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253話 怒ってる!

「こんにちは?」


ローズさんのお店に来たが、カーテンが閉まっていて開いている様子がない。

とりあえず、扉が開くか確認。

開いたので、扉を開けて中に声をかけてみた。


「何をしているんだい? 早く入っておいで」


姿は見えないがローズさんの声が聞こえた。

それにホッとしてお店の中に足を踏み入れる。


「こんにちは」


ドルイドさんが後ろから入ってきて、ピタリと扉を閉める。

今日は昨日より冷え込みが酷い。

太陽が出ているのに、寒さが落ち着かない。


「こっちへおいで、暖かいよ」


声のする方へ行くと、宿でも見かけた移動式の暖房アイテムが稼働している。

そして、その近くに1人の男性。

この村の自警団の団長、タブローさんだ。


「今日は、わざわざすみません」


ドルイドさんが軽く頭を下げたのを見て、慌てて下げる。


「いや、母から協力をしてもらいたいことがあると聞いたのだが、何だろうか? ただ、俺でも協力できない事があるので、それは理解してもらいたい」


何だろう、少し声が硬いな。

もしかして何か疑われているのだろうか?

ドルイドさんはその態度に苦笑いし、ローズさんは眉間に皺を寄せた。


「タブローには処理をしてほしい事があるそうだよ」


ローズさんが、不貞腐れたように言う。

しかも『処理をしてほしい事』だなんて、ちょっと言い方に問題があるような気がする。


「処理?」


タブロー団長さんがドルイドさんを見る。


「えぇ、内密に処理をしてほしい事があるのですが、出来ますか?」


ローズさんに続いて、ドルイドさんも似たような言い方をする。

しかも『内密』が付いた。

そんな言い方をすると、悪い方向に考えられてしまう可能性がある。

タブロー団長さんは私たちを疑っているようだし。

彼を見ると、険しい表情。

あっ、やっぱり誤解した。


「それは犯罪に手を貸せと?」


タブロー団長さんの言葉に、にこりと笑みを見せるドルイドさん。

ローズさんも何も言わない。

これはもしかしてワザと?

でも、なんでだろう?


「犯罪に手を貸すつもりはない」


タブロー団長さんの視線と声が怖いです。

なんとなく2歩ほど後ろに下がっておく。

それにしても、最初から私たちの事を疑ってかかっているな。

以前会った時は普通だったのに。

ここ数日で何か目につくような事をしたかな?


「赤の魔石のことなんですが、話を聞く気はないですか?」


ドルイドさん、タブロー団長さんの様子をじっと観察しているような気がする。

疑うように仕向けることに意味があるのかな?

……分からないな。

ローズさんを見ると、肩が震えて視線を下に向けている。

もしかして笑いを堪えているのかな?


「……どんなに困難な状況でも犯罪に手を貸すつもりはない。話がこんな事なら失礼する!」


「アハハハ! この馬鹿息子が、今度は誰に何を吹き込まれて来たんだい?」


タブロー団長さんが動き出そうとすると、ローズさんの笑い声がお店に響いた。

それに驚いた表情のタブロー団長さん。

しばらくローズさんとドルイドさんを交互に見て、最後に何故か私をじっと見て大きなため息をついた。


「だましたのですか?」


タブロー団長さんが、ジロリとドルイドさんを睨む。

だが、ドルイドさんはそれを受けてもいつも通りの笑顔を見せる。


「失礼。ローズさんが始めたことなのですが、最初の態度が鼻についたので乗りました。こちらもあなたを判断する必要があると思いましたので。話に乗らなかったのは正解。ただし、我々の態度に疑問を持たなかったのは不正解ですね」


ドルイドさんは何気にタブロー団長さんの態度に怒っていたみたい。


「最初から疑ってかかってきたことが間違い。ドルイドさんが話し始めた時に、私の様子を見なかった事も間違い。自分の判断に疑問を持たなかった事が一番の間違い。分かっているのかい?」


あぁ、ローズさんもタブロー団長さんの態度に怒っていたのか。


「くっ。すまなかった。しかし、ギルマスが」


ギルマス?

つまり商業ギルドか冒険者ギルドの、どちらかのギルマスに疑われていると言うことなのかな?

それはちょっと嫌だな。

何か目につくような事をしちゃったかな?


「馬鹿が!」


「「うわっ」」


ローズさんの怒声がお店に落ちる。

あまりの声の大きさと強さに、ドルイドさんと一緒にちょっと飛びあがってしまった。

バッグの中でもビクリとした振動の後に、フルフルと震えている振動が伝わってくる。

深呼吸をして気持ちを落ち着かせてから、バッグの上からポンポンと優しく撫でる。

しばらくすると落ち着いたのか、振動が止まった。


「ギルマスが何を言おうが、自分で判断しないでどうする! それを会った瞬間から隠しもせず敵意を見せて、こちらに大切な協力者だったらどうするんだい? もしそれで町の人が死ぬような結果になったら責任を取れるのか?」


ローズさんが、本気で怒っているのが分かる。

ものすごい迫力だ。


「商業ギルドの方に高価な鉱石が大量に流れたと聞いたが、売った人物が誰か不明で。売られた日から数日さかのぼってこの村に来た人物を調べたらこの2人が浮上した。だから」


「はぁ~」


ローズさんの大きなため息が何とも気まずい。

タブロー団長さんもそうなのか、視線が泳いでいる。


「匿名での鉱石の売買は、禁止されているのかい?」


「いや」


「では、なぜそれが気になった?」


「……何か犯罪に関わった鉱石なのではないかと」


「商業ギルドでしっかり調べて問題なしとされ売買された物を、どうしてお前がいちゃもんをつける?」


「…………俺では」


「そうだろうな。いちゃもんをつけて馬鹿をしているのは冒険者ギルドのギルマスだ」


「いちゃもんではない、ちゃんと疑問があったから」


「高額な鉱石を売れば相当額のお金が手に入る、身を守るために匿名とする冒険者もいる。確かに功績を認めて欲しい奴が多いから、数は少ないがいないということではない。にも拘らず、お前たちは暴こうとした。もしもそれで名前が村に知れ渡って、襲われでもしたらどうするつもりだった?」


「…………」


冬の不安からなのか、例年より犯罪に走る人が多くなっているとドラさんが心配していた。

だからこれは『もしも』という話で片付けていいことではないんだよね。

ローズさんがもう一度大きなため息をつく。


「悪いね、この馬鹿が。……正直こいつがここまで馬鹿だとは」


さっきからずっと馬鹿って呼ばれているな。

ちょっと同情してしまう。


「すまなかった」


タブロー団長さんが頭を下げる。

ドルイドさんが肩をすくめて私を見る。

私は疑問はあったが、怒りはなかったので問題ないと1回頷く。


「もういいですよ。それより頭が冷えましたか?」


「……はい。忙しくて苛立っていたところでの呼び出しで、来たらギルマスが疑っていた2人が来たのでちょっと」


「言い訳は十分」


ローズさんの冷たい声がタブロー団長さんの言葉を止める。


「すみません」


ん~、ちょっと冷静さが仕事の疲れで無くなってたと言うことかな?

まぁ、落ち着いたのならもう大丈夫でしょう。

本当に問題があるなら、ローズさんが絶対に紹介しないだろうし。

それにソラたちは、タブロー団長さんを大丈夫と判断している。


「もういいですよ。疲れているところすみません」


私が声をかけると、タブロー団長さんが驚いた表情を見せる。

ドルイドさんは私の頭をゆっくりと撫でてくれた。


「さて、馬鹿の頭も冷えたところで、ゆっくり話をしようか」


また馬鹿って言われてる。

タブロー団長さんは既に諦めた表情だ。

ローズさんは、引きずるような性格ではないのであと少しです、タブロー団長さん!


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― 新着の感想 ―
自警団長が冒険者のギルマス寄りってどうなの? 中立じゃないと。
[一言] バカ正直で騙されやすいのかな? 団長としてはマズイのではないかと思うけど。
[一言] 自警団の団長ならどのみち飼われた犬だから村長や領主の言いなりならわかるんだけどね(笑)ギルドの言いなりなら自警団要らない?
2021/06/18 07:18 退会済み
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