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290話 初めてのファックス

「で、出来た~」


3枚に渡って書いた手紙。

あて先はラトメ村のオグト隊長さん。

ヴェリヴェラ副隊長さんには、伝言をお願いすると言う形にした。

ファックスを使用する場合、代表者に書いて他の人にはその人経由で伝言をお願いするのが普通らしい。


「可笑しくないかな? ちょっとごちゃごちゃ書きすぎたかな?」


白紙の紙を前にして、何を書けばいいのか悩みに悩みまくった。

そして書きだしたら、書きたいことがいっぱいあり過ぎて混乱してしまった。

ドルイドさんに相談しながらだから書けたけど、1人だったらまだ書きたいことが纏まらなかったと思う。


「書けた?」


「うん。何とか書けた」


オグト隊長にはテイマーでスライムをテイムした事を軽く紹介した。

詳しく書けないのが残念だけど、次に会った時は皆をちゃんと紹介したい。


「オグト隊長さんに挨拶を書いても良いかな?」


ドルイドさんが?

特に問題はないからいいよね?

でも、顔見知りでもないのに。


「今の保護者として、お礼が言いたいからね」


うわっ、嬉しい。


「ありがとう」


「どういたしまして。はい、紙。次はオトルワ町の人たちだったかな? 紙は2枚で足りそうか?」


「うん。たぶん2枚で足りると思う」


手紙を書く前が『元気ですか?』ぐらいの内容を考えていたので、それぞれ1枚ずつぐらいだろうと考えていた。

でも実際に書きだすと、一緒に旅をしている仲間の事やあちこちで出会った人たちの事などを紹介したくて、気が付くと最初に貰った紙では足りなくなっていた。

ファックス使用1回に付き、紙は5枚まではただで使える。

5枚目以降は追加料金が請求されるので、皆5枚目までにするらしい。


「頑張れ」


ん~誰に書こうかな?


「やっぱりラットルアさんかな? 彼には本当に色々心配かけちゃったもんね」


そうしよう。

まずは挨拶と今いる場所の説明。

次は、奴隷の事を心配していたからその事と。

一緒に旅をしているドルイドさんの事を少し詳しく紹介しようかな。

ん~、そうだ身長が少し伸びた事を書こう。

成長が遅いって本気で心配されていたもんね。

元気なのに調べた方がいいと病院に連れて行かれそうになった事もあったな。

あっ、髪が伸びた事も書こうかな。

色々考えながら書いていくと、2枚目に突入していた。


「よし、終わり」


最初に書いた手紙もそうだけど、書きだすと伝えたいことがいっぱいあるモノだな。


「よし、そっちにも挨拶を書かせてくれ」


「うん」


ドルイドさんが最後に挨拶を書き込んでくれて終わり。

最終的に紙を3枚も使用してしまった。

でも、本当はまだまだ書きたいことがあったのだけど、長くなると迷惑になるから頑張ってまとめた。


「すみません。『ふぁっくす』を送りたいのでお願いします」


「はい、宛先をどうぞ」


「アイビー」


「えっと、この3枚をラトメ村のオグト隊長さんにお願いします。こっちの3枚をオトルワ町の炎の剣 ラットルアさんにお願いします」


「えっ、オグト隊長ですか?」


あれ?

どうしてそんな驚いた表情をするのだろう?


「えぇ、そうです。何か問題でもありましたか?」


ドルイドさんが不思議そうに聞く。


「いえ、ちょっと憧れの冒険者の名前が出たので驚いてしまって」


そう言えば、オグト隊長さんは有名な冒険者だったな。


「失礼しました。えっと、こちらが炎の剣のラットルア殿ですね。ギルドカードの提示をお願いします」


「はい」


ドルイドさんがギルドカードを渡す。

四角いアイテムの上に置くとその部分が少し光った。

男性はギルドカードを手に取るとドルイドさんに返す。

次に3枚の紙を四角のアイテムから出ている板の上に乗せる。


「2ヶ所ですので1000ダルとなります」


ドルイドさんがお金を出そうとするが、隣から1000ダルを渡す。

私が送るのだから私が払うべきです。

なんで残念そうな顔をしているのですか。


「はい、手続きは完了いたしました。すぐに実行されます」


男性の声と共に、アイテムから音がして板に置かれた紙が1枚ずつ四角いアイテムに飲み込まれていく。

少しの時間で3枚ともアイテムに飲み込まれてしまい1ヶ所目は終了。

2ヶ所目も同じ要領でファックスの送信は終わった。


「では、これは持ち帰りますか?」


男性が持っているのは、私が手紙を書いた6枚の紙。

持っているのは恥ずかしいけど、手元に置いておきたい。


「持ち帰ります。お世話になりました、ありがとうございます」


「いえ、またのご利用をお待ちしております」


なんだかものすごく暖かい目で見られながら手紙6枚を渡される。

それを不思議に思いながら受け取ると、軽く頭を下げてドルイドさんとその場を離れる。


「アイビー、もしかして無意識だったのかな?」


「何がですか?」


「あ~……手紙を書いている途中ぐらいから、内容を口にしながら書いていたんだよ」


「…………えっ! うそ!」


いやいや、嘘だよね?

ドルイドさんを見ると、何とも言えない申し訳なさそうな表情。


「ごめん、書きやすいから口に出しているのかと思ったから止めなかった」


うわ~、恥ずかしい。

あっ、だからさっきの男性があんな視線だったのか。


「次からは止めてください」


なんだか泣きそう。

変な事書いてないよね?

注目されるような事も書かなかったよね?

ソラたちが何をしたかは書かない方がいいとドルイドさんに注意されていたから、名前だけでこんな遊びをしていたよって感じだけで問題はないと思うし。


「気にする事はないと思うぞ。問題になりそうな事は口に出していなかったから」


「それは良かった」


手紙の返事をもらいたいけど、もう一度あの男性に会うと思うのはかなり恥ずかしい。

熱くなっている頬を押さえる。

過ぎてしまった事は仕方ない、気持ちを切り替えよう。


「あっ、ドルイドさん。ゴトスさんから返事があったんですよね? 皆元気でしたか?」


手紙を書く前に返事を受け取っていた。

何が書いてあったんだろう。


「無茶苦茶怒ってた」


怒ってた?


「手紙が遅いって、ゴトスだけじゃなくて師匠や家族も。かなり心配させてしまったみたいだ」


「村に着いてから手紙を送るまでに、ちょっと時間がかかったから」


「まぁな。皆は元気みたいだ。『こめ』料理はかなり定着して、どんどん新しい料理が誕生しているみたいだぞ。少しずつだが、他の村や町の人たちも食べに来てくれるらしい」


「そうなんだ、凄いですね」


次にオール町に行った時が楽しみだな。

どんな米料理が増えているんだろう。


「あと、ドルガス兄さんに恋人がいたらしい」


「そうなんですか?」


「あぁ、家族全員かなり驚いたらしいと書いてあったよ」


そうか。

でも家族が増えるのはいい事だよね。


「来年の春に結婚することが決まったみたいだ」


「おめでたいですね」


「シリーラ義姉さんとドルガスの彼女、アリゼさんと言うらしいがかなり意気投合したらしく。兄さんたちがちょっと困っていたらしい」


奥さんたちの仲がいいのはいい事だと思うけど、何が困るんだろう?


「兄さんたちってちょっと頑固だろ?」


「まぁ、そうですね」


「シリーラ義姉さんとアリゼさん、それと母さんが加わって説教されているらしい」


あ~、なるほど。

もしかしてアリゼさんと言う人は、シリーラさんたちと性格が似ているのかな?


「ゴトス曰く、女性たちが手を組むと最強らしいぞ。何があったのかは書いていなかったが」


「ふふふっ、次に会う時が楽しみだね」


「……手紙はこまめに書こうかな」


ドルイドさんが、眉間に深い皺を作りながらぼそりと口にする。

いったい、何を想像しているのだろう?

じっと見ていると『2人でも大変なのに3人になるとか、無理だから』と言われた。

どうやら手紙で、次に会った時の説教? を減らしたいらしい。


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― 新着の感想 ―
[一言] 大切な人達の記憶、忘れてなくて良かったね
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