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293話 国の管理

「魔力を食べるスライム?」


「はい」


ローズさんは目の前にいる小さい黒のスライム、ソルをじっと見つめる。


「……テイムの印が無いようだけど?」


「ソルが嫌がったのでテイムはしていないですよ」


「……テイムしていないのに、人を襲わないのかい? それに名前を付けさせたのかい?」


えっ?

ソルが人を襲う?

それに名前は付けたけど……?


「あっ、そうだ。スライムは魔物でしたね」


ローズさんの言葉に、私もスライムが魔物だったと思い出す。

しかも人を襲う魔物だ。

そんな事は、ソラと出会ってからすっかり忘れていた。


「えっと。スライムですが、ソルは知能がある程度高いので大丈夫です。名前も付けて良いとソルが言ってくれたので」


知能が低い魔物は人と遭遇すると、襲う習性がある。

スライムも普通は知能が低く、森の中で人と出会うとすぐに攻撃を仕掛けてくる。

ただ、スライムはとても弱いので、少しでも魔法が使えれば倒すことが出来る魔物でもある。

私は魔法が使えないので、旅を始めたころは見かけたらすぐに逃げるようにしていた。

そう言えば、ソラをテイムしたあたりからスライムと遭遇しなくなったな。

なんでだろう?


「なるほど。ソルという名前は綺麗な響きだね」


「ぺふっ」


ローズさんの言葉に、嬉しそうに鳴いてプルプルと震えるソル。


「…………アイビーの仲間は特徴のある鳴き方をする子が多いね」


それは言わないでほしいです。

別に集めているわけではないので。


「ぺふっ! ぺふっ!」


「ん? 怒ったのかい? 悪かったよ、別に可笑しくはないよ。可愛い鳴き方さ」


「ぺふ~」


「アハハハ。確かにかなり知能は高いね。まぁ、アイビーの仲間は、みんな知能が高い魔物ばかりだから、1匹増えたところで違和感はないね」


確かにソラともフレムとも、普通に会話が出来る。

そう言えば、ドルイドさんと出会った頃はその事に驚いていたっけ。

……そうか、会話が出来るのは珍しいのか。

当たり前のように毎日普通に会話していたから、いつの間にかこれが当たり前になっていたな。

消化する物がレアだけでなく、会話も珍しいのか。

忘れないようにしっかり覚えておかないとな。


「それにしても魔力を食べるのも珍しいけど、この色も珍しいね。よく見ると、真っ黒というわけではないんだね。これは半透明なのかい?」


確かに、ソルはパッと見た印象で真っ黒に見えるが、よく見ると半透明なのだ。

ソラたち同様、体が透けている。


「それに、随分と小さいね。これから大きくなるのかい?」


「いえ、この大きさで大人みたいです」


「そう。こんな小さいスライムがいるんだね~。誰にも見られないように気を付けないとね」


「はい」


しみじみ言われてしまった。


「探しているのは、魔力を集める事が出来て、その魔力を自由に出すことが出来るアイテムだったね?」


「はい。ありますか?」


ドルイドさんの質問に難しい表情をするローズさん。


「あったとしてもそれは売れないね。国の管理になるアイテムだ」


国の管理?


「魔力を溜めるのはとても危険な行為なんだよ。集まった魔力は暴走する事があるからね」


「あ~、やはりそうでしたか」


ドルイドさんは予想していたみたい。


「魔力って集まると暴走するのですか?」


「魔力同士がぶつかって不安定になることがあってね。過去には暴走した魔力が原因で村が消滅したとも記録されているからね。だから魔力を集めるアイテムは厳重に管理されている。封印されているとも言うけどね」


アイテムに頼るのは無理そうだな。

他の方法を探すしかないか。


「しかし、厄介だね。魔力か」


ローズさんも一緒に悩んでくれるが、やはり答えは出なかった。

これは頑張って捨て場に通うしかないな。

今日の分の魔石を渡して、お礼を言ってから宿へ戻る。


「雪で森へ行けなくなるまで、捨て場に通うしかないな」


「うん。頑張ります」


「行けなくなった時の事を、宿に戻ってからソルと相談しようか」


「しておいた方がいいですよね。少し我慢させてしまうかもしれないし」


準備できなかったら、森で生活するって言いだしたりしないかな?

ソル本人が希望するなら叶えたいけど、すごく心配だな。

でも、ご飯を用意できなかったら仕方ない。


「あっ、いた! ドルイドさん、アイビーさん」


宿の前で名前を呼ばれたので、見るとプリアギルマスさんが手を振ってこちらに駆けて来た。


「「こんにちは」」


「こんにちは。すみません、少し話がしたくて」


プリアギルマスさんの言葉に首を傾げる。

ギルドのトップなのだから、連絡をしてくれれば出向くのに。

わざわざどうして来たのだろう?

もしかしたら宿にいない可能性もあるのに。


「ギルドに向かいましょうか?」


「いえ、えっとですね。明日、森へ行く用事がありますか?」


明日?

ソルのご飯の事があるので行くけれど何だろう?


「ありますが、なぜでしょうか?」


ドルイドさんも困惑気味だ。


「一緒に行っては駄目でしょうか? その際に、シエル殿を少しお借りしたいのですが」


……シエル殿?

いつの間にそんな呼び方になったんだろう。


「あ~、部屋で話しましょうか?」


ドルイドさんの提案に賛成だと頷く。


「いいのですか? お邪魔してしまって」


って、なぜか凄い笑顔で聞かれてしまった。


「えぇ。アイビーもいいよな?」


「うん。ゆっくり話した方がいいと思うし」


シエルを殿呼びした理由も知りたいし、それに何か理由があって一緒に森へ行きたいのだろうし。

ここで立ち話をして決められることではないだろう。


「ありがとうございます」


プリアギルマスさんの態度に首を傾げる。

なんだろう。

なんだか吹っ切れたような顔をして、これまでと違う態度を見せている。

何があったんだろう?

不思議に思いながらもプリアギルマスさんと一緒に宿に入る。

ドラさんが驚いた表情で出迎えてくれた。


「団長の次はギルマスか?」


そう言えば、タブロー団長さんも来たっけ。

ドラさんの質問にドルイドさんが苦笑いした。


「すみません。2人と話があってお邪魔しました」


プリアギルマスさんがドラさんに頭を下げる。


「いや、それは良いが。あ~ギルマス、夕飯でも食っていくか?」


「そうしたいですが、仕事があるので」


やはり忙しい時間の間に来たのか。


「そうか」


サリファさんが作ったお菓子を少しいただいてから部屋に戻る。

部屋に入ると、嬉しそうに部屋を見渡すプリアギルマスさん。

なんだか、ワクワクしている雰囲気が伝わって来るけど、なんで?


「お茶を入れますね。座っててください」


「ありがとうございます」


ソラたちの事は既に知っているので、ソラたちをバッグから出す。

最後にソルを出して、よだれで汚れたタオルを汚れ物を入れているカゴに入れる。


「あれ? その子」


「「あっ!」」


やってしまった。

ソルをまだ話していなかった。


「えっと、新しい仲間です。ソルというんですよ」


「黒いですね。それに小さい、子供のスライムですか?」


「いえ、大人です」


「………………そうですか」


じっとソルを見つめるプリアギルマスさん。

少し不安になるが、お茶を用意して机に置く。


「ありがとう。えっと気になったのだが、テイムの印が無いようだけど」


「えっと、話し合いの結果、テイムはしていないです」


「……話し合いの結果……そうか、さすがアイビーさんですね」


あれ?

なんでそんな目がキラキラしているんだろう。

初めての対応にドルイドさんを見る。

彼はプリアギルマスさんの反応を見て、笑い出した。

なんで?


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― 新着の感想 ―
スライムと話し合いはアイビーくらいなんだろうね。
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