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番外 お父さんの情報集め

「悪いな。準備の方はどうだ?」


「準備はほぼ終わっている。仮置き場は助かった。ありがとう」


団長に礼を言い、正面の椅子に座る。

仮置き場では予想外の事があったが、既に色々知られているので問題ない。

ジナルがなぜ、重い罰がある契約書を使ったのかは今も分からないが、正直助かったと言える。

最悪「死」の罰が下る契約だ。

団長たちが、無茶をしないと言い切るほどの付き合いは無いが、おそらく大丈夫だろう。

ソラが、団長たちは大丈夫と判断しているしな。

今のところ、ソラの判断が間違った事は無い。


「仮置き場と言えば、面白い報告がきた。ソルはすごいな」


「さすがに俺も驚いたよ」


しっかり報告は上がっているんだな。

まぁ、ここで話すという事は後ろ暗い事はしないという事ともとれるのか?

目の前の団長を見る。

寝たきりだったためやせ細ってはいるが、目覚めた時のような儚げな雰囲気は一切ない。

逆に今は、目力があり躍動感ある雰囲気だ。

たった数日の間に随分と変わった。


「悪い。待たせた」


部屋にギルマスが入ってくる。

今日会う予定になっていたもう1人だ。


「どうだった?」


「全員確保した。魔法陣のチェックも済んでいる」


「そうか。お疲れ様」


全員?

という事は、逃げていた奴も捕まったのか。

これで安心して出発が出来るな。


「家の警護は?」


「ジナルたちに任せてあるから大丈夫だ」


俺の言葉に、頷く団長。

ギルマス宅の警護は、ジナルとガリットに任せてきた。

それと、シエル。

家を出る前にアイビーを頼むとシエルに言ったら、かなりやる気になっていたのでアイビーの安全には問題ない。

ただ、シエルに「生かして捕まえて欲しい」と言い忘れてきたんだよな。

もし誰かが侵入してきたら、間違いなく瞬殺だろう。

仲間がいないか聞かないと駄目だから、生かしておいて欲しいが……。

失敗した。


「ドルイドは、アイビーがいないと殺伐とした雰囲気を隠しもしなくなるな」


「ここで、隠す必要があると感じなかった」


ギルマスの言葉に答えると、顔を引きつらせた。

本当の事を言ったのだが……。


「まぁ、いいけどな。それでアッパス、分かった事は?」


「色々な方面に探りを入れてみた。この村のように魔法陣の実験として使われた村は、全部で6つ。生き残れたのはこの村だけだ」


6つも被害にあっているのか、多いな。


「その事は、いつ発覚したんだ?」


「2週間以内だ」


ギルマスの質問に団長が答えたが、首を傾げる。

2週間以内?

という事は、この村と同じ頃から実験が行われていたという事か?

6つ同時に?


「同じころから実験が始まったのか?」


「いや、1年ぐらいの違いがあるそうだ。それと発覚するまでに1年かかった村もあると聞いた」


発覚するまでに1年。

人が訪れる事の少ない、森の中にひっそりとある小さな村という事か。

ひどいな。


「調査隊が極秘扱いになっているのは、被害のあった村が多かったからか? それとも魔法陣だったからか?」


ギルマスは団長を見る。

確かに、魔法陣は極秘扱いを受けている。

そのため、魔法陣を調べる調査隊が極秘扱いでも違和感はない。

だが、団長の様子を見る限り、別の意味がありそうなんだよな。

そして、そっちの方の理由で極秘扱いになっている気がする。


「今、王家で問題になっていることがあるだろう」


王家?

あの噂の事か?


「王位継承の事か?」


俺の言葉にギルマスの顔が歪む。


「そうだ。こちらに向かっている調査隊は2つ。それぞれ一番上にいる者が違う」


調査隊の上にいる者?

王位継承?

あ~、つまり王家の人間が調査隊に命令を出したのか。


「ちっ。王位継承問題が絡んでんのか!」


団長が苛立つように言うと、机の上にあった酒をコップに移し飲む。


「……アッパス、お前エッチェーに本気で怒られるぞ」


ギルマスの言葉に首を傾げる。

団長は毎日、エッチェーさんに怒られているが……あれは本気では無いのか?


「これ、病み上がりが飲む酒じゃないだろうが」


ギルマスの言葉に少し酒をコップに移し口をつける。

次の瞬間、喉がカッと熱くなる。


「確かにすごいな」


純度がかなり高いようだ。

ただし、かなり美味い酒のようだ。

今の団長が飲んでもいい酒では、絶対にないだろうが。


「気にするな」


団長の言葉にギルマスが嫌そうにする。


「はぁ、もういい。怒られる時は1人で対処しろよ」


団長をじろりと睨むとコップに入っていた酒を、ぐっと飲み干した。


「話を元に戻してくれ」


ギルマスの言葉に、団長が大きなため息を吐く。


「この村で起こったことを解決したら、貴族たちからの支持が増えると見越したんだろう。相手より多くの情報を取るために、それぞれが極秘で早急に調査隊を動かした。そのため、こちらには2つの調査隊が向かってきている」


団長が言い終わると、なんとも言えない雰囲気が漂う。


「魔法陣の被害が見えてないのか?」


その通りだ。

それにしても2つか。

この村に調査隊が到着してしまったら、身動きが出来ないだろうな。


「王家と教会は敵対関係で間違いないんだよな?」


ギルマスの言葉に団長が首を振る。

違うのか?

あれ?

前に聞いた情報と違うような気がするが。


「今の王と教会連中とは敵対関係にある事は間違いない。王は教会から、これまで随分と力を削いできた。だが、次の王子たちは分からない。既に繋がっている可能性もあるらしい」


人を人とも思わない教会と被害が見えない王族。

繋がってそうだな。


「そう言えば、教会はなぜ魔法陣の実験を行ったんだ? 何か企みでもあるのか?」


「それなんだが、なかなか情報が集まらないんだ。誰かに邪魔されているようだ」


邪魔か。

団長の情報網は、かなり幅広いようだ。

しかも話の内容から、かなり上の地位にいる者からも聞き出している気がする。

それを邪魔できるという事は、かなりの権力者という事になる。


「誰に邪魔をされているか分かっているのか?」


「さっぱり。ただし、無闇に探りを入れたらやばい事は分かる」


「だろうな」


団長の言葉にギルマスが酒を煽る。

調査隊の事が分かっただけでも、ある意味すごい事なんだろうな。

王位継承権を持つ王子直々の極秘命令なんだから。


「そう言えば、王位継承権を持つのは何人だっけ? ……2人だっけ? あれ? 3人だったか?」


ギルマスの言葉に、団長が呆れた表情で息を吐く。

その表情から、そっと視線をずらす。

俺も知らない。

王位継承権を持つ王子とか、関わり無いし。


「昔は4人いたが、今は3人。そのうち争っているのは2人だ」


2人だったか。

それにしても4人いたが今は3人?


「1人は殺されでもしたのか?」


「あぁ、病気と発表されているが、どうかな? 王都では殺されたと言われていたよ。随分昔だ」


怖いな王家。


「王は信用できるのか?」


「今の王はまだ信用できるな。だが、王位継承権を争っている2人は信用とは無縁だな」


まあ、今までの話からそうだろうな。

王は、教会連中とは戦っているようだし。


「教会と魔法陣か。それに王族の継承問題」


問題がどれも大きすぎる。

個人では太刀打ちできない事ばかりだな。

それと、団長が判断したように王は信用できるのだろうか?

ジナルが言っていた。

証拠があるのに、王は動かなかったと。


「調査隊が今、どの辺りにいるか分かっているのか?」


ギルマスの言葉に顔を上げて団長を見る。


「村から5日かかる場所だ」


「5日? 一昨日も5日と言っていただろう?」


「それが、いい感じに調査隊同士で睨み合ってくれている。どちらも極秘のため動けないようだ。馬鹿だろ?」


「馬鹿だな」


団長とギルマスの表情が、何かを企むようなものになる。

背中に冷たいモノが走るが、アイビーと逃げるための時間稼ぎをしてくれそうなので応援しておこう。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 全体的に話の流れとそれぞれのセリフが合ってないと思うんだけど、違和感覚える人少ないのかな?スムーズに読めなくて頭使う、、 団長のセリフになってるけどギルマスでは? ギルマスのセリフに…
[一言] 王家は頼りにならなそううですね。3人目は真面目で良い人だといいですね。
[一言] もう一人は中立、我関せずなど感じかな。ひとりが殺された感じだから仕方ないかな。調査団派遣した王子達よりまともなら王になってほしいかな。
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