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420話 シャーミの洞窟2

洞窟の入り口に来ると、すぐにゴミの山が見えた。

かなりの量が捨てられているのが分かる。


「ひどいな」


お父さんの小さな声が耳に届く。

確かにひどい。

シャーミの住処に捨てるなんて。


ナルガスさんが私の隣に来て、前のお父さんの肩を軽く叩く。

お父さんが後ろを見ると、彼は上を指す。

それにつられて上を見ると、洞窟の壁には段差があり、そこにシャーミがいた。

どの子たちも体を丸くしている。

これがシャーミの寝る姿なのだろう。

お父さんがナルガスさんに頷くと、指で何かの指示を出した。

それを見たナルガスさんたちは、アーリーさんを残して反対の壁に静かに移動する。

この洞窟の入り口は大きく、中もかなり広い。

なので二手に分かれて、中を調べるようだ。

お父さんが、少し離れた場所にいるシエルに掌を下にして2回上下する合図を送る。

するとシエルがその場に伏せをした。

待機の合図みたいだけど、いつ教えたんだろう?

お父さんがじっと私を見るので、小さく深呼吸して気持ちを整える。

それから、大丈夫という気持ちを込めて頷く。

それを見たお父さんが、静かに洞窟内に入った。

それに続くと、後ろをアーリーさんがついて来てくれた。


壁沿いに静かに移動する。

ゴミの量が多く、反対側にいるはずのナルガスさんたちの姿は見えない。

というか、どれだけため込んでいるんだろう。

入り口から中に進むと、どんどん暗くなっていく。

灯りを点ける事は出来ないので、途中で動きが止まる。

お父さんが上を見たのが分かり、つられて上を見るとシャーミたちの姿が暗がりの中に見えた。

どの子も動かないので、まだ眠っているのが分かる。

それにほっとするが、違和感もある。

普通に考えると、これはあり得ない。

ここまで住処に侵入されれば必ず起きるはず。

それなのに起きない。

もしかして起きられないのだろうか?

前のお父さんを見ると、バッグから何かを取り出している。

灯りを点ければさすがに起きると思うけど、どうするんだろう?

何か準備してきたのかな?

それにしてもゴミが多い。

見つからないように壁に沿って歩いているのに、壁際までゴミが押し寄せてきている。

注意深くゴミを見ると、マジックアイテムが多いような気がする。

足元にある大きなマジックアイテムを少し移動させる。

あれ?

ゴミの下に、どこかで見た事がある模様が目に入る。

それを見た瞬間、背中に嫌な汗が伝うのが分かった。

ただ、模様はまだ半分も見えていない。

確かめようと、もう一度マジックアイテムに足を伸ばす。

音を出さないように注意しながらマジックアイテムを移動させようとすると、お父さんに肩を叩かれた。

驚いて前を見ると、お父さんが先ほどシエルにした合図を私にした。

つまりここで待機という事だろう。

理解は出来たが、首を横に振る。

それを見たお父さんが驚いた表情を見せたが無視して、視線が下に向くように指で下を指す。

アーリーさんも気付いたのか少し体を移動させて、お父さんと一緒に足元を見てくれた。

次の瞬間、お父さんが緊張したのを感じた。

それを感じながら、先ほど移動させようとしたマジックアイテムをそっと横にずらす。

先ほど半分ほどしか見えていなかった模様が、完全な形で視界に入る。

「やはり」と心の中で思う。

見た事があるはずだ。

サーペントさんを捕まえていた魔法陣に使われていた模様なのだから。

お父さんもそれに気付いたのか、壁にもう少し寄るように移動する。

その時にアーリーさんにも、しっかりと指示を出してくれた。

アーリーさんは少し不思議そうにするも、お父さんの指示に従い壁に寄る。

お父さんを見ると、視線が合い頷いてくれた。

そして、外に向かって指をさした。

今度はアーリーさんを先頭にして、洞窟内をゆっくりと外に向かって歩く。

シャーミたちにばれないように移動するのはきついが、今は急いで魔法陣から離れないと何が起こるか分からない。

そう言えばナルガスさんたちはどうするのかな?

洞窟の外に出て、少しその場から離れるとアーリーさんが小さなマジックアイテムを起動させるのが見えた。


「これは、異変があったことをナルガスたちに知らせるものだから、すぐに出てくると思う」


シエルと一緒に洞窟から少し離れる。

しばらくするとナルガスさんたちが洞窟から出てきた。


「どうかしたんですか? 何かあったんですよね?」


ピアルさんが、心配そうに私たちを見る。

ジャッギさんやナルガスさんも不安な表情をしている。


「お前らな、上位冒険者なんだから表情を少しは隠せ」


お父さんの一言に、気まずそうにするナルガスさんたち。


「まぁ、これからは気を付けろ。洞窟の調査を終わらせた原因は魔法陣だ」


「魔法陣ですか?」


ナルガスさんが困惑した表情をする。


「アイビーが見つけたんだが、あの洞窟のゴミの下にデカい魔法陣が描かれている」


お父さんの言葉に黙り込むナルガスさんたち。


「という事は、シャーミがおかしいのは魔法陣のせいだと?」


「おそらくそうだろうな。魔法陣とゴミの魔力で何かされたんだろう」


ひどいな。

原因が分かったけど、術を解くことは出来るのかな?


「お父さん、術を解くことは出来そう?」


「難しいだろう。ゴミの魔力で凶暴化もしているしな」


そうだよね。

以前は違っても、今は人を見たら襲いかかっているみたいだし。


「あっ、でも、今は眠っているよね。その間には?」


「そうだな。その間なら何とか出来る可能性もあるが……」


お父さんの表情を見て、無理なのかもしれないと感じる。


「アイビーさん。村に戻って、団長に術を解く手立てがないか訊いてみないか?」


「そうだね。ピアルさん、ありがとう」


ちょっと笑うと、ピアルさんがホッとした表情を見せた。

もしかしたら、ひどい顔をしてたのかな?

しっかりしないと。


「ドルイドさん、どうします? いったん村に戻ってもいいですか? このまま、洞窟内を調べるのは危険ですよね」


「そうだな、また術に掛かっても駄目だしな。いったん村に戻ろう」


ナルガスさんたちが周りを見ながら村のある方向を指す。

それに頷いて、先頭を歩くピアルさんに続く。

シエルはさっと私の隣に来てくれた。

しばらく無言で洞窟から離れる。


「ふ~、緊張した。それにしても、アイビーはよく魔法陣を見つけたね」


洞窟からかなり離れると、ジャッギさんが後ろで小さく息を吐くのが分かった。


「前に見た魔法陣と模様が一緒だったんです」


「前に見た魔法陣? どんな魔法陣だったの?」


アーリーさんが、私とお父さんを見る。


「魔物を従わせる魔法陣だったみたいです。発動する場面に遭遇してしまって、私とお父さんは記憶が消えたり、変えられたりしました」


「怖いな。知識がアイビーとドルイドさんにあって良かったよ。俺たちだけだったら、危なかったかもな」


「確かにな、もうこれ以上記憶をいじくられるのはごめんだ」


ジャッギさんの言葉に、ピアルさんが同意する。

そのまま急ぎ足で村に戻り、門が見えた瞬間に体から力が抜けた。


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― 新着の感想 ―
[一言] >完全ん形で視界に入る。 完全な >しばらくするとなるがうさんたちが洞窟から出てきた。 ナルガス >知識がアイビーとドルイドさんに合って良かったよ。 知識がある
[気になる点] しばらくするとなるがうさんたちが →しばらくするとナルガスさんたちが ではないですか?
[気になる点] しばらくするとなるがうさんたちが洞窟から出てきた。
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