339話 噂は本人から
あれ?
どうして夫婦仲が良くないと子供は出来ないの?
仲が良くなくても子供は出来るよね?
何だろう、今まで特に疑問を持つこともなかったのだけど。
……なんで急に気になりだしたんだろう。
「どうした?」
「いえ……あの、ちょっとおかしなことを訊きます。夫婦仲が悪くても子供は出来るよね?」
「えっ? それは無理だろう?」
そうだよね。
うん、無理だよ。
「あれ?」
なんだか頭が混乱してきた。
えっと、夫婦仲が悪いところには子供は出来ない。
そう、それはこの世界では常識。
なのになんで不思議に思ったんだろう?
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫だと思う」
もしかして前の私の影響かな?
こことは違う常識があるみたいだし。
ふぅ~、落ち着こう。
「よし、大丈夫です。あっ、ご飯が炊けたみたい」
あとは卵でとじてご飯に乗せれば完成。
「ドルイドさん、ご飯できたよ」
「あぁ、さっきのはなんだったんだ?」
「気にしないで、前の私の記憶が混ざったみたい」
「なるほど、大変だな」
確かにそうだね。
なんで、前世の記憶をもって産まれたのかな?
まぁ、そのおかげでこれまで生きてこられたのだから感謝してるけど。
時々、知識が混ざってしまうのだけが問題だな。
「「いただきます」」
「やっぱり美味いな」
「ありがとう」
ちょっと作り過ぎたと思ったけど、完食してくれた。
そんなに食べたかったのかな?
そういえば、この村の特産品って何だろう。
調べるのを忘れてた。
「ドルイドさんは、この村の特産品が何か知ってる?」
「特産品?」
「うん。まだ調べてないなって思って」
「オビツネも特産品の1つだな。俺も詳しくないからな。明日店でも見て回るか?」
「ん~、そうしようかな。気になるし」
ドルイドさんが食後のお茶の準備をしている間に、洗い物を終わらせる。
「「お疲れ様」」
部屋に戻ると、ソラとフレムは既にベッドの上で寝ている。
シエルは私たちが部屋に入ると出迎えてくれる。
「ただいま」
「にゃうん」
ソルの姿を探すと窓から外を見ていた。
「ソル、どうした?」
ドルイドさんの質問にプルプルと揺れるソル。
反応はするが、視線はずっと外を向いている。
「何かあるのかな?」
「どうかな?」
「にゃうん」
ソルを見ていると、ポンと太ももに軽い衝撃。
見るとシエルが足元から私を見上げている。
「ごめんね。どうしたの?」
抱き上げると、腕の中でプルプルと揺れて目を閉じた。
眠たかっただけ?
椅子に座って、シエルを足の上に乗せる。
「はい、確かめるだろ?」
ドルイドさんが、ファックスを持ってきてくれた。
「ありがとう」
今回のファックスはヌーガさんが担当のようだ。
彼らのファックスは、書く代表を変えて送ってくれる。
なので毎回特徴が違う。
ヌーガさんのファックスは、討伐した魔物の肉についての事が中心となっている。
魔物の一番美味しい部位の説明をされても困るなとは思うけど、面白い。
最後は他の人たちが一言を追加して終わる。
「あっ」
「どうした?」
ファックスの返事を書いているドルイドさんが私を見る。
「えっと、『ハタダ村あたりで多数のサーペントが疾走したらしいけど、まさかね』とシファルさんから一文が」
これって関係しているってばれてるのかな?
どうなんだろう。
『まさかね』とはどういう意味?
「あ~、それは気付かれている気がするな」
「なんで?」
私、そのことに一切触れなかったのに!
「これまでの経験上じゃないかな?」
「経験上? 私、大人しく旅をしているだけなのに」
私の言葉に、視線を彷徨わせるドルイドさん。
えっ?
大人しく旅をしてるだけだよね?
誰にも迷惑かけてないよ?
「まぁ、そうだけど。客観的に見るとすごい旅だと思うぞ」
そう?
シエルに案内してもらって、森の中を冒険しているぐらいなのに。
普通と違うと言えば、巨大サーペントさんたちと森の中を移動したぐらいじゃない?
それぐらいしか思い当たらないけどな。
他には何も問題は起こしていない。
いや、サーペントさんたちの事も村を襲ったわけではないから問題には……魔力の強さが問題なのかな?
確かにあれだけのサーペントさんたちが集まれば、その場所にはものすごい強い魔力が集まっていることになる。
それが森の中を移動したら、怖いな。
うん、怖いわ。
でもあれは不可抗力!
「まぁ、彼らなら問題ないし大丈夫だろう」
「そうだけど、なぜか『ばれた』という気持ちになって落ち着かない」
「はははっ。次に会った時に怒られるかもよ。目立ったら駄目だろって」
「目立ってないよ! 上に乗っていたのが私だってばれてないし」
確か……ヘビの下半身に人のような上半身の新種の魔物。
そう、魔物と認識されているなら私ではない!
「うん。新種の魔物だから大丈夫」
「いやいや。それこそ、その噂がセイゼルクさんたちの耳に届いたら彼らはどう思う?」
えっ?
この噂がセイゼルクさんたちに?
……私が関わっているとすぐにばれそうだな。
ラットルアさんもシファルさんも笑うだろうな。
他の皆も笑ってからかってくると思う。
でも、心配もかけちゃうな。
皆、心配性だから。
「心配掛けたくないな」
「ん~、だったら噂話を先に知らせておいたらどうだ?」
「えっ? 『ヘビの下半身に人のような上半身の新種の魔物』になりましたって?」
「改めて聞くと微妙な魔物だな。というか、『なりました』は駄目だぞ。こんな噂があるんだよってぐらいに収めといてくれ」
「あっ、はい」
「その微妙な魔物の噂と一緒に『私は大丈夫』と書いておいたらどうだ? 心配はされるだろうが、第三者から噂話の1つとして聞くよりいいだろう」
つまり、私が知らせておいた方がいいって事だよね。
「そうだね、私からの方がいいよね。自分で書くと恥ずかしい噂だけど、知らせておく」
ドルイドさんからファックス用紙を受け取り、返事のお礼と元気ですと報告。
次に罠の狩りについてと、村についても書いておこう。
賑やかな村ですと。
あとは噂話の事について書いて、私たちには問題ないという報告。
「終わった~」
「こっちも終わりと。さて、寝るか。遅くなったな」
「寝よう」
久しぶりに長文を書いて、疲れた。
ベッドを見ると、ソラたち4匹が気持ちよさそうに寝ている。
あれ?
いつの間にシエルは私の足から降りて行ったんだろう?
まったく気づかなかったな。
ぐっすり寝ている皆を見る。
「この頃、ソルがよく窓から外を見てるよね」
この村に着いた翌日ぐらいかな。
ソルがじっと窓の外を見ていると気づいた。
あの姿を見ていると、なぜだか不安を覚える。
「そうだな、この宿に来てからよく見るな」
「うん」
ソルに訊いても大丈夫と揺れるだけ。
でも、なぜか不安になるんだよね。
「お休み」
「お休み」




