3話 占い師は知っていた!
朝。
誰も、起こしに来なくなった。
あの衝撃の日から数日。
既に諦めたし。
兄や姉にも、話が伝わったみたい。
両親を困らせたと、嫌味を言われた。
私のせい?
もう、分からない。
とりあえず、5歳の私がするべきことは体力作り。
逃げるにしても体力が一番大事だと思う。
あと、森の中で食べられるモノを探す技術。
どちらも誰にも聞けないから、私には難しい。
でも、覚えるしか……体力をつけるしかない!
森の中を走って移動。
体力をつけるなら走れと、頭に浮かんだ。
前の私だろう。
此処は素直に聞いておく。
今日も朝から木の実を探すが、なかなか見つけられない。
森の中を1人で走りまわる毎日にも、徐々に慣れてきた。
ちょっとだけ体力はついたような気がする。
……ただの希望かもしれないけど。
……
ふっと意識が浮上する……あれ?
疲れて、眠っていたようだ。
隣を見て固まった。
初老の女性が座っていたのだ。
視線が合うと目元の皺を深くして、にっこりする。
その笑顔で思い出した。
この人は、村に住んでいる占い師だ。
いつも穏やかな笑顔で、村人の相談にのっていた。
「こんにちは」
「……はい、こんにちは」
占い師の人が話しかけてくれた。
何だろう、心がジーンとなる。
ここ数日で、私の事は村の人たちに知れ渡った。
それからは私には、誰も声をかけないし、見えていない者とされた。
「どうして?」
占い師は私を見て、静かな声で話し始めた。
「私の占いは、先読みなんです。
星が1つなので、ほんの少しの先しか見ることは出来ませんが。
前にあった時に、あなたが何かによって今の状態になっているのが見えました。
ただ、原因を見ることは叶いませんでしたが」
「……そっか」
いろいろ思う事はあるけど、占い師が悪いわけではない。
私の今の状態は……この世界では仕方ないのだと思う。
前の私が言っていた、理解できない者を排除するのはどこも同じだと。
少しだけ理解はできる、納得はできないが。
「プレゼントです」
渡されたのは、1つのカバン。
戸惑ったけど、受け取って中を見てみる。
見た目よりもいろいろ入っている。
「劣化版のマジックバッグです。
中にいろいろと入れておきました。
これからきっと、必要となるだろう物を」
カバンをひっくり返す。
本当に、いろいろと出てきた。
本が数冊、食べ物の見分け方や毒草についての本だ。
ポーション……数本あるけど、どれも色が違う。
小ぶりのナイフ。
占い師を見る。
「劣化版は捨てられるので、手軽に手に入れる事が出来ます。
正規のマジックバッグは時間停止がついていますが、手に入れるにはお金が必要です。
ポーションも、そこにあるのは劣化版です。
効きはよくありませんが、正規のポーションはかなり高く子供では買えないでしょう。
……1人で生きていくには、劣化版でも必要だと思います」
この人は優しい人なのだと思う。
別に私によくしなくても、何も問題はない。
なのに、生き方を教えてくれている。
「ありがとうございます」