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441話 石に刻まれた魔法陣

ドンドン、ドンドン。


「ジナル! ドルイド! 悪い開けてくれ!」


不意に聞こえた玄関を叩く音と声に、体が飛び上がる。


「なんだ? あれはギルマスの声か?」


お父さんが、立ち上がって私を守るように立つ。


「どうした? 何があったんだ?」


ジナルさんが、隣の部屋から飛び出してくると私たちを確認する。


「大丈夫か?」


「あぁ、あの声はギルマスだよな?」


ドンドン、ドンドン。


「ジナル! ドルイド!」


再度聞こえた声は、間違いなくギルマスさんの声。

ジナルさんが頷くと、玄関に向かった。

その後にお父さんが続く。


「ここにいてくれ」


「一緒に行く」


少し迷ったが、何が起きているのか知っておきたい。


「分かった。でも、少し離れていろ」


「うん」


少し緊張しながら、お父さんの後を追う。

玄関が見える場所に立つと、シエルが横に来てくれた。

そっと頭を撫でるとゴロゴロと鳴くシエル。

その様子に、緊張していた体から力が抜ける。


「ギルマス、驚かせるな!」


玄関を開けたジナルさんが、外にいるだろうギルマスさんに怒鳴りつける。


「悪い。時間がなかったから。アイビーに頼みがあるんだ」


私?


「なんだ?」


ギルマスさんに答えたのはお父さん。

少し不機嫌そうな声が聞こえる。


「とりあえず、入れ」


「俺の家なんだが……」


ジナルさんが玄関から外の様子を確認してから、ギルマスさんを中に入れる。

それを見て感心してしまう。

知っている人だとしても、あれぐらいは警戒しないと駄目なのか。

お父さんにも心配をかけてしまうし、もう少し気を引き締めよう。


「えっ……シエル? ん?」


ギルマスさんが家に入った瞬間、私の隣を見て動きを止めた。


「……シエルです。ねっ」


「にゃうん」


「いや、まぁ、そうだな。シエルだな」


何を納得したのか、ギルマスさんは頷くと玄関を上がった。


「お邪魔します」


ギルマスさんの家なのにと不思議に思って彼を見ると、なぜか少し緊張した面持ち。


「時間のかかる話か?」


「あぁ、あまり時間をかけたくないが、かかるかもしれない」


ギルマスさんの言い方に、ジナルさんとお父さんが険しい表情をする。

3人が食事をする部屋に入っていくのを見送ると、お茶を用意するために調理場へ行き手早く準備する。

後ろを見ると、シエルがじっと私を見ている。


「守ってくれて、ありがとう」


「にゃうん」


シエルがいてくれると、なんだかホッとする。


「ふ~」


何だろう、日に日に疲れが抜けないような、疲れやすくなっているような気がするな。

精神的な疲れかなと思ったんだけど、違うのかな?

いつからだっけ?

この事件に関わってからだよね?

という事は、魔法陣の事とか、自分が思っている以上に負担なのかな?


「にゃうん?」


「ふふっ、大丈夫。さて、準備も出来たし行こうか。ギルマスさんは、私に話があるみたいだったしね」


「にゃうん」


お茶を持って、3人がいる部屋に向かう。

部屋に入ると、なんとも言えない雰囲気が漂っていた。

それに苦笑が浮かぶ。


「ぺふっ」


ソルの声に視線を向けると、ソルたち3匹が起きてこちらの様子を窺っているのが見えた。


「お茶を、どうぞ」


雰囲気を変えたくて、明るく声を掛けるとそれぞれの前にお茶を置く。

配り終わると、お父さんの隣に座る。


「で、アイビーに頼みたい事とは?」


お父さんを見ると、機嫌が悪そうな表情をしている。

それに首を傾げながらギルマスさんを見る。

ギルマスさんはお父さんたちの態度に苦笑を浮かべると、少し表情を改めて話し出す。


「奴らの拠点が教会の他に、もう1つ発見されたんだ。そこで見つけた書類の中に、ある魔法陣の情報があった。村を囲うように12個の石に魔法陣を刻んである物なんだ。俺の命令で冒険者数人が森の中を捜索。すぐに発見したという報告を受けた。団長と話し合った結果、魔法陣を壊すことにした」


「壊しても問題ないと判断したのか?」


ジナルさんが、机に肘をつけ何かを考えるようにギルマスさんに訊く。


「問題ないというより、壊した方がいいと判断した感じだな。見つかった書類の中に、魔法陣の説明が少しだけあった。それによると、この魔法陣は特定の人物たちの行動や思考を制限するためのモノらしいんだ」


特定の人物?


「誰なんだ?」


お父さんの質問に、ギルマスさんが首を横に振る。


「特定と言っても、人が指定されていたわけでは無い。えっと、『異の国のスキル、異の国の記憶』を持つ者と書かれてあった」


んっ?

お父さんもジナルさんも首を傾げる。


「異の国ってなんだ?」


「それに関しては分かっていない。ただ、そう書かれてあった」


異の国?

スキルに記憶って……ん?

何か思いついた気がしたけど……?


「壊したんだったら問題解決だろ? アイビーに頼み事はないはずだが?」


「壊そうとしたが、壊れなかった」


ギルマスさんの言葉に、お父さんが首を傾げる。

ジナルさんも不思議そうな表情をしている。


「物理的に壊そうとしたんだ。魔法陣が刻まれているのは、石だったしな。だが、何をしても壊れないんだ。で、団長に頼んで術を解いている自警団員を借りて、もう一度挑戦したんだが、それでもだめだった」


物理的にも魔法でも駄目?


「結界が張ってあるのか?」


「それが、結界の反応はないんだ。それでソルかソラだったら何とか出来ないかと思って。悪い、アイビー」


ギルマスさんが、私に向かって頭を下げる。


「ぺふっ」


「頭を上げてください」と言おうとすると、ソルがピョンと机の上に乗ってくる。

そして、私の目の前に来ると体を斜めにする。


「ソル、協力してくれるの?」


「ぺふっ」


ソルの鳴き声に、ギルマスさんがぱっと顔を上げる。

お父さんとジナルさんは、そんなギルマスさんを睨みつける。


「お父さん、ジナルさん」


窘めるとギルマスさんが苦笑した。


「仕方ないよ。巻き込むなって言いたいんだろうからな」


「分かっているじゃないか」


ジナルさんの言葉に、ギルマスさんは肩を竦めた。


「ぺふっ、ぺふっ」


ソルの様子を見ると、ぴょんぴょんと机の上で飛び跳ねている。

その様子は、急いでいるというか()かしているというか……。


「アイビーが協力するとして、他の奴らに見られないようにはするんだろうな?」


ジナルさんの言葉に、当然と頷くギルマスさん。


「その準備は、アーリーとジャッギがしている。だから大丈夫だ」


「ぺふっ、ぺふっ」


少し焦ったように鳴くソルに、お父さんたちが首を傾げる。


「行きませんか? ソルはすぐに行きたいみたいです」


「ぺふっ」


ソルが正解というように、嬉しそうに鳴く。

なぜそんなに急ぐのか不思議に思いソルを見つめる。


「そうだな、行こうか」


お父さんもソルの様子に何かを感じたのか、すっと立ち上がると支度を始めた。


「シエル、森へ行くまでスライムの姿になってくれる?」


ソルの様子には疑問があるが、魔法陣がある場所にいけば何か分かるだろう。


「にゃうん」


すっと姿を変えるシエル。

ソルやソラたちをいつも入っているバッグへ入れると、玄関へ向かう。

玄関にはギルマスさんが待っていた。


「ごめんな」


「いえ、大丈夫です。そう言えば、冒険者の人たちも動けるようになったんですね」


さっき、魔法陣を探しに行くのに冒険者の人たちに命令したと言っていた。

それって、術が解けて動けるようになった冒険者がいるって事だよね?


「あぁ、アイビーが団長に渡してくれた魔石のお陰で、予定よりかなり早く術を解いていってるんだ。術を解いている者たちから話を聞いたが、体への負担はほんの僅かしか感じないと言っていた。ありがとうな」


「いえ」


それでもほんの僅かは感じるのか。

大丈夫なのかな?


「どうした?」


「いえ。……負担を僅かには感じているって事ですよね? 大丈夫なんですか?」


「ん? 大丈夫だろう。調子を聞いたら、問題ないと言われたし、なんだかすごく元気だったし」


すごく元気?

だったら、大丈夫なのかな?


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― 新着の感想 ―
あああああ!何人かの読者の感想が一番くどい!!!!!!!!
[気になる点] この章さすがにダレてきてる感強いですね、、 相変わらず4匹の可愛さで和んではいますが! それと魔法陣って迂闊に触れたりしては危険なものだったのでは? 以前は魔法陣を消す時に専用の魔石…
[一言] 異の国って転生者を限定して制限かかっていたのですね。アイビーちゃん狙い打ちですね。記憶とスキルだから、他の村(異の国)から来たドレイドさんも制限されているのでしょうね。 とにかく、アイビー…
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