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372話 上位? 中位?

村へ近づくと門番さんたちが少しほっとした表情になる。


「なんだ?」


「さぁ?」


ジナルさんとガリットさんが首を傾げる。


「おかえりなさい」


「ただいま。さっきのけが人はどうしたんだ?」


「それが、急に襲われたらしくて。彼らが言うには目の前に現れるまで、魔物の存在に気付かなかったそうです」


やっぱり。


「そうか。何かあったら広場の近くの宿『ミチェル』にいるから声を掛けてくれ」


ガリットさんの言葉に安堵の表情を見せる門番さんたち。

ジナルさんが苦笑いしながら門を抜け村に入る。


「あんなに安心されると困るんだが」


ジナルさんの言葉にガリットさんも苦笑する。


「そうだよな。この村にも上位冒険者がいるんだから。彼らの領分を侵すつもりはないぞ。争い事を招くだけだし」


あれ?

調査隊の事を知らないのかな?


「今、この村の上位冒険者が出払っているので心配なんだと思いますよ」


私の言葉に3人が不思議そうに見てくる。

知らないのか。


「森の異変に調査隊が組まれて、上位冒険者が駆り出されているんです」


「なるほど。あっ、という事はあいつも行ったのか?」


ジナルさんが少し残念そうな表情を見せる。

あいつ?

疑問に首を傾げると、それを見たジナルさんがちょっと恥ずかしそうな表情をした。


「俺の息子がこの村で上位冒険者として認められたんだよ。その祝いをしに来たんだ。予定を訊いて、明後日に祝いの席を設けたんだが……」


ジナルさんの息子さんが上位冒険者!

彼はまだ40代ぐらいだから、息子さんは随分若くして上位冒険者になったって事だよね?

親子そろってすごい冒険者って事か。

すごいな。


「ん? という事は今何かあったら俺たち駆り出されるのか? 面倒くさい」


フィーシェさんがちょっと嫌そうに言う。

次の瞬間、ジナルさんがため息と一緒にフィーシェさんの頭に一撃を入れた。


「いっ! 何だ」


「いや、イラっとした」


面白いやり取りだなと笑って見ていると、ジナルさんに複雑な表情をされてしまった。


「ドルイドさんたちは何処に泊まってるんだ?」


「広場ですよ」


お父さんの言葉に「近くだな」とガリットさん。


「話が途切れたがどうする?」


ジナルさんがお父さんとガリットさんたちを見る。


「どうするって。調査隊が帰ってくるまで村で待機だろ。動きようがない」


やはり村で待機か。


「とりあえず、ギルマスには顔を見せておくか」


「そうだな。何かあった場合は協力しないと駄目だろうしな。あ~、楽しい旅の予定が」


ガリットさんの言葉に、フィーシェさんが心底嫌そうな表情を見せる。

フィーシェさんは黙っていれば、とても綺麗というかかっこいい。

なのに、言葉と表情が残念。

パーツは本当にいいのに。


「イケオジなのにもったいない!」


「「「「ん?」」」」


「……いえ、なんでもないです」


どうして今出たの?

前の私!

しかもイケオジって何?

えっとフィーシェさんを見て思ったんだよね。

そう言えば「もったいない」とも言ったな。


「大丈夫か」


お父さんが私の眉間に指をあてる。

驚いて前を見ると、苦笑を浮かべているお父さん。


「すごい皺」


「あっ!」


考え込んで眉間に皺が寄っていたらしい。

指で伸ばしておく。


「どういう意味だったんだ?」


お父さんが耳に顔を寄せて小声で訊いてくる。

それに首を横に振る。


「意味不明です」


「なるほど」


お父さんがちょっと残念そうな表情をする。

何とか説明したいけど、本当に意味が分からない。

前の私も言葉を思い出すなら、意味も思い出してほしい。

それにしても久々だな。

自分でも一瞬、何が起こったのか分からなかった。


「ドルイドさんはアイビーちゃんと仲がいいんですね。俺のところは最近ちょっと……はぁ」


フィーシェさんが私たちを見た後に大きなため息をつく。

最近何かあったのだろうか?

仕事であちこち行くから、拗ねられているとか?


「ただの反抗期だろ? そんな気落ちするな」


あぁ、反抗期か。


「そうなんだよな。奥さんにも言われている。過剰にかまうなって。はぁ」


すごい哀愁が漂っているな。

本当に娘さんが大好きなんだろうな。


「ドルイドさん、魔物の事で何かわかったら教えようか?」


「お願いできますか?」


「あぁ。ところでテントは広場のどのあたりだ?」


ガリットさんが広場の入り口から中を見る。

お父さんが指を指す方を確認して、頷いた。


「分かった。調査隊だったら明日か明後日には帰って来るだろうから。夕方ぐらいに邪魔するよ」


「分かりました。夕方にはテントに居ますので、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


お父さんに続いて、頭を下げる。

ジナルさんとガリットさんは、軽くうなずいた。

フィーシェさんからは、なんだか小さい子を見守るような、なんとも言えない視線で見られた。


「では」


手を振っているフィーシェさんに、苦笑を浮かべながら手を振り返す。

広場に入ると、少し張り詰めたような気配がする。


「冒険者が襲われた事が既に広まっているな」


なるほど、それで緊張感があるのか。

自分たちのテントまで戻ると、テントの中に入りバッグを開ける。

ソラたちが勢いよくバッグから飛び出す。


「ソラ、ジナルさん、ガリットさん、フィーシェさん……皆、大丈夫な人たちなんだね。ありがとう」


『風』のメンバーを順番に名前で呼んでソラの様子を見る。

どの名前にも特に反応せず、じっと私を見つめている。

つまり、私たちの害にはならないという事。

ソラをそっと撫でて、バッグからポーションを……食事をしてきた後だった事を思い出したので止めた。

もう一度ゆっくり撫でてお礼を言った。


「夕飯は何がいい?」


「お父さんが作るの?」


「あぁ、久々に作りたくなった」


「だったら、丼ものがいい」


マジックバッグから材料や調理器具を取り出していたお父さん。

私の言葉に「了解。ゆっくりしとけ」と言って、テントから出て行った。


「もしかして心配掛けちゃったかな?」


魔物に襲われた事を思い出してちょっと震えてしまったからな。

大丈夫だと思ったけど、あの時の恐怖は残ってるよね。

そう言えば「父親の俺には甘えていいんだ」と何度も言われているな。


「甘えちゃおうか」


私の言葉にソラたちがピョンと座っている私の足に乗ってくる。


「びっくりした。もしかして甘えていいの?」


私を見つめてプルプルする4匹。

……可愛すぎる。

ギュッと皆を一気に抱きしめると、心がふわっと温かくなった気がした。

あれ?

そう言えばお父さんは中位冒険者で通していたけど、異変に気付いているって言ってよかったのかな?


…………


「風」のジナル視点


「ガリット、ドルイドという名前に聞き覚えは?」


「いや、無い」


俺の言葉にガリットが首を横に振る。


「2人とも知らないのか?」


フィーシェが酒を飲みながら俺たちを見る。


「あぁ」


「だが、上位冒険者だよな? 森の異変に気付いているんだし」


フィーシェの言う通りだ。

あの違和感に気付いているのだから、間違いなく上位冒険者だ。

だが、俺たちはドルイドという名前を知らない。

今年に入ってから新たに認められた者たち以外は、全ての上位冒険者を記憶しているはずなのに知らない。

どういう事だ?


「実力はあるが、片腕だから認められなかったとか?」


「そんな事あるか?」


実力があるなら確実に認められるはずだ。

それに彼の持っていた剣。

あれは相当な代物だ。

腰ひもで隠していたが、ちらっと見えた剣にはめ込まれていた魔石。

ぱっと見ただけですごい力を感じた。


「訳ありかもな」


「訳あり?」


ガリットの言葉にフィーシェが首を傾げる。

上位冒険者になると、色々とややこしい事が付きまとう。

神殿や貴族、あとはまぁ色々と。

それらと関わりあいたくない場合、実力を隠す者がいる。

ただ、中位と上位では収入面でかなり差があるため、それも少ないが。

隠す理由として、もう1つ考えられることがある。


「犯罪者じゃないよな?」


ガリットの発言に言葉が詰まる。

そう、犯罪者の場合も隠す場合がある。

アイビーさんが思い浮かぶ。

調べた方がいいのか?


「……あの殺気、ちょっとビビったよな」


フィーシェの言葉にドルイドから飛ばされた殺気を思い出す。

確かにあれはやばかった。


「アイビーさんに、襲われた時の事を思い出させたからだろうな」


「いやいや、あれは俺たちのせいではないだろう?」


ガリットの言葉にフィーシェが反論する。


「そうだが、切っ掛けを与えたからな」


はぁ、息子の祝いに来てなんでこう色々な事に巻き込まれるんだ?


「少し様子を見よう。犯罪者だとしてもアイビーさんがいる以上無理はしないだろう」


かなり大切にしているのが分かる。

顔色を悪くして震えた瞬間、俺たちに殺気を送るぐらいには。

あれはきっと無意識だろうな。


冒険者のレベルについて、上級や上位が混じっていました。

上位、中位、下位が正解です。

魔物も同じです。

大変、申し訳ありませんでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ドルイドさんのアイビー愛♡ 4匹のアイビー愛♡ アイビーが段々甘えられるようにはってきてるのも良き
[気になる点] ドルイドの殺気を感じた点ですが、前話を読み返してみて、話の流れからは、そこまで殺気を出すような感じがしなかったのでアイビーが怖がった所より、不意に声かけした時の方がドルイドらしい気がし…
[気になる点] なぜ、ここは「お父さんが作るの?」ではなく、「ドルイドさんが作るの?」となっているのでしょうか。何か意味があるのでしょうか。 [一言] いつも楽しく拝読しております。これからも頑張って…
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