314話 ハタタ村の用事?
「ソラ、シエル、落ちないように気を付けてよ!」
森の中をサーペントさんに乗って大移動。
朝起きて朝食を食べてハタタ村へ行こうとすると、またサーペントさんに咥えられて背中に乗せられた。
ドルイドさんも、私と違うサーペントさんの上に咥えられて乗せられていた。
「凄い圧巻」
ほぼ2列か3列に並んだサーペントさんの大行列。
乗せてくれたサーペントさん2匹だけでいくのかと思ったら、彼らを先頭に後に続いたサーペントさんたち。
後ろを見るとずっと続くサーペントさんの道。
ちなみに普通の大きさのヘビたちも結構な数がいたが、その子たちと黒の球体たちはお留守番だった。
「なんだか、かっこいいですよね」
「確かにな」
ドルイドさんも後ろを向いて大行列を見ている。
ときどき、その中をピョンピョンと飛び跳ねているソラとシエルが見える。
2匹は、サーペントさんたちの背中で飛び跳ねて、遊んでいるようだ。
いつか落ちてしまうのではないかとドキドキするが、止めても止まらなかった。
相当楽しいようだ。
「あれは心臓に悪いです」
「大丈夫と信じるしかないな。サーペントたちが何かあったら助けてくれそうだし」
確かに、ここにいるサーペントさんたちは皆優しい。
私がこけそうになった時はスッと体を下に入れて助けてくれるし。
フレムが寝始めたら、優しく私の元へ運んでくれた。
「どうして、こんなに優しいのでしょうね?」
「本の情報だと、『サーペントのサイズになった大きなヘビの多くは凶暴である』と書かれているが」
そうなの?
凶暴?
乗せてくれているサーペントさんをそっと覗き見る。
私の視線に気が付いたのか、こちらを見て口から舌をちろちろ見せる。
「それって見た目だけで判断したんじゃないですか?」
確かにこの大きさのサーペントさんが、口を開けると迫力がある。
その迫力ある口から、真っ赤な舌がちろちろ動いているのを見ると、見様によっては怖いかもしれない。
私から言えば、舌がちょろちょろ動いて可愛いなとなるが。
昨日ドルイドさんに注意を受けた。
どうも私の可愛いの範囲は広すぎるらしい。
普通の人は怖がるものも、私は可愛いと言っていると。
他の人たちと感覚が少しずれている気はしたが、かなり違うらしい。
他の人がいる時は、言葉に気を付けた方がいいだろうと言われた。
どれくらいずれているのか自分では分からない為、気を付けようがないのだが……。
「暖かいですね」
今日は森の中にも春のような風が吹いている。
サーペントさんの速い速度で移動をしても、寒さはほぼ感じない。
「あぁ、春だな」
春の花が一斉に咲きだす森の中は、これからかなり賑やかになる。
そして夏に向けてあちこちで実がなると、甘い果実が取り放題の楽しい季節だ。
「それにしてもハタタ村まで楽な旅だね」
「あぁ、予定外にな。それに、予定より遅れて出発したのを取り戻せそうだしな」
雪は積もらなかったが、なかなか暖かくならずハタウ村からの出発が遅れていたのでサーペントさんにハタタ村まで送ってもらえるのは嬉しい。
昨日確認したところ、今日中にはハタタ村に着くらしい。
少し急いで移動したとしても、9日から10日を予定していたのでかなりの短縮になった。
というか、どれだけ速いのかと思えば地図を確認したところハタウ村からハタタ村へは大きく迂回する必要があったらしい。
今、私たちがいるサーペントさんたちの森があるために。
そこをまっすぐ突き進んでいるため、ものすごく早くハタタ村へ到着できるのだ。
「そう言えば、ドルイドさん」
「なんだ?」
「ハタタ村へ行く必要はあるのですか?」
「えっ?」
ハタタ村をまずは目標にしていたため、当たり前のように向かっている。
だが、ハタタ村に行く用事を思い出して疑問を感じた。
「ハタタ村へ行くのってソルの食事のためですよね?」
森の中に違法な捨て場があれば、ソルの食事を確保できるが、なかった場合はハタタ村での補給が必要となる。
なんせ通常は最短で9日掛かるのだから。
それがハタウ村を出た翌日にハタタ村に着く。
ソルの食事はまだバッグの中に確保できている。
「そう言えば、ハタタ村にはソルの食事のために寄るんだったな」
「うん」
ハタタ村から次のハタダ村へは確か5日もあれば着くらしい。
こんな近くに2つの村があることが不思議だ。
なのでハタタ村へは行かず、ハタダ村へ行っても良いような気がする。
「行く必要があると思い込んでいたみたいだな」
ドルイドさんが、少し情けない表情をした。
私が乗っているサーペントさんが首を持ち上げて私たちがいる背中に振り向いた。
いまいる場所は森の木々が生い茂っている場所なので、前を向いてほしい。
「どうしようかな?」
「他に用事がないなら、ハタダ村へ行く?」
その方が早くハタヒ村に着けるよね。
はやく着けば、宿にも余裕があるだろうし。
まぁ、宿に早く着いたらその分費用は掛かるけど。
「いや、ハタタ村とハタダ村をアイビーに見てもらいたい。ちょっと面白いから」
面白い?
「なんですか?」
「見てのお楽しみ。サーペント、悪いがこのままハタタ村へ行ってもらえるか?」
ドルイドさんの言葉に、サーペントさんが頷くと前を向く。
そして、進む速度をぐっとあげた。
「え~、まだ速くなるの?」
サーペントさんが守ってくれているので、落ちないし風の影響も受けない。
なので安定して座っていられるので、かなり楽しい。
隣を見ると、ドルイドさんも楽しそうにしている。
「あっ、ソラとシエル!」
弾き飛ばされていないかと心配で後ろを見ると、サーペントさんの口に咥えられている2匹がいた。
何があって咥えられているのかは分からないが、無事だ。
「それにしても、食べられているみたい」
私の声が聞こえたのか、ドルイドさんが私の視線を追う。
そして驚いた声を出した。
「なんだ、あれ?」
「さぁ? この速度だから心配になってみたら、あぁなっていました」
しばらく様子を見てみるが、ソラもシエルも口の中にいるのに寛いでいる。
ソラたちを口の中に入れているサーペントさんも特に気にしている様子はない。
「大丈夫そうだね」
「口を開けたままのあのサーペントは気になるが、平気そうだな」
私もそれは気になっていた。
この速度の中、口を開けたままの状態はかなり苦しくなりそうなのだが、見ている限り平気そうだ。
ふ~っとため息をついて前へ向く。
先ほどから少しずつ見える森の木々が変化している。
そろそろサーペントさんたちが、ずっと守ってきた森を抜けるようだ。
「サーペントさん、そろそろあなたたちの森を抜けるみたいだから速度を落としてくれる?」
サーペントさんが前を向いたまま一度頷くと、ゆっくりゆっくり速度が落ちていく。
それからしばらくして、村道が見える森に来た。
「あれ? ドルイドさん、あれ捨て場かな?」
私が指差す方向をドルイドさんが見る。
「サーペント、捨て場みたいだから止まってくれ」
ドルイドさんが乗っているサーペントさんが捨て場に向かう。
私の乗っているサーペントさんも、それに続いて捨て場に向かって移動をしてくれた。
捨て場に着くとサーペントさんが降ろしてくれた。
「ありがとう。ソル、ご飯あるよ」
今日は朝からずっとバッグの中で寝ているソルとフレム。
バッグの中を確認するとまだ寝ていた。
「ソル、起きて! 食事にしようよ」
「ぺふっ?」
もぞもぞと動いて私を見るソル。
どうやらまだ寝ぼけているようだ。
「おはよう~」
「ぺふ~……」
寝ないで!
更新が遅くなりごめんなさい。
言葉が全然出てこなかったです。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。