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400話 喰われてる?

「うわっ」


叫び声に食べていたお菓子を口に咥えたまま、視線を声が聞こえた方へ向ける。

ベッドで寝ていたはずのピアルさんが、ソラに包まれている仲間を見て叫んだようだ。

やはり睡眠薬は早く切れたらしい。

ナルガスさんが声を掛けようとした次の瞬間、慌ててピアルさんに飛び掛かるナルガスさん。


「なっ!」


「落ち着けピアル!」


飛び掛かったナルガスさんは、その勢いのまま体重をかけてピアルさんを押さえ込む。

身動きが取れなくなったピアルさんから、小さなうめき声が聞こえた。

お父さんも私もそれを、ただ黙って見ている事にした。

と言うか、何が起こったんだろう?

口に咥えていたお菓子をもぐもぐと食べる。

ちょっと硬いな、このお菓子。


「あぁ、なるほど。アイビー、彼の手を見ろ」


お父さんが指す方向を見ると、ピアルさんの右手に握られた小型のナイフ。

既に鞘から抜かれた状態になっていた。

なるほど、ソラを襲おうとしたのか。


「ナルガス、どういう事だ!」


「ピアル、落ちつけ。とりあえず話を聞け!」


ナルガスさんの声が部屋に響く。

2人の荒い呼吸音がしばらく続く。


「分かった。暴れないから離せ」


まったく離そうとしないナルガスさんに、とうとうピアルさんが諦めたみたいだ。


「いいか。ソラの邪魔をするなよ」


「ソラ?」


「スライムの名前だ」


「…………分かった」


押さえ込まれた状態で、小さく頷くピアルさん。

ほっと安堵した表情を見せたナルガスさんが、ピアルさんの肩を2回たたいてから解放した。


「悪い。かなり強めに押さえつけたが、大丈夫か?」


「あぁ、1つだけ確かめさせてくれ」


「なんだ?」


「……ジャッギがスライムに喰われているわけでは無いんだな?」


ジャッギ?

ピアルさんの視線を追うと、ソラが治療している最後の人。

どうやら彼がジャッギさんらしい。


「あれは喰われているわけでは無く治療中だ。詳しく話すから手からナイフを放せ」


ナルガスさんの言葉にピアルさんの手を見ると、ぐっと握られているナイフ。

まだ安心できなかったようだ。

ソラを見る。

……何も知らないと確かに全身ぱっくり食べられているように見える。

起きて、仲間のそんな姿を見たらとりあえず助けようと行動するか。

ナルガスさん、気付いてくれてありがとう。


「えっと、そちらは?」


「初めまして、ドルイドと言います。こっちは娘のアイビー」


「初めまして。あとこの子たちはシエル、フレム、ソルです。ジャッギさんを包み込んでいるのはソラです」


ナルガスさんの部屋でのんびりお茶を飲んでいる親子。

ベッドには仲間の1人がスライムに喰われているように見える状態。

これって、どう見えるんだろう。


「ピアル、その人たちのお陰で俺たちは命拾いしたんだ」


「どういう意味だ?」


ナルガスさんが説明を始めたので、お任せして新しいお菓子に手を伸ばす。

ガリットさんがお菓子を用意してくれたのだが、種類が多く味も色々あって楽しい。


「こっちは少し甘めだな」


「どれ?」


「その黄色のやつ。あーん」


お父さんが少し甘いといったお菓子を差し出すので食べる。

口に広がる濃厚な甘み。

すぐに飲み物を飲む。


「お父さん、これかなり甘いよ」


ちょっと甘すぎる。


「そうか?」


「もしかして疲れているんじゃない?」


「あ~、ここ数日ずっとバタバタしているからな、寝ても何となく落ち着かないし」


確かに、どこに魔法陣があるのか分からない状態だから、村の中を歩く時は緊張するんだよね。

敵の姿もさっぱりだし。


「あの……」


ピアルさんが私たちの傍に来ると、頭を下げた。


「先ほどは失礼しました。助けていただいて、ありがとうございます」


どうやらナルガスさんと話をして今までの矛盾などに気付いたんだろう。

良かった。


「気持ち悪いところなど無いですか?」


「大丈夫です。それにしても、すごいスライムをテイムしてますね。能力もそうですが、あんな綺麗な半透明のスライムや黒のスライム。それに変わった柄のスライムなど初めて見ました」


確かにソラたち以外に見たことが無い。

色々知っている師匠さんも「珍しい」と言っていたから、そうとうレアなんだろうな。

変わった柄はアダンダラの柄そのままだけど、気付かないもんだね。


「ぷっぷぷ~」


最後のジャッギさんが終わったみたいだ。

ソラがぴょんとジャッギさんから離れる。


「ソラ、ありがとう。ソルもね」


「ぷっぷぷ~」


「ぺふっ」


嬉しそうに揺れるソラとソル。

ナルガスさんの仲間を全員救えた事にほっとすると、全身にけだるさを感じた。

私は何もしていないが、精神的に疲れているのかもしれない。


「大丈夫か?」


「うん、大丈夫」


お父さんが心配そうに頭を撫でてくれる。

ゆっくり撫でてくれるからちょっと眠くなるんだよね。


「寝ていてもいいぞ」


お父さんの言葉に首を横に振る。


「大丈夫」


ポーン。

ナルガスさんたちの家の呼び出し音が部屋に響く。

ナルガスさんが腰に佩いた剣の持ち手に手を添えて部屋を出ていくと、ピアルさんの手にもナイフが握られた。

少し緊張感が漂う部屋。


「開けるぞ。父さんたちだった」


ナルガスさんが部屋に入ってくるとピアルさんの唖然とした声が聞こえた。


「ナルガスの父さん? えっ?」


「あっ。…………気にするな」


「いやいや、あのナルガスの父さん? 何があったんだ!」


あれ?

詳しい話をしたはずなのに、どうしてジナルさんの事を知らないの?

首を傾げると隣でお父さんが小さく笑っていることに気付く。


「何?」


「いや、彼はきっと恥ずかしくて話せなかったんだろうな」


あぁ、なるほど。

という事は、ナルガスさんの仲間たちは彼の事情を知っているんだね。

それからしばらくピアルさんに遊ばれたナルガスさん。

彼がブチ切れたところで、ベッドで寝ていたナルガスさんの仲間の2人が目を覚ました。

1人はジャッギさん、もう1人は誰だろう?


「ジナルたちは?」


ピアルさんたちが落ち着いた頃、お父さんがナルガスさんに声を掛ける。

ちょっと恨めしそうな表情のナルガスさん。

「もっと早く止めて下さい」と小さな声が聞こえたが、お父さんは肩を竦めた。


「はぁ、1階で全員が下りてくるのを待ってます」


「そうか。なら俺とアイビーは先に1階に下りるから、彼らに説明をしてから来てくれ」


お父さんはそう言うと、ソラを頭の上に乗せシエルを持つ。

それを見て、私は慌ててソルとフレムを抱き上げた。

困惑した表情のジャッギさんたちに軽く頭を下げてから1階に降りた。


ここはナルガスさんたち『蒼』のメンバーの家で、売ってしまったお父さんの家ぐらい広い。

今居た部屋は普段はマジックアイテムを収納する部屋なのだが、急遽マジックアイテムは撤去され3台の簡易ベッドが設置された。

別々の部屋だと異変が起きた時に対処できない可能性を考えてのことらしい。


「お疲れ様。ソラたちもありがとうな」


1階に下りると、ガリットさんたちが疲れた表情でソファに座っていた。

他人の家なのに気にした様子が一切ない。

図々(ずうずう)しい? 太々(ふてぶて)しい? どっちだろ?


「どうした?」


「いえ。それより何か掴めましたか?」


私の質問に3人は首を横に振る。


「術から解放されたから何か掴めると思ったが駄目だった。まったく犯人に繋がる物が見つからない」


やはり、既に犯人はこの村にいないのだろうか?


「魔法陣の手掛かりは?」


「そっちも駄目だ。どこにあるのかさっぱり分からない」


ジナルさんたちとお父さんがため息を吐くと、2階からがやがやと少し騒がしい声が聞こえてくる。

何となく聞いていると、ナルガスさんが仲間たちからからかわれているのが分かった。

大丈夫かなと思っていると、「よかった」や「安心」などの声も聞こえてくる。


「ナルガスは良い仲間を見つけたみたいだな」


「そうだな。よかった」


お父さんの言葉にジナルさんは嬉しそうに笑った。


本日より更新再開です。

またよろしくお願いいたします。

今回は感想よりヒントを貰い書きました。

ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ドルイドさんは甘いものがあまり好きじゃなかったはず、、 あとドルイドさん、ピアルさんが起きたときに全く反応しないのヤバくないですか?? 「ああ、なるほど」って呑気すぎる。 もしもナル…
[気になる点] 本文抜粋 『何となく聞いていると、ナルガスさんが仲間たちからからかわれているのが分かった。 大丈夫かなっと思っていると、「よかった」や「安心」などの声も聞こえてくる。 「ナルガスは良…
[気になる点] 最後の、ナルガスさんの言葉にジナルさんは〜という部分は、ナルガスはいい仲間を見つけたみたいという台詞を指すと思うんですが、ナルガスがナルガスの事を話している事になりませんか?
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