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308話 春にむかって

「よし、帰るか~」


ドルイドさんの言葉に、背伸びをして固まった筋肉を伸ばす。

腰のあたりが気持ちいい~。


「緑色と紫色のポーションは予定の数は集まったから、安心だな」


「うん、よかった。ソラたちのご飯用ポーションも結構集まったよ」


旅をするならまだ足りないけど、この村を離れるまで日にちがあるから大丈夫だろう。


「ん? ソラとフレムも旅の準備かな、あれ」


2匹に視線を向けると、青のポーションと赤のポーションが3本ずつ作られていた。


「そうなのかな?」


ソラとフレムは、作ったポーションの隣でピョンピョンと飛び跳ねている。

私たちが近づくと、それぞれのポーションの隣で自慢げにこちらを見た。

可愛いな。


「ふふふ、ありがとう。これで旅も安心して行けるね」


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


私もこの2匹の作るポーションに慣れたな。

冬がくる前は、ポーションの値段を考えてびくびくしていたけど今はもう大丈夫。

何かあった時に必要な存在として考えられるようになった。

もちろん誰の目にも見られないようにしないと駄目なのは、分かっているけれど。

備える事がとても大切なのだと、この冬を経験して身に染みた。

体調が少しでも良くない時は、赤のポーションをスプーン1杯。

雪に足を取られて怪我をした時は、青のポーションをスプーン1杯。

随分とお世話になりました。

あんなに雪道が歩きにくいとは思わなかった。


「さて、タブロー団長の所へ行くか」


「そうだね」


ソラとフレムのポーションをマジックバッグへ入れて、皆と村へ戻る。

フレムとソルは、疲れたようでバッグの中でお昼寝中。

ソラとシエルは、久々にどちらが高く跳べるか競っている。


「シエルの方が雪の上だと有利みたいだな」


雪の上での勝負は、シエルの方が安定しているようだ。

ソラはかなり悔しそうにしている。


「ですね」


バキッ。

ソラが勢いよく枝にぶつかったのか、木の折れる音がした。


「「あっ」」


「ぷっ!」


ドサドサドサ~。

目の前でソラが木から落ちてきた大量の雪に埋まる。


「ソラッ!」


シエルは雪を跳ね飛ばす力を持っているが、ソラにはない。

急いでソラを雪から助け出そうとすると、アダンダラに戻ったシエルが雪の中に突進していく。

しばらくすると、ぷはっと顔を出したシエルの口にソラが咥えられていた。


「よかった~」


魔物は寒さに強いとは聞いていたが、ソラの無事な姿にホッとする。


「雪が積もっている間は、飛び跳ねて競うの禁止ね」


「ぷ~」


「にゃ~」


私の言葉に不満な2匹。


「心配だから、お願い」


「……ぷっぷぷ~」


「にゃうん」


良かった、理解してくれた。

それにしても、ソラは雪に埋もれ過ぎだ。

その度にドキドキしてしまう。

村に向かって歩いていると、人の気配を感じた。


「ソラ、シエル、人がこちらに来ているからバッグに入って」


胸元に飛び込んでくるソラを抱き留めてバッグに入れる。

シエルはスライムになると、足元まで近づいてくれたので抱き上げてバッグに入れた。


「なんだか大人数だな」


「そうだね」


こちらに近づく人数の多さにちょっと身構えてしまう。

たぶん大丈夫だと思うのだけど。

近づく人たちの姿が見えると、先頭にピス副団長の姿があった。


「ピス副団長?」


ドルイドさんが声をかけると、嬉しそうな笑顔が返ってきた。


「ドルイドさん、アイビーさん、こんにちは」


「こんにちは」


立ち止まって頭を軽く下げる。

ピス副団長さんの後ろにいる人たちを見るが、知っている人はいないようだ。

というか、若い人たちが多いな。


「何かあったのですか?」


ドルイドさんの質問に、笑って首を横に振るピス副団長さん。


「大丈夫です。心配するような事はありません。彼らは自警団の見習いです」


見習いさんだから若い人が多いのか。


「これから見回りを始める事になるので、危ない場所や魔物の住処など実際に目で見て確かめた方がいいところを案内していくんですよ」


副団長さんも大変なんだな。


「頑張ってくださいね」


「ありがとうございます。仕事としては案内だけなので簡単なんですが、めんどくさいです」


「それは言ったら駄目だろう」


ピス副団長さんの言葉にドルイドさんが苦笑を浮かべる。

確かにめんどくさいは駄目だな。

ピス副団長さんの後ろにいる見習いの人たちも苦笑いをしている。


「ハハッ、ドルイドさんたちは村に戻るのですか?」


「えぇ、今日の用事は終わったので」


「そうですか。では俺たちは行ってきます」


「行ってらっしゃい、気を付けて」


ピス副団長さんと別れて村へ戻ると、門番さんたちが笑顔で出迎えてくれた。

挨拶を返して自警団詰所に向かって歩いていると、屋台がお店を開けていた。


「ドルイドさん、スープの屋台です」


「本当だ。雪が落ち着いたから店を開けたようだな」


毎日大量に降る雪でお店は開けられず、冬の時期は見られなかった屋台。

それが、大通りにお店を開けている。

なんだか、春の訪れを感じてワクワクしてくる。

今ならあの凄いスープも……いや、あれはいいや。

うん、あれはない。


「どうした?」


「前に飲んだスープを思い出して」


「……あぁ」


ドルイドさんも思い出したのか、眉間に深い皺が。

2人で頑張って飲んだよね。


「遠慮しておくよ」


「いえ、飲みたいわけではないですよ」


「それは良かった」


ホッとした表情を見せるドルイドさんに、笑ってしまう。

さすがに私もあれは無理。

開いている屋台を見ながら自警団詰所に向かう。

詰所に入ると近くにいた団員の人に、タブロー団長さんに取り次ぎをお願いする。

しばらくすると、タブロー団長さんが出てきてしまったのでまた注目を浴びてしまった。


「こんにちは」


「すみません、わざわざ来ていただいて」


「大丈夫です」


タブロー団長さんの執務室に向かいながら団員たちの様子を見る。

前に来た時は張りつめた雰囲気を感じたが、今日はちょっと違うようだ。


「春が近づいて来て、皆ホッとしているのですよ。今年の冬は大変だったので」


私が気にしている事に気付いたタブロー団長さんが教えてくれた。


「そうなんですか。今日は皆、どことなくふわっとした雰囲気になっていたから気になって」


言い表すのが難しいが、どこか皆浮かれている感じだ。


「雪が多かったため緊急要請が入ったりして大変だったので。それが落ち着いたので、ちょっと気が緩んでいるのですよ」


なるほど。

ようやくゆっくり出来るようになったのか。

この冬は本当に大変そうだったもんね。


「今日は魔石の数と代金を確かめてもらいたくて来ていただきました。書類を確かめて間違いがないか確認お願いします」


タブロー団長さんの執務室に入るとソファをすすめられ、紙を渡される。

ドルイドさんと2人で確かめると、そこには提供した魔石のレベルと、数、最後に合計金額が書かれてあった。


「提供した数って953個だったんですね」


フレムはこんなに、魔石を復活させたのか。

凄いな。


「えっ、知らなかったのですか?」


「途中で分からなくなってしまって」


私の言葉に頷くドルイドさん。


「そうだったのですか。なんだか意外です」


「そうですか?」


「えぇ、お二人ともしっかりしているので」


ドルイドさんと顔を見合わせる。

しっかりしている?


「俺たちは、けっこう抜けてるぞ」


ドルイドさんの言葉に頷く。

確かに、2人して重要な事を忘れたりするもんね。

魔法陣の影響ではなく素で。


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― 新着の感想 ―
あくまで拾うんだ。 必要なら購入でもいいと思うんだけどな?
[気になる点] 心配だからで2匹がやりたいこと、楽しんでることを制限するのは、どうなんだろう。 命に関わることなら分かるけど。 過保護すぎるのも窮屈で嫌ですね、、
[気になる点] 初めてソルのご飯が魔力らしいと気が付いた時からずっと思っていたのですが、ソルのご飯、フレムが作った魔石で賄えないのでしょうか? 廃棄物に残る微かな魔力でないと吸収出来ないのでしょうか…
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