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番外 ギルマスさんの記憶

なぜか、魔法陣の外にいるナルガスたちが心配になった。

何故だ?

不意に、倒れこむ女性の姿が浮かび上がる。

あれは?

誰だった?

目の前には青い光の線。


「あっ! 逃げろ! これに触ったら死ぬ!」


そうだ、この青い光の線は、魔法陣の外にいる者にも影響を及ぼすんだった。

あの日、俺が教会に入るのを偶然に見てしまった副団長のツイールが、後を追ってきてしまった。

そして、この光景を見て助けようと手を伸ばしたのだ。

だが、その手が俺に届く前に青い光の線は彼女を襲った。

そして、死んだんだ。

それがなぜ、数か月後に行方不明扱いになったのかは思い出せないが、副団長であるツイールはここで死んだ。

なぜ、忘れてしまっていたんだ!

なぜ、もっと警戒をしていなかったんだ?

これではあの時と同じだ!


「早く、離れろ! 逃げろ!」


俺の言葉にナルガスたちが、後ろに下がろうとするが遅かった。

纏わりついていた青い光の線が勢いを増し、体に入ってこようとする。

それと同時にナルガスたちに向かっていくのが見えた。


「やめろ!」


異物が体に入ろうとする気持ち悪さを思い出し、吐き気がしてくる。

が、いつまでたっても以前に感じた気持ち悪さに襲われない。

あれ?


「なんだ? どうなっている!」


白髪の聖職者の焦った声に、視線を向けると驚いた表情をして俺の足を見ている。

えっ?

視線を追うと、俺のズボンのポケットに青い光の線が吸い込まれていっている。

何が起こったんだ?


「あつっ!」


あまりの光景にただ茫然と見ていると、青い光の線が吸い込まれている右のポケットが熱を伝えてきた。

慌てて、ポケットに手を入れると硬い感触。

だが、先ほど感じたように熱くはない。

首を傾げながらポケットの中の硬い感触の物を取り出す。


「これって……」


いまだ魔法陣から生まれる青い光の線。

だが、生まれたそばから俺の手の中にある硬い感触の黒い魔石に吸い込まれていく。


「ギルマス? それって……」


ナルガスたちもこの魔石を知っていたようで、驚いた表情をしている。

しばらくすると青い光の線は生まれなくなり、魔法陣も徐々に光が失われていく。

ドサッ。

何かが倒れる音に視線を向けると、青い髪の聖職者が真っ白な顔色で荒い息をしながら倒れていた。

白髪の聖職者が、青い顔をして魔石を指す。


「何で? 何だそれは、なぜ魔法陣が? なんで」


かなり混乱しているのか、意味が分からない。


「ギルマス、大丈夫ですか?」


「あぁ、問題ない」


アーリーの心配そうな表情に、笑って答えると手の中の真っ黒な魔石を見る。

これはソルが作った魔石だと聞いた。

それをアイビーがアッパスに渡し、そしてアッパスから俺にわたってきた。

ソルの魔石。

アイビーは、特に何も言わずにアッパスに渡したらしい。

わけが分からず、でも何か感じる物があってポケットに入れていたが、今の今まで忘れていた。


「まさか、こんな力があるとはな」


俺の言葉に4人が無言で頷く。


「また、助けられたな」


本当に何度も命を助けてもらって、この恩は一生かかっても返しきれないだろうな。


魔法陣から光が完全に消えた。

それを確かめてから、魔法陣の外に出る。

聖職者を見ると、ぶるぶると真っ青になって震えている。


「残念だったな。グピナス司教」


思い出した。

白髪の聖職者はこの教会の司教でグピナス。

そして青い髪のサリフィーが司祭だ。

亡くなったのはもう1人の司祭、確かミーチェ。

そんな名前だったような気がする。


「もう終わりだ」


グピナス司教が床に膝を付け、ぶつぶつ言っている。

気になったので、耳を傾ける。


「なぜだ? なぜ、失敗した? この魔法陣は完璧なはずだ。……実験で……」


実験?

なんの事だ?


「失敗するはずがないのに……あっあの魔石、あれだ! あれを!」


ぱっと顔を上げたグピナス司教と目が合うと、その視線が俺の手に向く。

次の瞬間、グピナス司教の手がさっと俺の手の中の魔石に伸びる。

慌てて1歩下がると、魔石を両手で握りこむ。

これを、渡すわけにはいかない。


「わたせ~!」


狂ったように、突進してくるグピナス司教の首にナルガスが腕を回し、意識を奪う。


「はぁ~、いきなり暴走しないでくれ!」


「だな」


緊張感が薄れたのかピアルとジャッギがため息を吐く。


「まだ気を緩めるなよ。こいつらの仲間がいる可能性がある」


懺悔室から出て教会を見渡す。

ステンドグラスからの色とりどりの光が教会内を照らして、とても綺麗に見える。


「こいつらに仲間がいるんですか?」


ジャッギの質問に眉間に皺が寄る。

思い出した記憶の中に、懐かしい顔があった。

だが、そいつは敵なのだろう。

俺を魔法陣の中に押したのだから。


「元ギルドマスターのチェマンタだ」


俺の言葉に、ナルガスたちが固まる。

チェマンタと言えば、有名な冒険者の1人だ。

功労者としては名前があがらなかったが、冒険者の中には憧れている者も多い。

俺もその1人だ。

彼の後を継げる事が、誇らしかったんだが……。


「はぁ~。ジャッギ、魔法陣を書き写してくれ」


「分かりました」


「ナルガスとアーリーは教会を調べるから、一緒に来てくれ」


俺の言葉に頷く2人、ピアルには捕まえた2人の見張りを指示した。


「ここは、3階建てだったか?」


「確かそのはずです。上から見ていきますか?」


「そうするか」


3人で3階に上がり、部屋を見て回る。

3階は使われていないのか、どの部屋にも荷物がない。

2階に下りると使われた形跡のある部屋が2つ。

おそらくグピナス司教とサリフィー司祭の部屋なのだろう。

潜んでいる者がいないと判断し、部屋の中にある荷物を調べる。

手紙や魔法陣が描かれた書類が多数出てくる。


「これは……」


ナルガスが、1枚の紙を持って険しい表情を見せた。


「どうした?」


ナルガスから紙を受け取り確認する。

そこには、使用した魔法陣の種類と結果が記載されていた。


「まるで実験みたいですね」


「誰かが奴らに指示を出していたようです」


アーリーから受け取った手紙には、確かにグピナス司教に対して使用する魔法陣が指示されていた。

手紙には、名前の記載はなく誰が送ってきた物なのか分からない。


「送ってきた人物の手掛かりは無いか?」


ナルガスたちが探している隣で、手紙とグピナス司教とサリフィー司祭が書いただろう紙を確認する。

指示されたとおりに行われる魔法陣による実験。

結果を見ると、亡くなった者たちが多数いることが分かる。


「あの……」


アーリーが1枚の紙を俺に差し出す。

それを見て息を飲んだ。

その紙には、俺の事が記載されていた。

どのように、魔法陣を使用し洗脳が行われたのか、どこまで命令に従うのかなどが事細かく載っていた。


「俺たちは実験材料として使われていたんですね」


ナルガスの言葉に、重い空気が流れる。


「そうだな。すべての書類を持ってアッパスの所に戻るぞ」


「はい」


何とか気持ちを切り替えて、近くにあった木の箱に手紙や散らばっている紙を集めて入れていく。

全て集め終わると、部屋を見渡す。


「マジックアイテムで隠されている物があるかもしれませんね。どうします?」


ナルガスの言葉に、それがあったと思い出す。

マジックアイテムの場合、本人しか開ける事が出来ない物もある。

グピナス司教たちを思い出すが、説得は無駄だろう。


「確か、隠したマジックアイテムを見つけられるマジックアイテムがあったよな?」


俺の言葉に頷くアーリー。


「でもあれは、見つける事は出来ますが、開ける事は出来ませんよ」


……やはり、グピナス司教たちを説得するしかないのか。

はぁ~、頑張るか。


総合評価 110,000ptを超えました。

ありがとうございます。

これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 確か、サーペント魔法陣事件のときにその地のギルマスたちが魔法陣の影響を低減もしくは無効化する魔石や、魔法陣を消去する魔石を使っていたと思うのですが、なぜ主人公たちや詳しいはずの団長は使…
[気になる点] 魔石が吸い取った……けど使う側のも吸い取るってことはアレかな?魔法陣はかける方もかけられる方も呪われるって感じかな?それを吸い取るというか肩代わりするのが魔石の効果かな? やはり禁忌…
[一言] ソルの作り出した黒魔石にそんな力があったのですね。 そう言えば、過去にアイビーちゃんがサーペントさんから貰った2個の黒魔石はソルのと同じ機能だったりするんでしょうか。
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