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383話 誰だろう?

「大丈夫か?」


「うん、少し眠いけど大丈夫」


心配そうに覗き込むお父さん。

師匠さんにファックスを送る事になったのだが、色々寝る前に考えていたら寝られなかった。

完全な寝不足の上に考え過ぎてちょっと頭が痛いな。


「ポーションを飲んでおいた方がいいぞ」


「うん。そうする」


「どうしたんだ? 昨日の夜もあまり寝てなかっただろう?」


夜中に何度か「大丈夫か?」と訊かれたから知られているよね。


「うん、色々考えていたら寝られなくなって。眠ってもすぐに起きちゃって」


「そうか。『ふぁっくす』を送ったらテントに戻って休憩しよう」


お昼寝かな。

それはいいかもしれない。

商業ギルドに入り周りを見渡すが、人があまりいない。

普通の時なら、村の商人や他の村や町から来た商人さんで慌ただしいのに。


「少し異様な静けさだね」


「誰もこの村に来れない状態だし、出れない状態だからな」


建物の奥の入り口から見えないところに、ファックス専用のスペースが用意されている。

そこへ行くと、男性が1人何か作業をしていた。


「すみません。『ふぁっくす』が届いているか確認したいんですが」


「いらっしゃい。あぁ、あなた方は。ギルドカードを机の上の石板に乗せて下さい」


お父さんが商業ギルドのカードを出して石板に乗せると、棚の1つが微かに光る。

男性がそこから紙を数枚取ると、私たちに渡してくれた。


「間違いないかご確認ください」


手元のファックスの送り主を調べていく。

ヌーガさんとフォロンダ領主から届いている。

あっ、ヴェリヴェラ副隊長さんだ。

珍しいな、いつもはオグト隊長さんなのに。

何かあったのかな?


「そっちは問題ない? これ、ボロルダさんから来てるぞ」


「ありがとう。問題ないよ。どうしたの?」


確認してお父さんを見ると、1枚の紙をなんとも言えない表情で見ている。


「あ~、後で言うから」


「うん」


何だろう。

たぶん家族からのファックスだと思うけど、何かあったのかな?


「大丈夫ですか?」


男性の声にお父さんが問題ない事を伝える。


「すぐに『ふぁっくす』を送りたいので、机を貸してもらえますか? あと紙を3枚下さい」


「どうぞ、ここを利用する人はあまりいないので。ご自由にお使いください」


男性が紙を3枚お父さんに渡す。


「少ないんですか?」


男性に訊くと、頷かれた。


「そうなんですよ。あまり皆さん使いませんね。利用される方は商人が何か確認する時ぐらいです」


そうなんだ。

皆使わないんだ。

だからどこに行っても、いつもすぐに対応してくれるのか。

どの村でファックスを使っても、使っている人と出会った事が無いもんな。

近くに置いてある机にお父さんと隣り合って座る。


「魔力や気配を感じさせない魔物の事となんだっけ?」


「急に魔物の数が増えた事も書いた方がいいかもしれないよ」


お父さんがファックスを書くのを隣で見る。


「そうだな。他にも何かあるかな?」


他にか~。


「あっ、森の中に違法な捨て場は、見つけられなかったと書いておかないと」


「そうだったな」


他に伝えておくことはあるかな?


「アイビー」


「どうしたの?」


お父さんがファックスから顔を上げて天井を見る。


「本当に違法な捨て場は無いと思うか?」


それは私も疑問に思っていた。

でも、ある噂と問題の魔物の事を考えると「ない」と判断は出来ないんだよね。

洗濯場で聞いた噂。

それは捨て場をよく見ている人が違和感を覚えるというもの。

これは結構重要な事だと思う。

そしてこの村の周辺に現れた、特殊な能力を持つ強い魔物。

特殊な能力には魔力量は関係ないと聞いたが、後で確認すると凶暴性や強さにはやはり魔力量がある程度必要だった。

この村の周辺で問題になっている魔物は、気配を隠すのが上手い。

それはきっと特殊な能力によるものだろう。

これだけだったら、少しのゴミの中に特殊なマジックアイテムがあった可能性が考えられる。

でも、問題の魔物は上位冒険者に傷を負わすほど強い。

つまり、どこかに魔物を強くするだけの大量のゴミがある。


「どこかにあると思う」


普通に探しても見つからない場所。

つまり隠されている違法な捨て場。

隠されている以上、冒険者たちの捨て場ではない。

では誰の捨て場なのか。

噂から考えたら、村から出た大量のゴミが捨てられているはずなので、村のための捨て場。

でも村のための捨て場なのに、隠しているのが問題。

なぜ、隠す必要があるのか。

有名なテイマーさんが亡くなって、ゴミの処理能力が低下したらしい。

それを村の人たちに知られないようにするため?

そんな事をする意味はさっぱり分からないけど。

ただ、冒険者が通りすがりに捨てていくのとはわけが違う。

村から出るゴミは管理されているはず。

それを隠せる人は限られていると思う。


「やはりそう思うか」


「うん。隠されている違法な捨て場がある。それも結構なゴミが集まっていると思う」


お父さんを見ると、小さくため息をつき苦笑いを浮かべた。


「面倒な事になるな。村が主導しているのか。それとも個人の誰かが勝手にやっているのか」


あっ、村が主導している可能性もあるのか。

それは想像もつかなかった。


「本当に面倒だね」


実は昨日の夜、寝られなかったのはこの事に気付いたから。

だって間違いなく大問題だから。

周りを見渡す。

先ほど対応してくれた男性は、席を外している。

だからお父さんは、こんな話をしたんだろうけど。


「あぁ、ごめん。これを持っているから」


お父さんが、首から下げたマジックアイテムを見せる。

それは周りに会話を聞こえさせないためのアイテム。


「もう、心配して損した」


それを見て、ホッと肩から力が抜ける。

いつの間に、そんな物を買っていたんだろう。


「お父さんはいつ気付いたの?」


「昨日かな。噂や魔物について色々考えていたらあれ?って思ってな」


「そっか」


「ここからが問題だな」


お父さんが大きなため息をつく。

つられて私もつく。


「誰が知っていて、誰が知らないのか?」


「あぁ」


そう言えば風のジナルさんたちはどうなんだろう。

彼らもちょっと不思議な所があるんだよね。


「あっ。師匠さんにジナルさんたちの事を訊いてみない?」


「それいいな。風を知っているか訊いてみるよ」


いい人だと思う。

ソラも大丈夫だと判断している。

でも、何か気になるところがあるんだよね。

お父さんが心配している以外の事で。


「出来た。読むか?」


「隣で覗いていたから大丈夫」


それに改めて読むかというほどの内容でもないよね?

だって「ハタカ村で気配や魔力を隠す魔物が発生、ここ数日で数を増やす。身動きできず。風を知っているか? 知ってることの連絡を待つ」だけなんだもん。

簡単すぎる。

そう言えば、どうして3枚も紙を貰ったんだろう?


「そうか。マジックアイテムの起動を止めるな」


「うん。残りの紙はどうするの?」


「あぁ、家族に送るのに使おうと思って」


「なんだ。師匠さんに3枚も送るのかと思ってた」


「それは絶対に無い」


「あははは、そんな真剣な顔で言わなくても」


男性が戻って来たので、ファックスを送ってもらう。

2、3日中に返信があるだろう。

何か答えがあるといいな。


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― 新着の感想 ―
台車でどこかに運んでるんだろうな。
[良い点] ああ、そっか。そういえば幽霊的な何かがゴミを運んでる台車でなにかを運んでるっていう話がありましたね。そこがつながってくるのか……
[一言] 公式な捨て場でも放置してたら違法な捨て場と変わらないのでは? 何か魔法的な結界があるのかな?
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