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229話 個性?

大通りの道に並んでいる屋台を見ながらギルドに向かう。

この村のギルドは、大通りに面した場所に建っているらしい。


屋台を回っているとやたらスープを売っている店が多い。

と言うか半数がスープ屋だ。


「この村はスープ料理が多いですね。スープが有名な村なんですか?」


昨日の宿でもハタウ村の特製スープだった。


「いや、前にきた時はここまでスープばかりではなかったんだが」


「冬だからでしょうか?」


「そうかもしれないな」


冬は温かい物が欲しくなるもんね。

それにしても、この村のスープは色んな色が溢れているな。

赤色や緑色のスープはなんとなく食材が分かるのだけど。

あっ、橙色のスープも予想はつく。

が、紫色のスープは何のスープなんだろう?

と言うか、ちょっと食べる気が起きないなあの色は。

うっ、……青色はもっと遠慮したいかも。


「色がすごいな」


ドルイドさんが青色のスープを見て顔を歪ませた。

良かった、美味しそうと言われたら賛同できなかった。


「うん。匂いは良いのだけど見た目が何と言うか」


「そうだな。考えた事もなかったが、見た目って重要なんだな」


「うん。そう思う」


それにしても本当に色々な色があるな。

食材の色にしては鮮やかすぎるし、食材では出ない色もある。

個性を出すためだろうか?


「あの建物だな」


ドルイドさんの視線の先には大きな建物が3つ。

それぞれに商業ギルド、冒険者ギルド、自警団の印がある。


「どんな結果が出るのかドキドキしますね」


肩から提げている、鉱物が入っているバッグを軽く叩く。


「あぁ、俺の知らない鉱物が大半だったからな」


洞窟で採掘した鉱物を確認したところ、ドルイドさんも知らない物が多く価格の予測がつかなかった。

なので今日は、とりあえず洞窟で手に入れた8種類の鉱物を各5個ずつ売りに出す予定にした。

もしものことを考えて、なるべく小さい物を選んだ。

ただし、ドルイドさんがレアだと言った黒石(こくせき)は小さ目を3個。

目標金額は宿代15ラダルと外套&服代25ギダルだ。

おそらく足りないので、追加で売る物は今日の結果で決まる。

8種類各5個に黒石3個で目標金額を達成できたら、それはそれでバッグの中身が怖くなる。

それでなくても光るポーションや透明度の高い魔石が入っているのだ。


「あれの鑑定はここでお願いするの?」


「あぁ、その予定だ。何か分かっていないと使えないからな」


あれと言うのは、サーペントさんがくれた黒色の球体。

どんな力があるのか全く不明なため、とりあえず鑑定してもらうという予定だ。

怖ろしい結果が出る可能性もあるため、かなり迷ったのだが。

何も知らないよりいいだろうという事に落ち着いた。


商業ギルドに入ると、入口の所に冒険者の格好をした3人と中年の男性1人が立ち話をしていた。

横を通ると、どうやら森の奥にハタウ村の守り神が現れたとかなんとか。


ハタウ村の守り神?

ドルイドさんも気になったようで、少し離れた所で立ち止まる。


「見た奴がいるのか?」


「いや、痕跡があったらしい」


「痕跡だけか?」


「馬鹿か、守り神は巨大なヘビ。ここらで一番でかいサーペントなんだ。痕跡を見たらすぐに分かる」


巨大なサーペント?

森の奥で見た、体全体に不思議な模様があったサーペントさんを思い出す。

何処となく神秘的な存在だった。


「だったら間違いなく守り神って事か」


「あぁ、森の妖精を連れていたかもしれないって」


森の妖精?


「本当か? 妖精の方は想像の産物とも言われているんだろう?」


「まぁな、でも存在していると信じている者も多い」


「妖精って何の事だ?」


どうやら中年の男性は知らないみたいだ。

良かった、知らない人がいたおかげで、もう少し妖精の事を詳しく知ることが出来る。


「なんだ、知らないのか?」


「妖精は守り神の遣いだよ。黒い体の生き物らしい」


黒い体の生き物?

ちらりと森で出会った生き物を思い出す。

巨大なサーペントに、黒い生き物……。

まさかね?


「文献には黒い球体に変化出来ると書いてあるそうだぞ。ただ、守り神以上に妖精には出会えないがな。あまりにも目撃者がいないから、いつのころからか想像の産物だと言われ出したんだよな」


3人の冒険者たちの話は続いているが、彼らが言った言葉が頭の中を回る。

巨大なサーペントに黒い生き物。

しかも球体になれる。


ドルイドさんに視線を向けると、彼も私を見ていたようで目があう。

なんとなく2人とも苦笑い。

そっと4人から離れようと足を動かすと。


「俺としては守り神も見たいが、黒の宝珠を1度でいいから見てみたいよ」


冒険者の1人の言葉に、動こうとしていた足がぴたりと止まる。


「1個で王都に城が建てられるって聞いたが、本当か?」


「本当らしいぞ」


「まぁ、伝説の宝珠だからな」


背中を嫌な汗が伝う。

止まってしまった足を何とか動かし、ちょっと急ぎ足で彼らから離れる。

2人とも無言だ。

誰も周りにいない事を確かめて、大きく息を吐き出す。


「アイビー、もしかしてもしかする?」


「もしかしますよね……」


「「ハハハ」」


人の少ない隅に移動する間にも、守り神の話は耳に入って来た。

どうやらそうとう噂になっているようだ。

文献では黒い体に白い模様が入っているとか、妖精は1匹だけではなく複数いる可能性があるとか。

どの話も、森で出会った巨大なサーペントと黒い子供たちを連想させるモノばかり。

ちなみに黒の宝珠の力は、死んだ人を蘇らせることが出来るらしい。

その話を聞いた瞬間、死んだ人が土からでてくる想像をしてしまった。

慌てて首を振って想像を追い払う。

前の私の記憶で、一番要らない物だ。


「どうした? 顔色が悪いけど大丈夫か?」


「大丈夫です。それにしても黒の宝珠ってすごい力を持っているのですね」


「人を蘇らせるか。そんな物があると聞いたことがないから、ただの噂だと思うぞ」


「そうなんですか?」


「あぁ、そんな力を持っているなら、世界中に黒の宝珠の話が広まっているはずだ」


確かに、ドルイドさんの言うとおり。

この村だけでその話が広まっているのはおかしい。


「はぁ~、とりあえずあれを鑑定に出す前でよかったよ」


「そうですね」


ドルイドさんと同じようにため息をつく。

もしも何も知らずに鑑定に出していたら、大変なことになっていただろう。

黒の宝珠ではない可能性もあるが、確かめるには危険すぎる。

バッグの奥の奥にしまっておこう。


「ここにいても仕方ないから売りに行こうか」


「うん」


しばらく休憩していたが、ずっとここにいても仕方ないのでドルイドさんの後を追って歩き出す。

カウンターを見ると、丁度前の人が終わったようですぐに対応してもらえそうだ。


「いらっしゃいませ。どうしましたか?」


ギルドのカウンターには、少し釣り目をしたきつい印象の女性がいた。


「洞窟で鉱物を採取出来たので、売りたいのですが大丈夫ですか?」


「大丈夫です。ではここに売る物を入れてください」


ギルドのお姉さんが、小さなカゴを出す。

その中に売ると決めていた8種類の鉱物を各5個ずつ。

最後に黒石の3個を乗せて、お姉さんに返す。


「ありがとうございます。しばらくお待ちください」


カゴをお姉さんに返すと、番号札のようなモノを渡される。

それを受け取って、椅子に座って様子を見る。

お姉さんも鑑定スキルがあるのか、1つ1つ鉱物を確認してくれている。

少しするとバタンと言う椅子が倒れる音がして、ついでお姉さんが慌ててどこかに走っていく後ろ姿が見えた。


「ドルイドさん」


「あ~レアかな。超レアではないといいな」


「そうですね。5個ではなく2個ずつにしておけばよかったですね」


「そこが問題ではないけどな。でも、確かにどうして5個なんてちょっと多い数にしたんだろうな」


お姉さんがちょっと興奮して顔が赤かったとか、お姉さんに話を聞いた男性が2階に走っていく姿とか見たくないです。


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― 新着の感想 ―
タイムリーな噂話に出会ったのは、宝珠の正体を教えたい守神様の導きかな?
恐らくそろそろお金が分かりにくい方、多いでしょう。 私もそうでした……が!!! https://ncode.syosetu.com/n9629ex/1/ この作品の1番最初の話(↑のURL)に作者様が…
[気になる点] 他の方も書いてますが、お金の換算がしにくく分かりにくい、、 バッグの奥に沈める物をどんどん増やしてく設定いるのかな? せっかく3匹がアイビーの為を思って頑張ってることだから、売らないに…
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