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301話 何も聞いてません!

門番さんの心配そうな顔に申し訳ない気持ちが湧くが、捨て場に向かって雪を融かしていく。

タブロー団長さんがアイテムを貸してくれたので、思ったより捨て場に早く行けそうだけどやはり時間がかかる。

シエルとソラは楽しそうに雪に埋もれて……いや、ソラはシエルに救出されていた。

フレムは当然ながらバッグの中でお休み中。

ソルは軽いため、雪の上を転がっている。

飛び跳ねると雪に埋もれる事に気付いたようで、コロコロと転がっていたがしばらくするとふらふらになっていた。

どうやら思ったより目が回ったようで、そのままソラが作った穴に落ちていった。

そしてソルも、シエルに救出されていた。

最終的に、シエルの首元にソラとソルがくっついている。


「それにしてもシエルって凄いジャンプ力だな」


ドルイドさんの言葉にタブロー団長さんたちが頷く。

雪にずぼっと埋もれるのに、しばらくすると雪の中から飛び出してくる。

しかも何か魔法でも使用しているのか、毛が濡れていない。

本でアダンダラの事を学んだ時、魔法は使用できるとだけ書かれてあってどんな魔法を使用するのかは分からなかった。


「ドルイドさん。アダンダラってどんな魔法を使えるの?」


「いや、俺も詳しくないな。タブロー団長たちは何か知っていますか?」


「俺たちも本で学んだことぐらいしか知識がないです。だから、どの魔法が得意かなどは全く知りませんね」


そっか、残念。


「シエル、寒くない?」


雪に埋もれてしまっているシエルの体調が気になる。

が、返事がない。

これは寒くないって事かな?


「大丈夫?」


「にゃうん」


雪に埋もれているため、声がちょっとくぐもって聞こえるが大丈夫の様だ。

アイテムで融かすとはいえ、雪の量は多い。

さすがに時間が経つと体が冷えてくるな。


「うわっ。ソラ?」


ドルイドさんの叫び声に視線を向けると、ソラがドルイドさんの持っている剣の持ち手を咥えてぶら下がっていた。

いつの間にかシエルから離れていたようだ。


「ソラ?」


声をかけるが、剣から口を離そうとしない。

どうしたのだろう?

いつも邪魔な事なんてしないのに。


「ソラ? おいっ! 駄目だ、離さない」


ドルイドさんが持っていた雪を融かすアイテムを、ピス副団長さんが受け取って作業の続きを始めた。

これまでの事を考えると、ソラが邪魔をすることは考えづらい。

となると、別の理由でドルイドさんの作業を止めさせたということになる。


「ドルイドさん、体調悪い?」


「いや、問題ないぞ」


では、何だろう。

ソラが咥えている剣を見る。


「ソラ、剣に用事があるの?」


私の言葉に、ぴょんと剣からドルイドさんの頭に飛び移る。


「ぷっぷぷ~」


「剣?」


タブロー団長さんも、ピス副団長さんも作業の手を止めてこちらを見る。

ドルイドさんが、下げていた剣を持って目の前の高さまで持ち上げる。


「これが何なんだ?」


ドルイドさんの言葉に全員が首を傾げる。

普通とは少し違うが魔石が嵌った剣だ。

今必要だとは感じない。


「これをどうするの?」


私の言葉にソラはピョンとドルイドさんの頭から剣に飛び移る。


「危ないぞ」


ドルイドさんの言葉には、反応を見せずソラは嵌っている魔石の部分の上に乗る。

すると魔石がふわっと赤く光る。


「なんだこれ」


「攻撃する時に魔石を解放するとこうなりますね。まぁ、ここまで綺麗な光り方はしませんが」


「ぷっぷぷ~」


タブロー団長さんの言葉に鳴きながら魔石の上で飛び跳ねる。


「攻撃? ……ここで攻撃するとしたら、雪?」


確かに今目の前には大量の雪があり融かすために格闘しているけれど、さすがにそれは無いだろう。


「ぷっぷぷ~」


私の言葉に返事が返ってきた。

まさかの、正解だったらしい。

剣ってそんな使い方が出来るのかと、ちょっとわくわくしてくる。


「ドルイドさん、雪に向かって攻撃、攻撃!」


楽しみな私の声に、ドルイドさんがちょっと慌てて剣を鞘から出す。

ソラはピョンとドルイドさんの頭の上に戻る。


「えっ? あぁ、というか普通にどうするんだ?」


「雪に向かって振り下ろしてみたらどうですか?」


それぐらいしか思いつかないけどな。

そもそも魔法を使用した攻撃方法なんて知らない。

魔石は赤く光っているみたいだから、火の魔法?

火の攻撃だと……知らないな。


「ぷっぷぷ~」


「ソラも応援してくれるみたい」


「あぁ」


困惑した表情でドルイドさんが剣を雪の上に振り下ろす。

振り下ろすと赤く光っていた魔石から光が消えた。

全員で剣先にある雪を見るが…………特に何も起こらない。


「何も起こりませんね」


「だな。あれ? また赤く光りだした」


ドルイドさんが、眉間にしわを寄せる。


「あっ! 雪、融けてますよ!」


ピス副団長さんの声に視線を雪に戻すと、マジックアイテムで融かす数倍の規模で雪が融けていた。


「うわ~、凄いね。ドルイドさん」


剣先が向かった方向へ雪が勢いよく融けていく。


「これで、捨て場に早く着けますね」


「ハハハッ、そうだな」


引きつった笑みを見せるドルイドさん。

それを不思議に思うも、目の前の結果にちょっと興奮してしまう。

魔石を付けた剣が、こんな使い方で活躍するなんて。

凄いな。

攻撃が強くなるだけかと思っていた。

もっと、色々出来たりするのかな?


「ドルイドさん、1回だけ使わせてください」


雪が無くなったので歩き出そうとすると、タブロー団長さんがドルイドさんに懇願した。

その目はひたすらに剣を見ている。

なんだか、子供みたいな表情だな。


「別にいいが、アイビーもいいか?」


なぜ、私に訊いたのかは不明だけど問題はないので頷く。

タブロー団長さんが嬉しそうに剣を手にすると、まだ雪が融けていない場所まで行って剣を大きく振り切った。

先ほどと同じように、目の前に有った雪がスーッと融けていく。

遠くから見ると、雪が消えているように見えて面白い。

次はピス副団長さんが挑戦するようだ。


「楽しそうだね」


「あぁ」


それぞれ1回ずつ挑戦を終えると、少し残念そうな表情をしている。


「このままお願いしますか?」


「それ良いな。お2人でどうぞ」


ドルイドさんの言葉にタブロー団長さんとピス副団長さんが嬉しそうに雪に向かっていくのが見えた。

少しすると、声が聞こえてくる。


「日頃の鬱憤発散(うっぷんはっさん)に良いみたいだな」


「そうだね」


聞こえてきた内容に、ドルイドさんと苦笑する。

最初は色んな名前が飛び出したが、しばらくするとある1人の人物に絞られたようだ。

それは、商業ギルドの元ギルマスさん。


「随分と卑劣な人物だったみたいだな」


「そうですね」


良い発散になると良いな。


「着いた~」


当初の予定よりかなり早く捨て場に到着。

魔石の力は凄い。


「ありがとうございます。なんだかスッキリしました」


タブロー団長さんが剣をドルイドさんに渡す。

確かにかなり発散出来たようで、タブロー団長さんもピス副団長さんも表情が良い。

上に立つ人って、口に出せない事も色々あるんだろうな。

とりあえず、さっき聞いた事は全て忘れよう。


「さて、捨て場の上の雪はマジックアイテムの方で良いな」


「あぁ」


タブロー団長さんとピス副団長さんがそれぞれ距離を開けて捨て場に積もった雪の上にアイテムを置く。

しばらくすると雪がゆっくりと融けていく。

下にあるゴミが顔を出すと、ソルが嬉しそうに見えてきたゴミの上に飛び乗った。

やはりお腹が空いていたようだ。

頑張って来てよかった。


「「おぉ~」」


タブロー団長さんとピス副団長さんが、空中に浮かぶ黒い魔力に興奮した声を出す。

その声を気にすることなく、凄い速さで食事をしていくソル。


「もう少し早く来てあげた方が良かったですね」


「仕方ないよ。次からは気を付けよう?」


「うん」


やはり早急に魔力を溜める何かが欲しいな。


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― 新着の感想 ―
団長たちに剣作ってあげて除雪させればいいかなって思ったけど、ソラとフレムを隠したままじゃ難しいか
[一言] 271話 昔もあった に、年齢の話がありました ローズさんは50年前の雨の年は11歳と言っていたから61歳かな?  ちなみに旦那さんは当時6歳だったから姉さん女房なんだなぁ~と思いました …
[気になる点] 雪でみんな外に出ることが出来ないのにどうしてゴミ捨て場のゴミは増えるのでしょうか?
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