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330話 またか!

「こんにちは」


なぜか笑顔で近づき、挨拶をしてくる自警団員さん。

やはり何かあるのだろうか?


「こんにちは、今日は1人なんですね」


ドルイドさんの言葉に周りを見回すが、誰もいない。

おかしいな、自警団員は何かあった時のために最低2人以上での行動が決まりだったはずだけど。

隠れているのかと気配を探るが、本当に誰もいない。


「えっと、今日はもう仕事が終わっていて。村で見回りをしている時にあなた方が門を出て行くのを見まして。村に帰ってくるまで待とうと思ったのですが、気持ちが抑えられなくて魔力を追いかけてここまできました」


追いかけて?


「なぜ、我々を?」


ドルイドさんの声に少し緊張感がにじみ出ている。

それに気付いたのか、自警団員さんが手を前に出して左右に振る。


「違うんです。怪しいとか思っているわけではなくて、あのお礼が言いたくて」


少し不安そうな表情をしながら、私たちを見る自警団員さん。


「「お礼?」」


この村に来てまだ3日目。

何かをした記憶は無いけれど。

あっもしかして、昔ドルイドさんが助けた事があるのかも?

隣にいるドルイドさんを見るが、首を横に振られた。


「あの俺はアシュリと言います。えっと、俺の父の事ですが、冒険者ギルドのギルドマスターの補佐をしています。俺が怪しいと感じたら、ギルドで身元を確認してください。父がきっと証明してくれるので」


「アシュリさん」


「はい」


名前をドルイドさんが呼ぶと、表情がパッと明るくなる。

悪い事をするような人には、見えないけどな。


「お礼とは何ですか?」


「あの、えっとドルイドさんとアイビーさんにちゃんとお礼が言いたくて」


「俺?」


「私も?」


アシュリさんの言葉に彼をじっと見つめる。

が、何も思い出せない。

もしかして魔法陣の影響で忘れているのかな?


「あのドルイドさんには3年前に魔物から助けてもらった事があって。アイビーさんとは会った事は無いのですが、アイビーさんが協力して潰した犯罪組織の事で、お礼が言いたかったんです」


ドルイドさんは3年前、私はあの犯罪組織の事でか。

まさか別々の事でのお礼だとは思わなかったな。


「あ~、3年前?」


ドルイドさんがアシュリさんを見て考え込んでいる。

しばらくすると、首を横に振った。


「悪い。思い出せないみたいだ」


ドルイドさんが、アシュリさんに頭を下げる。


「いや、頭を下げないでください。困らせる気はなかったんです。3年前にこの村の近くで大きな岩が崩れて、中から魔物が大量に溢れ出した事があったのですが、覚えてますか?」


魔物が大量に?

そんな事があるんだ。

怖いな。


「あぁ、たまたまこの村に来ていたから討伐に協力したな」


「それです! その時に、まだ駆け出しだった俺を助けてくれたんです。俺には魔力感知のスキルがあって、ちょっと図に乗って馬鹿な事をしてしまったんです。その所為で、3匹の魔物に襲われてもう駄目だと思った時に、ドルイドさんが助けてくれて」


ドルイドさん、かっこいいな。


「えっ、あの時の? いや、えっ? 本当にあの時の奴か? 何だかかなり……変わったよな?」


「あ~、あの時は…………色々暴走していた時期なので。今とはかなり違うと言いますか。その」


「ドルイドさん、アシュリさんはどんな感じだったの?」


私がドルイドさんに訊くと、アシュリさんが頬をうっすら赤くして情けない表情をする。

本当に、どんな感じだったんだろう。

ものすごく気になる。


「あ~、まぁ、若かりし頃にやることの1つかな。うん」


若い頃にやる事?

えっと……何だろう?


「そうか、あの時の子が君だとは。驚きだな」


ドルイドさんの声音が、嬉しそうに少し上がっている。


「あの時は、魔物の事でバタバタしていてちゃんとお礼が言えなかったから。えっと、本当に有難うございました。あの時、助けて頂いたおかげで家庭を築く事が出来たんです。本当に有難うございます」


深く頭を下げるアシュリさん。

家庭を築く……結婚したって事かな?


「こちらこそ、お礼をわざわざありがとうな。うれしいよ」


アシュリさんとドルイドさんが笑って握手をする。

なんだかほっこりする光景だなっと、ボーっと2人を見つめてしまう。


「アイビーさん」


握手を解いたアシュリさんの視線が私に向く。


「はい」


何だろう。


「犯罪組織から、娘を守って頂いてありがとうございました」


アシュリさんが私に向かって深く頭を下げる。

犯罪組織ってあの犯罪組織の事だよね。

ここでも悪さをしていたのか。


「あの、頭をあげてください。娘さんが無事でよかったです」


「はい、本当に」


アシュリさんが笑顔で頷く。

本当に娘さんを大切に思っているのが分かる。


「あの、娘さんを守るって……何があったんですか?」


「ギルドと自警団に犯罪組織の仲間がこの村にいる事、そして名前が載っている一覧が届きました。すぐにギルマスと自警団の団長が動いて名前が挙がった者たちを捕まえたんです。で、奴らのアジトが見つかったので捜査をすると、この村の重要人物たちの子供や孫たちを誘拐して売り飛ばす計画書が出てきたんです。誘拐する子供の一覧も」


本当にあの組織は、どこまでも腐ってる。


「その一覧に俺の娘の名前が載っていて、背筋が震えあがりました。たぶん父がギルマスの補佐をしているからだと思います。アイビーさんたちがあの組織を潰してくれたおかげで、娘は今も元気です。本当に、ありがとうございます」


「未然に防げてよかったです。うん、本当に」


私は誘拐されそうになったあの時、本当に怖かった。

ソラやシエルがいたから防げたけど、誘拐されていたらどうなっていたか。

考えるだけで怖い。


「アシュリ、訊いてもいいか?」


「はい。何でも訊いてください」


「俺とは会っていたから良いのだが、アイビーの情報はどこで知った? アイビーの事は極秘のはずだ」


あれ?

そう言えば、組織のトップにしか知られていないはず。


「昨日、巨大な魔力を村の近くで感じたんです。今まで感じたことがないほど大きな魔力でした。でも、その魔力を感じても怖さを感じなくて。不思議に思ったので当番が一緒だった奴らと見に行きました。そうしたらそこにドルイドさんがいて驚いたんですが、傍にいたアイビーさんの持っている物からものすごい魔力を感じて」


やはりバッグから魔力を感じていたのか。


「それで?」


「傍に寄っても魔力に対する印象が変わらなかったので、少し様子を見ようかと思って」


「なるほど、後を追ったのか?」


もしそうなら、2人で見逃した事になる。


「いえ、ドルイドさんを誤魔化せるとは思わなかったので、団長に助言を求めようと一度詰所に帰りました。団長に会いに行ったらギルマスもいて、そこでドルイドさんと連れの女性の事を話しました。そうしたら、たまたま2人もアイビーさんの事を話していたらしく、俺にも話をしてくれたんです」


なるほど。

だから私の事を名前も含めて知っていたのか。


「そうか。あまり他言してほしくない事なんだけど」


ドルイドさんが少し険しい表情をしている。

まぁ、確かに極秘内容だもんね。


「あの、それには事情が。団長の娘さんが犯罪組織に誘拐されて、安否不明なんです」


「「えっ?」」


「だから、犯罪組織を潰してくれたアイビーさんにどうしてもお礼がしたいと」


「団長さんの娘さんは?」


「今も不明です。きっと既に死んでいるだろうと団長が言っていました」


知れば知るほどあの組織を潰してよかったと、心から思う。


「それで、ドルイドさんとアイビーさんに一度会いたいが、2人を呼び出すと目立つだろうから俺が間に入った方がいいかもしれないと言う事になって。俺だと魔力でどこにいるか把握できますし、恩もあるので」


目立たないように配慮してくれたのか。

それは感謝しないとな。


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― 新着の感想 ―
ほんとクソな組織だな
[一言] この小説は『お礼を言うシーン』がめちゃくちゃ多いなあ☀️
[一言] 団長さんの娘さんに奇跡が起こると良いですね。 団長さん達にあう前にシエル戻ってないけれど、どうしよう。
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