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350話  本祭前

朝早くからにぎわう大通り。

まだ、本祭開催まで2時間もあるが、すでに多くの人が本祭が始まるまでを楽しんでいる。

今日の参加者は既に白い服を着ているようで、大通りが白に埋め尽くされているのはすごい。

明日の参加者は白以外の服を着ているが、圧倒的に白が多い。

すごいとは思うけどちょっと異様な風景に見えた。


「色粉の団子はどこで貰えるの?」


「染料を貰った場所で昨日引いた抽選券と引き換えに貰う事が出来るんだ。混むから今から行こう」


「うん」


ドルイドさんの言う通り、色粉の団子を貰う人は既に長い列を作っていた。


「受け渡しだけだからすぐだろう」


「そうみたいだね」


列を見ていると動きが早い。

抽選券と団子を入れ替えるだけなので、それほど手間ではないのだろう。

人を避けながら最後尾に並ぶ。

すぐに後ろに人が並ぶのは染料の時と一緒だ。


「2日に分けても人が多いね」


「そうだな、次に参加する時は3日間とかになってそうだな」


「ありえそう」


話をしていると順番が来る。

ドルイドさんが抽選券を係の人に渡すと2個の袋が渡された。


「祭に変更がありますので、あちらの看板を読んでいってください」


祭に変更?

係の人が指す方向を見ると、大きな看板がある。

その前に人だかり。


「見ていこうか」


「うん。変更って何だろうね?」


「人が多いからその対策だろう」


なるほど、確かに多いもんね。

看板前にも係の人がいるようで少しすれば看板を読むことが出来た。


「えっと、開始約1時間前より、宝探し開始。特別な色と白の団子を隠しているので探しましょう。宝探しってまたすごい事考えたな」


宝探し?

祭とどんな関係があるのだろう?


「あとは、本祭開催と同時に黒い服を着た者たちが登場。逃げるので白い団子のみをぶつけてください。1年間、いい事がありますよ」


黒の服の人たちは逃げ回るんだ。

なんだか聞いていた祭より、ちょっと大変そう。


「なんで、宝探しとか追加したんですかね?」


「ん~。とりあえず、邪魔になってるから移動しようか」


「そうだね」


係の人の誘導で看板前から離れて人が少ない方へ歩く。

大通りを曲がり脇道に抜けしばらく歩くとようやくゆっくり歩けるようになる。


「白色の団子か。ここに、入ってるのかな?」


持っている袋を持ち上げる。


「確認してみよう」


隅に避け、中を確認する。

手の中にすっぽり隠れる大きさの団子が30個。

よく見ると似ているようだが1つとして同じ色がない。


「全部違う色なんですね。少し赤系が多いかな。白は無いみたい」


団子を手に持ってみる。

少し柔らかい団子は、当たっても痛くなさそうだ。


「こっちは緑系が多いみたいだ。赤系は少しで白は無し」


「白は宝探しでしか手に入らないって事かな?」


「そういう事だろうな」


ドルイドさんと色を確認し終えると、空いている道を選んで自警団詰め所へ向かう。

フォロンダ領主の話は自警団の詰め所前で行われると聞いている。

詰め所が見えるところまで来ると、さすがに人がまた多くなる。


「まだ時間あるし、あの人ごみの中で待っているよりここでいいか?」


「うん。少し隅によって休憩していい?」


「あぁ、それにしても本祭当日だけあって前祭より人がすごいな」


「前祭の時も多いと思ったけど今日ほどじゃないよね?」


大通りとそこから続く脇道を見る。

また人が増えたのか歩くのも大変そうだ。


「あれは多すぎるな。けが人が出なければいいが」


確かに少し身動きが出来ない様子が見られる。

大丈夫かな。


「ソラたちを連れてこなくて良かった」


前祭の時から人の多さが気になり、ソラたちには宿で留守番をしてもらっている。

普通に歩くだけでもよく人とぶつかる。

ソラたちが押しつぶされて怪我でもしたら大変だ。

そう言ったら、ドルイドさんに「怪我をする事は無いと思う」と言われたが、心配は心配。

それに「祭に行きたい?」と皆に問うと、一斉に拒否された。

人混みが苦手なのかもしれないな。


お店の壁に寄りかかって通りを見ていると、詰め所から数人の人が慌てて出てくるのが見えた。


「何かあったのかな?」


「あれ? やっぱりアイビーとドルイドだ。おはよう」


後ろからのんびりした声が聞こえる。

振り返るとフォロンダ領主が手を振ってこちらに近付いて来る。


「「おはようございます」」


「どうかしたんですか?」


ドルイドさんの視線の先をフォロンダ領主が見る。


「あれだけの人だから、怪我人でも出たかもしれないですね」


怪我人だったら大事にならないといいけどな。

祭の日に怪我なんて悲しい。


「そういえば、私の話ですが」


「はい」


「祭の最終日にすることになりました。ここまで来てもらったのに申し訳ない」


変わったのか。

まぁ、祭も変更があったし仕方ないのかな。


「いえ、大丈夫です。最終日って祈りの日ですか?」


「えぇ、終わりの挨拶を私がするんです」


それはすごいな。

大役だ。


「それにしても、ここの村の人たちはすごいですね。予定していたより人が多く集まったとわかった瞬間から、人をいかに分散させて怪我人を減らすかと考えていましたから」


フォロンダ領主の言葉に首を傾げる。

分散?


「だから宝探しですか?」


「えぇ、そうすれば大通り周辺に集まりすぎた人たちが、脇道などに自然と流れるでしょう?」


なるほど。

探している時なら人はゆっくり移動するだろうし、大通りから人が自然と離れていくだろう。

あれ?

だったら、それだけで十分だよね。

黒い服を着た人たちの役割は?


「あの、黒い服を着た人たちは、どういう理由で参加するんですか?」


「彼らが逃げ回る事で、1つの場所に人が集中することを防ぐ事が目的だろうな」


ドルイドさんの答えにフォロンダ領主が嬉しそうに頷く。

人が集まりすぎると、いい事無いもんね。


ピッピッピー。


「準備はいいですか?」


不意に村中に笛の音と男性の声が響き渡る。

それに体がびくりと震えてしまう。


「只今より、宝探しを開始します!」


男性の声が終わると村のあちこちから歓声が上がる。


「さてアイビー、ドルイド。探しに行きましょう」


「えぇ、行くんですか?」


フォロンダ領主は既に周辺に視線を走らせている。

なんでこんなにやる気なのだろう?


「楽しそうではないですか? ほら、行きましょう」


フォロンダ領主が歩き出すので、ドルイドさんと慌ててついていく。

もちろん参加する予定だったので問題ないが、フォロンダ領主が率先して探し出すとは思わなかった。

通りをゆっくり、白の団子を探しながら歩く。

しばらくすると後ろから声が聞こえる。

振り返ると、大量の白い服を着た人がこちらにゆっくり移動しているのが見えた。

団子を探しながらなので、全員がきょろきょろしている。


「一種異様な光景だよね」


「アイビー、残念ながら俺たちもあれに含まれるからな」


ドルイドさんの言葉に衝撃を受ける。

が、今着ている服を見下ろす。

白。


「そうだった」


私の言葉にドルイドさんとフォロンダ領主が笑う。

その時、微かに人の喜ぶ声が聞こえた。

見ると、私たちが探した場所で団子を見つけたようだ。


「あんなに小さい箱なんですね」


遠くからだが、見つけた人が持っている物が見えた。

手の中に隠れるほどの大きさの箱だった。

きっと入っているのは団子1個だろう。


「悔しいですね。あそこは探したのに」


本気で悔しがるフォロンダ領主にドルイドさんと一緒に笑ってしまう。


「何を探せばいいかわかったので、頑張りましょう」


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[気になる点] 350話  本祭前 350話 本祭前 350話だけがタイトル一行ずれてましたよ。
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