かなければ。

今まで村道だけで次の村へ行けた試しはないけれど。


「あはははっ、そうだったな。風呂に行ってくるよ」


「行ってらっしゃい。お茶を用意しておくね」


お父さんが部屋から出ていくと、マジックボックスから冷えたお茶を出す。

あまり冷た過ぎるのも、体に良くないからね。

今から出しておけば、ほんのり冷たいぐらいになっているはず。


「夜も少しずつ暑くなってきてるよね。そうだ皆に話さないと。まぁ、同じ空間にいるから聞いているだろうけど!」


「ぷっぷぷ~」


声に視線を向けると、既に寝てしまったトロン以外が私を見ていた。


「明日出発するんだけど大丈夫?」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「にゃうん」


「ぺふっ」


「明日からまた旅が始まるけど、よろしくね」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「にゃうん」


「ぺふっ」


「ありがとう。お父さんとまだ話があるから、皆は寝ててもいいよ」


私の言葉に、各々が寝やすい場所を探して寝始めた。

この村でも、皆にあまり自由な時間を作れなかったな。

次の村では、絶対に森で遊ばせよう!


「ごめん。遅くなった」


部屋の中を整理していると、お父さんが部屋に戻ってくる。


「大丈夫。お茶は置いてあるよ」


「ありがとう。準備してくれてたのか? 手伝うけど何をしたらいい?」


教会に問題があると知って、いつでも出発出来るようにしていたのでほとんどすることは無い。


「もう終わったし大丈夫。それに、この村では荷物をほとんど出してないから」


「そうだったな」


お父さんが部屋を見渡し、頷いている。


「あっ、でもソラたちの食事が足りないと思う」


「村を出発したら、捨て場に直行だな」


「そうだね」


椅子に座ってお茶を飲む。

お父さんも、私の前に座った。


「まずは教会について話すな」


「うん」


「ポリオンたちは、この村から教会を追い出すつもりで長い間準備をしてきたようだ」


お父さんの言葉に少し驚いた。

教会を追い出す。

過去にもあるみたいだけど、それはとても大変だと思う。

でも、上手くいってほしいな。


「すごいね」


「あぁ、すごい奴らだよ」


それから教会の事、お父さんを狙った者たちの事、そしてビスさんの事を教えてもらった。


「ひどい」


教会なんて潰れればいいのに。


「アイビーに1つ、謝ることがある」


「謝る?」


お父さんの言葉に首を傾げる。

話を聞く限りでは、謝る事は起きてないよね?


「ソラのポーションを小瓶に移して持ち歩いているだろう?」


「うん」


いつ怪我をするか分からないから、小瓶に移して持ってほしいとお父さんにお願いした。

私の腰に巻くマジックバッグにも、いつも入っている。

ソラとフレムの作ったポーションが、劣化しにくいから出来る事だ。

普通のポーションを小瓶に移すと、すぐに劣化して使い物にならないだろう。

でも、それがどうしたんだろう?


「あれをポリオンとビースに渡した」


渡した?

もしかして、ビスさんのため?


「でも、体力が少しでも残ってないとポーションは効かないって」


「あぁ、その通りだ。でも、ソラのポーションだから」


確かにソラのポーションはすごい。

もしかしたら、体力が無くても効くかもしれない。


「そうだね。ビスさんにも効くかもしれない」


「相談せずに渡して悪かった」


お父さんの言葉に首を横に振る。

私だって、きっとお父さんと同じ事をする。

だから、気にすることは無い。


「問題ないよ。ビスさんが元気になってくれたらいいね」


「あぁ、そうだといいな」


お父さんの言葉に頷く。

本当に効いて欲しい。


「あっ、あの事は話した?」


私の言葉に首を傾げるお父さん。


「麻薬成分が含まれているカリョの花畑の事。あれは絶対に人が管理しているって言ってたよね?」


「あっ……」


……もしかして、忘れてた?


「完全に忘れてたな。冒険者ギルドに報告もしてないよな」


「あっ、うん」


それは私もすっかり忘れてた。


「あ~、明日村を出る前に『ふぁっくす』が来てないか確認して、商業ギルドの方に話していくか」


「商業ギルドでもいいの?」


「あぁ、情報提供だけだから問題ないだろう」


「分かった。明日は何時ごろ出発する?」


「朝食を食べて、店主から肉を受け取ったらすぐに出よう」


肉を受け取る?

そう言えば、ケミアさんがお肉をくれると言っていた。


「ケミアさんがくれると言ったお肉の事?」


「あぁ。明日のお昼までに出発すると伝えたら、どれくらいの肉を貰ってくれるのかと確認されたよ」


そう言えば、お肉専用の部屋がいっぱいだから貰ってくれと言われたんだったな。


「さて、そろそろ寝ようか。明日は早いから」


「うん」


この村から離れる事が目的だから、明日は休憩なしで歩くだろうな。

よしっ、頑張ろ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
んー、誰かに遭遇しそう…
[気になる点] 謎の枯れ果てたカリョの群生地なのだからそのまま放置でよいのでは?w もしくは弟弟子達に丸投げ
[一言] ムラの近くにあって、人が栽培したカリョの花畑。 今まで報告しなかった事に違和感。 貴族と教会の資金源として、なぜ考慮しなかったのだろう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ