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283話 迷惑かけます

タブロー団長さんたちが、サーペントさんと交流している様子を少し離れた場所から見る。

話している内容は分からないが、随分と打ち解けたようだ。


洞窟には岩が飛び出している場所があり、その内の1つに座っているのだが少しずつお尻から冷えてくる。

ちょっと座った事を後悔してしまった。

隣に座っているドルイドさんを見ると、まだ黒の球体たちが頭の上や肩の上に乗っている。

随分と気に入られたようで、離れる様子が無い。

ソラとフレムは私の膝の上で休憩中。

足元にはシエルが元の姿になって眠っていた。


「ドルイドさん、その子たちにものすごく好かれちゃったね」


「うん、何でだろうね? 降ろしても降ろしても、楽しそうによじ登って来るんだ」


黒の球体は飛び跳ねる事は出来ないようで、口を使って器用にドルイドさんの体を本当によじ登っている。

かなり大変だと思うけど、楽しそうだ。


「それにしても、なんだか面白いな」


ドルイドさんの視線の先は、先ほどから変わらず3人とサーペントさん。


「楽しそうですね」


「そうだな。あのサーペントは頭が良くて長生きみたいだから、そうとう色々な事を知っているだろう。村にとって宝だと思うぞ」


なるほど、この周辺の歴史を知っている生き証人? になるのかな。


「ぷっぷ~」


「どうしたのソラ?」


ソラが鳴いた後私と視線が合うと、違うところに視線を向ける。

つられてそちらに視線を向けると、洞窟の外を見ることが出来る入り口。


「あっ、ドルイドさん。暗くなりかけているみたい」


「そうみたいだな。暗くなる前に帰らないと」


ドルイドさんが立ち上がると、黒の球体がぽろぽろと落ちる。


「うわっ。ごめん、大丈夫か?」


ドルイドさんが心配そうに聞くが、どの子も楽しそうにまたよじ登ろうとする。


「いやいや、もう俺たち村に帰るから。ごめんな、もう遊べないんだ」


彼の言葉にピタリと動きを止めてじっと彼を見つめる多数の視線。


「なんだか、ものすごい罪悪感が……」


確かに、これはちょっと辛い。

私ではなくてよかった。


ドルイドさんが、黒の球体たちを説得? している傍から離れてサーペントさんのもとへ行く。


「タブロー団長さん、もう戻らないと暗くなってきてますよ」


冬は暗くなるのが早い。

まだうっすら暗くなりかけているぐらいだが、あっという間に真っ暗になるだろう。

森の中では、それは危険なので急いで村へ戻る必要がある。


「もうそんな時間か?」


プリアギルマスさんが悔しそうに、洞窟の出入り口の方へ視線を向ける。

そして暗さを確かめたのだろう、大きなため息をついた。


「サーペントさん、お疲れ様」


私の言葉に鼻先を近付けるので撫でると、ちょっと顔を動かしてこすり付けるような動作を見せる。

そう言えば、サーペントさんは力加減が良く分かっているな。

シエルの場合は、最初の頃全力で来られて何度も後ろに転げたもんね。


「守り神様、ありがとう。魔法陣については必ず誰が犯人か捜すので」


タブロー団長さんが、サーペントさんに向かって頭を下げるとプリアギルマスさんとピス副団長さんも頭を下げた。

全員で後片付けをして、最後にピス副団長さんが魔法陣に向かって魔石を1つ叩きつける。

何が起こるのかワクワクして見ていると、叩きつけられた魔石が割れて白い光が魔石から飛び出す。

その光は魔法陣に吸い込まれる様に消えると、地面に描かれていた魔法陣が空中に浮かび上がってそして空中に消えていった。


「凄いですね」


「害になる魔法陣を消す方法の1つだな」


方法の1つということは、他にも消す方法があるのかな?

それにしても空中に浮かび上がった魔法陣は何とも幻想的だったな。


洞窟から出ると既にかなり暗くなってきていた。

急いで村まで戻る。

タブロー団長さんたちは私の事を気にしてくれたが、私は早歩きが得意。

でも、さすがに暗くなって危ないということでシエルが私を乗せて走ってくれた。

ピス副団長さんに、ものすごい羨ましそうに見つめられた。

門が見える手前で降ろしてもらい、3匹をバッグに入れる。

門では、門番さんたちが悲壮な表情で待ち構えていた。

トップが不在中に何かあったのかとプリアギルマスさんが慌てていたが、全員が帰ってこない事が問題だったようで、3人が何度も謝っていた。


「サリファさんたちが心配しているといけないから、宿に戻ろう」


「うん」


タブロー団長さんたちに声をかけてから、急いで宿に戻る。

夕飯の時間だったようで、こちらもかなり心配をかけてしまっていた。

今から夕飯を作るのは大変だろうと、夕飯も頂けることに。

部屋に戻ってソラたちをバッグから出して、ポーションを用意してから食堂へ向かう。

夕飯を頂いていると、手が空いたのかドラさんが声をかけてきた。


「何かあったのか? いつも遅くならないように気を付けていただろう?」


いつもの時間よりかなり遅く帰ってきたので、本気で心配をかけてしまっていたようだ。

さすがに話せない事が多かったので、後で話すことにしてその場は収めた。

食後、泊り客が各部屋や遊戯室に移動したのを確認したのか、もう一度ドラさんが私たちのもとへ来た。


「で、何か厄介ごとにでも巻き込まれたか? 問題があったら言えよ」


「ありがとうドラ」


「ありがとうございます。ドラさん」


「後でタブロー団長から書類が届くと思うが、簡単に説明をしておくよ」


今日の事をドルイドさんが説明する。

もちろん話せる内容だけだけど。


「記憶が? 俺が誰か分かるか?」


ドラさんの質問にドルイドさんも私も一瞬キョトンとしてしまった。

さっきドラさんと名前を言ってお礼を言ったのだけど。


「大丈夫だ。というか、さっきアイビーも俺もドラの名前をちゃんと口に出したぞ」


「ん? あぁ、そうだったな。記憶が無くなった人を見たのが初めてでどうしたらいいのか」


確かに困惑するよね。


「すみません、ドラさん。でも、記憶を無くしていると言っても少しみたいなので生活には影響はないと思います」


あったら、あったとき。

いま、ごちゃごちゃと考えても解決しないからね。

なんと言っても、何を忘れているのかが分からないのだから。


「そうか。ん~、記憶が無くて一番問題なのは金の事と命を繋ぐのに大切なポーションと魔石の事だな。あとは忘れていても、生きていける」


ドルイドさんが、確かにと言って笑う。

そうなんだけど、かなり大雑把だ。

でも、お金や魔石の事はドルイドさんと話しておいたほうがいいかな。

もしもの事があるかもしれないし。


「疲れただろう。今日はゆっくり風呂に浸かって、もう寝た方がいい」


「そうだな、確かに疲れたな。アイビー、行こうか」


ドルイドさんも私も、確かに少し疲れた表情をしている。

さすがに森を何度も往復するのは疲れた。

途中、記憶のこともあったし。


「はい。ドラさん、ご馳走様でした。サリファさんに、ありがとうとお伝えください」


急に夕飯が2人前必要になったから、どこかで無理をしたかもしれない。

今日は疲れたから待てないけど、明日は会った時にちゃんと顔を見てお礼を言おう。


夕飯を食べてホッとしたからか、どっと疲れを感じた。

記憶が無くなっていると分かった時の恐怖は、やはりかなりのモノだった。

あの後ドルイドさんと話す事で落ち着いたし、忘れていても大丈夫とは思えたけど。

あの時の負荷は、体に残っていたようだ。

宿に着いてお腹がいっぱいになって気持ちが落ち着いたら、1日の疲れに襲われた。

なんとか気力でお風呂に入り、ベッドに辿り着くとそのまま倒れ込んだ。

もう動きたくない。


「ソラ、フレム、シエル、お休み。えっと、黒のスライムは、明日まで待ってね……眠い……明日ちゃんと話そう……ね……」


閉じそうになる瞼を何とか開いて、小さな黒のスライムに話しかける。

黒のスライムは、プルプルと震えたように見えた。


「アイビー、お休み。皆もお休み。しっかり休もうね」


ゆっくり頭を撫でられる感覚がする。

気持ちいいなっと思っていると、スーッと周りの音が消えていった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 私も体重が今の1/4(アイビーと同じ位)で安全な大型の猫種ならぜひ乗せてもらいたいです
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