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265話 対策をしないと!

「あのローズさん」


「どうしたんだい。随分神妙な顔して」


「気配を消すスキルって影以外にもあるんですか?」


そんなスキルがいっぱいあるのなら、何か対策を考えておかないと。


「確かあったはずだ、えっと」


「どうしたんだ?」


ローズさんが思い出そうとしてくれているのを見ていると、ドルイドさんが不思議そうな表情で私を見る。


「私は今まで気配で人の動きを感知してきたから、それが使えない場合の対処方法を考えておきたくて」


「対処方法?」


「うん、近付く人を感知できなかったらシエルが本来の姿になっているのを見られるかもしれないし、ソラやフレムの事だってばれてしまうかもしれない」


私の言葉にドルイドさんが、驚いた表情を見せる。


「悪い。そこまで考えが及ばなかった」


ドルイドさんの言葉に首を振る。


「なるほどね。確かに、何か対策をする必要があるね。アイテムに何かないかね?」


ローズさんも私がスキルについて聞いた理由を理解してくれたようだ。

そしてアイテムの一覧表で対策になるモノがないか、探してくれる。


「難しいね」


一覧の確認をしているローズさんが、目頭を押さえながら首を振る。

どうやら私が希望するアイテムはないようだ。


「あっ、思い出した。スキルのことだけど、隠密スキルというモノが気配を消せると聞いたことがあるよ」


「隠密スキル?」


隠密って忍者?

ん? あぁ、前の私の知識か。

前の私の世界には隠密スキルを持っている忍者という者がいたの?

死んだ人がよみがえる世界で、気配を消せるスキルを持った忍者がいる。

いったいどんな世界で、前の私は生きていたんだろう?

今の世界より絶対怖い世界だよね。

だって、死んだ人が土から這い出てくるんだもん!

って、あ~思い出してしまった。


「どうした?」


「あっ、いえ。ちょっと消したい記憶が……」


「顔色が悪いが、大丈夫か?」


「大丈夫です」


えっと、何か良いことを思い出そう。

例えば墓からって違う。

ふ~、ん?

ソラたちを入れているバッグがごそごそ?


「あっ、ごめん。ローズさん、ソラたちを出してもいいですか?」


「あぁ、もちろんだよ、出してあげな」


慌ててソラたちが入っているバッグの蓋を開けるとすぐに2匹がぴょんと飛び出してきた。

そしてバッグには寝ているフレムだけが置き去りになる。


「フレムは出ないの?」


「……りゅ~……」


相当眠いのか、いつもより反応がない。

あれ? 

またフレムに黒いシミがある。

手でシミの部分を触るが、特に怪我をしている様子もない。

また消えてくれるかな?


「そう言えば、王都で新しいスキルを持つ者が発見されたと聞いたよ」


ローズさんの言葉に、視線を向ける。


「スキルって増えるんですか?」


「私にはその辺りは分からないね。ただ、今も新しいスキルが増えていると言う研究者と、スキルはあるが発見されていないだけだと言う研究者もいるね」


なるほど、誰も詳しくは分からないのか。

そう言えばドルイドさんのスキルもレアなんだよね。

……私のスキルもある意味レアだし。


「アイテムだが、知っている者たちに連絡を取って見るよ。ただし、この冷え込みだから少し時間がかかるだろう」


ローズさんがため息をついて、外が見える窓に視線を向ける。

風が出始めたのか、ガタガタと音が聞こえる。

今日の夜も風で煩そうだな。


「お手数おかけしますが、よろしくお願いします」


「あぁ、私の持っている情報網なら、王都やその周辺のアイテムの情報も手に入るからね。何かあったら引っ掛かるだろう」


今、さらっと普通に言ったから聞き逃しそうになったけど、王都や周辺の情報も手に入るの?

そんなすごい情報網を持っているの?

ローズさんが、さらっと言葉にしたので凄さを感じる暇がなかったけど。


「凄いよな?」


ドルイドさんが困惑気味に私に問いかけるけど、私に訊かれても。


「たぶん、かなり凄い事だと思いますよ?」


「別に凄くないだろう。アイテム好きの連中が集まっていたら、いつの間にか出来上がった情報網だよ」


本当にローズさんはアイテムが好きなんだな。


「アイテムの話だと、どれくらい話が続きますか?」


「永遠」


一切迷いなく言いきった。

ここまではっきりしていると、何も言えなくなるな。


「ハハハ、なるほど。あっ、フレムが復活させた魔石を持ってきました」


スキルやアイテムのことですっかり忘れてた。

今日は魔石を持ってきたのだった。


「悪いね。わぉ、そうとう頑張ってくれたんだね?」


ずしりと重い魔石の入った袋を、ローズさんに手渡すと驚いていた。

雨続きの2日間、私とソラとシエルはグダグダ過ごしたのに、フレムだけは頑張ってくれていた。

さすがに申し訳ないなと思い、部屋の掃除を頑張った。


「フレム、ありがとうね」


バッグで熟睡中のフレムにローズさんが声をかける。

聞こえたのか、バッグがぴくぴくと動き……止まった。

なんとか反応しようとして、諦めた感じかな?


「ククク、相変わらず可愛いね」


「ぷっぷぷ~」


「にゃうん」


ローズさんの可愛い発言に反応したのか、店の中で遊び回っていたソラとシエルがローズさんの前にある机に飛び乗る。


「なんだい可愛い反応だね~」


ローズさんに笑われると、ソラとシエルはどちらも不服そうに鳴く。

それに3人で笑いながら、少し時間をつぶさせてもらう。

いったん宿に戻ってからアルーイさんの店へ行く予定だったが、ローズさんが時間までいたらいいと言ってくれたのだ。


「今日はありがとうございます」


ドルイドさんと一緒に頭を下げる。

そろそろアルーイさんに余裕が出始めるだろうと、彼女のお店に向かうことにした。


「気にする必要は無いよ。えっと3日後ぐらいだね?」


「はい、雪や雨の場合は予定を変更したいですが」


「それは当たり前だよ。そんな日に外に出る必要なんてないからね」


復活させた魔石を、持って来るおおよその日にちを決めた。

今日はたまたまローズさんが気付いてくれたが、時々無視するらしいので約束は大事。

ただし、雨や雪の日は延期らしい。

これはありがたい。


「風が強くなってきてるね。大丈夫かい?」


「はい、それにしても今日の夜は荒れそうですね」


「荒れてもいいけど、寒さはきついね」


2人の会話を耳に入れながら、窓から外を見る。

ひゅ~っと言う音と共に何処からかガタガタという音が聞こえる。

外へ出るのを躊躇するな。


「さて、行くか?」


「うん」


扉を開けて外に出る。

ドルイドさんも出て来たと思ったら、急いで扉を閉めていた。

中から手を振るローズさんに、軽く頭を下げて急ぎ足でアルーイさんのお店に向かう。


「落ち着いたみたいだな」


お店の外から中を覗くと、買い物中の客はいるみたいだが朝のような混雑はない。

良かった。

これでアルーイさんと落ち着いて話が出来そう。

お店の中に入ると、


「この馬鹿! トルーカの馬鹿!」


「何度もいうな。ちょっと間違っただけだろう!」


落ち着いて話は出来ないかもしれないな。


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