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240話 久しぶりの米!

笑いが収まった後、2人の時間がある時におにぎりを一緒に作ることを約束した。

タブロー団長さんは、結婚を約束している人がいるらしくその人を誘うことにしたみたいだ。

でも『こめ』料理を作ってほしいなんて誘って、嫌われたりしないかな?

ちょっと心配になる。

2人の関係に何かあると嫌なので訊いてみたら、ちょっと複雑な表情をしたタブロー団長さん。

首を傾げると、ローズさんが彼女は好奇心の塊だから問題ないだろうと教えてくれた。

その言葉にため息をつくタブロー団長さん。

もしかして彼女さんのその好奇心に、振り回されているのだろうか?


「頑張ってくださいね」


言葉をかけると、大笑いしたローズさんに背中をバンバンと叩かれた。

ローズさんの笑いのツボが分からない。


タブロー団長さんに宿の場所を知らせ、お店を後にする。

ローズさんは機嫌がいいのか、他の客の接客を楽しそうにやっていた。

ときどき、機能付きマジックバッグでいたずらするようで叫び声が聞こえたが。


宿に戻る前に買い物に行く。

夕飯に必要な野菜や、米、肉などの確保だ。


「『こめ』も買うのか? いっぱい貰っただろう?」


「育てる場所が違うので、炊き方とか違うと思うの。だから確認したいと思って」


オール町を出る前、米を育てている農家の人から大量に米を貰った。

米の使い道を広げてくれたお礼だと言っていたけど、その量は2人なら冬が軽く越せるぐらい。

なので買う必要は無いが、この村の米がどんなものなのか確認したい。


「そうか、分かった。じゃぁ、順番に店を見ていくか」


「うん」


大通りを歩いて、最初に見えてきたのは野菜を売っている店。

さすがに大通りに面しているだけあって、大きな店だ。

品ぞろえは、一般的な野菜の他にこの村の特産品が並んでいる。

煮込み料理にお薦めの野菜と生で食べられる野菜等をお店の人に確認しながら購入する。

お肉屋さんではモウの2種類、『ほるす』と『たいん』の切り落としを買うことが出来た。

最後に米を見に、穀物屋へと足を運ぶ。

米はやはりエサ扱いなので、安い。

店主に不思議な顔をされたが、目的の物を購入。

旅人がエサを購入するのはかなり珍しいのか、3回も本当に購入するのか確認された。


宿に戻ると、パンの良い香りが漂ってくる。

あんなに食べたのに、また食べたくなる香りだ。

部屋に戻って、ソラたちをバッグから出す。

ドルイドさんは、3匹の声が外に洩れないようにアイテムの起動ボタンを押してくれた。


「もう声を出しても大丈夫だぞ」


ドルイドさんの許可の言葉に3匹が嬉しそうに飛び跳ねる。

まぁ、フレムは跳ぶ事なくコロコロ転がっているが。


「ぷっぷぷ~」


「てっりゅりゅ~」


「にゃうん」


やはりバッグの中に半日とはいえ、面白くないんだろうな。


「明日は捨て場かな?」


「はい。ソラ、フレム、シエル、明日は森へ行くから少しだけ思いっきり遊べるよ」


私の言葉に3匹が、嬉しそうにプルプルと揺れる。

3匹それぞれ揺れ方が違うので見ていて可愛い。


「そう言えば、おにぎりでよかったんですか? ドルイドさん焼きおにぎりの方が好きですよね?」


ドルイドさんは味がしっかりついている焼きおにぎりの方が好きだったはず。

なのに説明したのがおにぎりだったので少し驚いていたのだ。


「あ~。旅の途中で作ってくれたおにぎりあるだろ? 甘辛く煮たお肉が混ぜ込んであるやつ」


甘辛く煮たお肉のおにぎり?

それって、主食にするには量が少なかったから、甘辛く煮てご飯に混ぜておにぎりにした奴のことかな?

確かに、あれは味がしっかりついていてドルイドさんもおかわりしていたっけ。


「『こめ』の話をしていたらあれを思い出して、食べたくなったんだよ」


そうなのか。

なんだかまた食べたくなるって言ってくれるのはうれしいな。


「なら、今度一緒に作るおにぎりはそれにするね」


とはいえ1種類では駄目だよね。

他にどんな味のおにぎりを作ればいいかな?


「『こめ』の話をしていたら食べたくなったな。久々に『こめ』にしないか?」


「確かに食べたくなったかも」


ご飯か~。

何にしようかな。

ドルイドさんの米料理はおそらく丼物だよね。

あっ、モウがある。

この名前とお肉の見た目が、前の私の記憶を揺さぶるんだよね。


「丼物にしますね」


「おっ、良いね」


ドルイドさんの嬉しそうな表情にこっちまで笑顔になる。

って、ほのぼのしていたら駄目だった。


「ドルイドさん」


「どうした?」


「お父さんと呼んだ方がいいですか?」


呼び方で不信感を持たれるなら、変えた方がいいよね。


「呼びたいように呼んだらいいよ」


「えっ?」


「別に何か訊かれたとしても問題ないから、どーんと構えていたらいいんだ」


そっか。

別に悪い事をしているわけではないもんね。

でも、いちいち確認取られるのは私としてはちょっと不服。

だからといって、すぐにドルイドさんをお父さんと呼ぶのは……恥ずかしい。

いや、時々お父さんと呼んでいたけどあれはなんというか勢いと言うか。


「ははっ、無理はしなくていいからな」


「うん。ありがとう」


「さて、夕飯を作ろうか?」


「そうですね」


ご飯を炊きながら、モウのお肉を切る。

野菜も切って、甘辛く煮る。

ご飯が炊けたら、煮ておいた具に溶いた卵を全体的にかける。

卵といっても、ここでは六の実だけど。

卵が半熟になるところで火を止めて、余熱で完成させる。

茶碗にご飯をよそっていると、ドラさんが2階にやってきた。


「それは?」


私が作った丼物が珍しいのか、それとも米が珍しいのか不思議そうに訊いてくる。


「米料理で牛丼という物です。米の上にこの具をのせて完成なんです」


「『こめ』?」


ドラさんは微かに驚いた表情をする。


「はい、米です」


じーっと茶碗の中の米を見つめるドラさん。

えっと、そろそろ牛丼を完成させたいな。


「あの、少し食べますか?」


ドルイドさんがおかわりする可能性を考えて、少し多めに作ってある。

なのでドラさんに少し分けることは出来る。


「サリファにもあるかな?」


「えっと、少しずつならあるかな?」


おかわり用だから全部は駄目だけど、少し多めにしてドルイドさんには謝ろう。


「なら、貰えるか?」


部屋から茶碗を持って来て、米を入れて上に具をのせる。


「はい、どうぞ」


「ありがとう」


ドラさんは嬉しそうに、1階に下りて行った。

何をしに来たんだろう?


「どうした? さっき茶碗を取りにきただろう?」


明日、捨て場に行くための準備をしてくれていたドルイドさんが来る。


「ドラさんが来て、おかわり用の牛丼を分けてしまいました」


「あぁ、良いよ別に。大丈夫」


不思議に思いながらも、自分たちの牛丼を完成させる。


「「いただきます」」


食べて米の状態を確認する。

ちょっと固めに炊けてしまったな。

まぁ、これぐらいなら大丈夫かな?


「今日の『こめ』は、どっち?」


「この村のです」


「そうか、いつもの『こめ』と少し違うな。でも、相変わらず美味い」


美味しいと言って、食べてくれる人がいるのは良いよね。

ドルイドさんのおかわりもいつもより少ないが完食。


「ご馳走様」


「お粗末様でした」


食器などを洗い、片づけをドルイドさんにお願いすると、部屋で飲むお茶の用意をする。

部屋に戻ろうとすると、慌てた様子のドラさんが2階に来る。


「すまない」


「えっ?」


「パンが焼けたことを言いに来たのに、忘れていた」


あっ、さっき2階にきたのはそれだったのか。


「私たちも忘れていました。すぐ取りに行きます」


「それは何時でもいいが。『こめ』のどん? 旨かった」


「口にあってよかったです」


「今度、俺とサリファに『こめ』料理を教えてもらえないだろうか?」


「いいですよ」


「ありがとう」


ドラさんは急いで1階へ下りていく。

この時間は忙しいはず、大変だな。


部屋に戻ってパンの話をすると、ドルイドさんが1階へ取りに行ってくれた。

その間に、お茶と果物を用意する。

ソラたちは食後の運動中。


あれ?

何か忘れているような……。


「ただいま」


「あ~! 洗濯物!」


「あっ!」


急いで2人で洗濯物を取りに行く。

寒さのため洗濯物はどれも冷たく、乾いているのかいまいち不明だが、全てを取り込んで部屋に戻った。

とりあえず、全て乾いていたのでよかった。


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― 新着の感想 ―
卵とじ牛丼なのか。 卵を生で食べる文化はないのかな?
[良い点]  アイビーの団長さんへの思いやりの言葉で周りが爆笑。読んでいて同じように吹き出してしまいました。前に一度、最新話まで全てを一気に読みましたが、時間が経っても、また読みたくなります。楽しくて…
[気になる点] スライムの時のシエルは何を食べてるんでしょうか。気になります笑
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