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425話 信頼関係が大切

「そう言えば、ドルイドたちは広場で寝泊まりしていると聞いたが本当か?」


「あぁ、なぜです?」


お父さんの返答に団長さんが少し考える仕草をした。

その後、ギルマスさんを見るとギルマスさんが頷く。


「敵の姿がまだ一切見えてこない状況なんだ。これからの事を考えると広場では危ないだろうから、俺の家に来る気は無いか? ギルマスという地位についているからこの家ぐらいの広さはあるし、1人暮らしだから遠慮は必要ない。どうだ?」


確かに、敵が誰か分かっていない状況で広場を使用するのは危ないかな?

周りの冒険者や自警団員は術に嵌っているから助けてくれるか分からないし。

周りに敵がいないとも限らないしね。


「団長が目を覚ました事は明日には広まるだろうから、敵もこちらの動きに気付いてしまうか」


お父さんの言葉に団長さんとギルマスさんが頷く。


「おそらく既にこちらの動きには気付いているはず、この家の周辺に見張りがいる可能性もある」


ギルマスさんの言葉に、あっと気付く。

そんな事、頭の片隅にも無かったので特に身を隠すことなくこの家に入ってきてしまった。

大丈夫なんだろうか?


「迂闊だったな」


お父さんも気付かなかったのか、少し落ち込んだ声を出す。


「お父さん、大丈夫だよ。たぶんだけど……」


警戒をしていなかったとは言え、気を張っている状態だったから気配は探っていた。

この家の周辺に、違和感を覚えるような気配はなかった。

上位冒険者の人たちが、見張りをしていた場合は気付けないだろうけど。


「敵の目星は全くついていないのか?」


お父さんが団長さんに問うと、団長さんが大きなため息を吐く。

ギルマスさんも首を横に振る。


「今日1日ですべてを調べ終えたとは言えないが、特に気になる人物は引っかかってこなかった」


ギルマスさんの言葉に、少し疲れが混じる。

よく見ると、顔色も悪いような気がする。


「あの、明日は朝からシャーミの洞窟を調べてきます。注意することはありますか?」


ナルガスさんの言葉に、バッグから出て団長さんのベッドの足元で寝ていたシエルがすっと起き上がる。

そして、ナルガスさんに向かって飛び跳ねる。


「うわっ」


慌ててシエルを抱き留めようとするが、胸のあたりに当たって跳ね返った。


「シエル! どうしたの?」


急なシエルの攻撃にナルガスさんが胸を押さえて驚いている。

団長さんやギルマスさんも、少し目を見張った。


「にゃうん!」


いきなりの事で全員がシエルに視線を向ける。

シエルはなぜかちょっと怒っている様子。

それを見て首を傾げる。

シエルが気になる事でもあった?

今話していた事は明日の事で……あっ!


「シエル、もしかしてシャーミの洞窟に一緒に行きたいの?」


「にゃうん!」


なるほど。


「明日の朝って、いつ頃行くんですか?」


ナルガスさんたちに訊くと、少し戸惑った表情を返された。


「連れて行ってもらうのは駄目ですか?」


遊びに行くわけじゃないもんね。

駄目かな?


「いや、俺たちとしてはシエルに一緒に来てもらえれば随分と助かる。無駄にシャーミを殺さずに済むから。だが、いいのか? 今日の事もそうだけど、アイビーさんには随分と世話になりっぱなしで……」


シエルが威嚇すれば、襲ってくることがないから殺さなくて済むのか。

そこまで考えてなかったな。

でも、無駄に殺すのは可哀そうだよね。

シャーミだって被害を被っているんだから。

それと、世話って……それこそ誤解!


「お世話をしているわけでは無いですよ。ただ出来る事があるからしているだけです。それに動いているのは私ではなくてソラやソルたちだから」


「テイムしている魔物があげる手柄は、テイマーの手柄になるんだよ。命令……そう言えばしているところを見た事が無いな」


団長さんが不思議そうに私とシエルたちを見比べる。


「命令はしたことないですから。お願いはよくしますけど」


「お願い?」


ギルマスさんも不思議そうな表情で私と団長さんのベッドで寝ているソラたちを見る。

その視線に気付いたのかソラが目を覚まして私を見る。


「はい。聞いてくれることもあるけど、拒否されることもありますよ」


ベッドから私を見上げているソラに「ねっ!」というと、びよ~んと1回縦に伸びた。

……えっと、今のはどんな反応なんだろう。

時々、不思議な反応を返してくれるんだけど、いまだに真意が分からない。

からかわれているだけのような気もするけど。


「拒否……本当にお願いなんだな」


団長さんが少し楽しそうな表情をする。

それを見てお父さんと私が首を傾げる。

ナルガスさんたちも、不思議そうな表情で団長さんを見る。


「マーシャの言っていた通りだと思ってな」


マーシャさん?

この名前は何回かこの村で聞いてる。

それなのに、誰なのか思い出せないんだよね。

ん~。


「マーシャはこの村にいたテイマーなんだ。数年前に亡くなってしまったんだが。今は孫がテイマーとして頑張ってくれているよ」


あっ、テイマーか。

噂にも出ていた名前だった気がする。

なるほど、テイマーだったのか。


「そのマーシャという人が、何か言っていたのか?」


「あぁ、テイマーと魔物は心を寄せあう事が何より大切なんだって言っていたんだ。その話を聞いた時はまだ子供だったから、何を言っているのか意味が分からなかったが、今なら分かるな」


団長さんが懐かしそうに目を細める。

何かいい思い出でもあるのかもしれないな。


「そう言えば、マーシャのばあさん。面白い事を言っていたよな」


ギルマスさんが楽しそうな表情をする。


「あのばあさん。契約が無くても、信頼関係を築ければ力を貸してくれるって」


「そうだな……あれ?」


ギルマスさんの言葉に団長さんが、ぱっと足元で寝ているソラたちに視線を向ける。

おそらくその視線はソルに向かっているのだろうな。


「マーシャさんの言う通りだと思いますよ。ソルはテイムしていません。でも、協力してくれてます」


「えっ?」


ギルマスさんは驚いた表情を、ナルガスさんたちはなぜか納得したという表情をした。

それを不思議に思い、ナルガスさんたちを見ていると「印が無かったから」と言われた。

しっかり見れば、すぐにばれるよね。

ソラたちにある印がソルには無いのだから。


「そうだったのか?」


ギルマスさんは確認していなかったのか。

団長さんが少し呆れた表情でギルマスさんを見る。


「普通はすぐに確認するだろう。しなかったのか?」


「術から解放されて、衝撃と衝動を抑えるのに必死だったな。あとは、やることが多すぎて……そうか。あのばあさんの言っていた事は本当だったのか」


ギルマスさんがソルにそっと近づくと、ちょうどソルが目を覚ます。

そして近くにいるギルマスさんをじっと見つめた。


「本当だ。印がない」


じっと見つめるギルマスさんにソルが居心地悪そうに、少し身動きする。


「止めてやれ」


「あっ、悪い。なんだか見れば見るほど、この子たちすごいよな」


ギルマスさんの言葉に部屋にいた全員が何度も頷く。


「そう言えば、マーシャの孫はどうなんだ?」


「どうとは?」


団長さんの言葉にギルマスが訊き返す。


「実力だよ。マーシャが教えていただろう?」


「あ~、あれ?」


ギルマスさんの眉間に深いしわが刻まれる。

そのまま何か考え込むが、首を横に振る。


「思い出せない。なぜだ? マーシャの孫だよな? ん?」


ギルマスさんがナルガスさんたちに視線を向けると、ナルガスさんたちも首を横に振る。


「記憶が飛んでいるようだ。仲間や仕事関連の者たちは忘れていなかったから安心したんだが」


術による後遺症か。

何か切っ掛けがあれば思い出さないかな?


「その方の名前も思い出せませんか?」


「名前?……駄目だ。孫についてだけ、なぜか何も思い出せない」


ギルマスさんだけでなくナルガスさんたちも同じようで、思い出せないらしい。

団長さんを見ると、首を振られた。


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― 新着の感想 ―
みんな思い出せないって怪しいな?
[気になる点] んー、なんか記憶の消え方が怪しいよね……
[一言] マーシャのお孫さんの記憶が共通して消されている事実に作為的な気配を感じるのが心配ですね。そんな魔方陣を仕掛けた者たちの目的が不可解ですね。
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