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228話 暴走?

疲れた。

お店にある椅子を借りて休憩する。

どうして外套を買いに来ただけなのに、こんなに疲れなくては駄目なんだ?


「アイビーにはこっちだろ?」


「それもいいですが、この色も似合うと思いますよ」


「それもいいな」


「あっ、これも似合いそうですね」


おかしいな、私の服なのに何故か勝手に決まっていく。

一応予算を決めた。

そうしないとドルイドさんがお店の人と一緒に暴走する。

と言うか、あれを着て、これを着て。

なんでこんなにいっぱい服を着なくては駄目なのだろう?

服や外套なんて、機能面を重視して決めればいい。

ボタンが可愛いとか、刺繍の柄とか……私は気にしないのに。


「アイビー、これはどうだ?」


「ドルイドさん、6着もいらないです。もう充分です」


「いや、でも可愛いぞ」


「だから」


「大丈夫ですよ、予算内ですから」


そうではなくて。

と言うか、本当に予算内に収まっているのかな?


「ドルイドさんの外套は決まったんですか?」


「あぁ、体に合うように少し調整を依頼しておいた。アイビーのも頼んでおいたから」


いつの間にしたんだろう。

ずっと私の服を選んでいたような気がするのだけど。


「私のは少し大き目でお願いしてくれましたか? 背が伸びると思うので」


この頃少し背が高くなった。

やはり成長期には、しっかり食べるという事が大切なようだ。


「大きくなったら調整を依頼すればいいから。それでも無理だったら、買い直したらいいだろう」


「もったいないですって」


「この店の服は人気が高いので、他の村や町で売れますよ。だから大丈夫です」


バルーカさんがにこりと笑う。

このお店の店長で、店に並ぶ全ての服をデザインしているらしい。

ちなみに宿の旦那さん、ドラさんと幼馴染で同い年。

見た目は旦那さんより10歳ぐらい若いけど。

同い年と聞いてドルイドさんと一緒に驚いた。


「アイビー、スカー『絶対に嫌です!』ト……残念」


何故かドルイドさんがスカートを何度も勧めてくる。

旅にスカートなんて聞いたことがない。

何で無駄な物を勧めるのだろう?


「ドルイドさん、そろそろ終わろうよ」


「あともう少し」


時計を見る。

この店に入ってから2時間以上たっている。

正直、ドルイドさんを放置して宿に帰ってしまいたい。

が、それをすると好き勝手買われてしまうような気がして、ここから離れられない。


「この会話、もう3回目ですよ」


「あとちょっとだけだから。奥のソファでゆっくり休憩していてもいいからな」


ソファでの休憩に心惹かれるが、2人が持った服にこの場所から離れられなくなる。

2人が選んだ服は、どう見ても予算内に収まるようには見えない。

じっと見ていると、2人が私を見る。

首を横に振ると、2人揃ってため息をついて服を戻した。

やっぱり、ここから離れない方がよさそうだ。


「仕方がない、今日はこの辺りにして終わるか」


ようやく終わった。

長かった。

あれ?

今日は?

聞き間違いだよね、きっと。


「残念です。着飾ったら間違いなく可愛くなる素材なのに」


「そうだよな」


恥ずかしい事をさらっと言わないで下さい。

それにしても、ドルイドさんなんだか嬉しそう。

私の服を買うのがそんなにうれしかったのかな?


「どうした?」


「いえ、楽しいですか?」


「ものすごく」


そんないい笑顔で言われたら、どうしたらいいのか分からなくなってしまうのだけど。


「アイビー、最後に持っていたあの服」


「駄目です!」


やっぱり笑顔でも駄目な物は駄目。

バルーカさんの近くにある机を見る。

服が数着、積み上がっている。

本当に予算内に収まっているのだろうか?

不安だ。


「本当に大丈夫ですか?」


私の視線の先を見たドルイドさんに頭をぽんぽんと撫でられる。


「アイビーも知っているだろう? 値段を一緒に確かめたのだから」


「うん」


確かに最初に思ったより、この店の服は安かった。

と言うか、安い服もあったと言う方が正しい。

安い理由は刺繍の出来が少し荒いため。

まだ高級品として出すには、技術力が足りない人が縫った刺繍らしい。

見せてもらいながら説明されたが、私としては安い服の刺繍でも十分に見えた。


「だから大丈夫」


これはドルイドさんを信じるしかないよね。

正直に言えば、服を買ってもらえてうれしい。

ずっと拾った物だったから。

凄くうれしい。


「ドルイドさん、ありがとう」


「ハハハ、どういたしまして」


ドルイドさんに頭を撫でられていると、バルーカさんがくる。

最終合計金額を出してくれたようだ。


外套は1人1ラダルとちょっと高め。

私は少し迷ったけど、冬の寒さを甘く見たら駄目だという事でこの金額の物になった。

確かに今年の冬は寒すぎる。

そして服代はいろいろ揉めて、最終的に合計25ギダルまでとなった。

これにはドルイドさんの服代も含まれている。

ほとんど私の服代になっているけど。


「合計25ギダルと120ダルです」


あっ、予算超えてる。


「まぁ、120ダルぐらい大目にな」


仕方ないのかな?


「今回だけですよ」


「ハハハ、支払いはいつまでにしたらいいかな?」


笑って誤魔化された気がするな。


「外套を取りに来ていただいた時でいいですよ?」


「分かった。どれくらいで出来上がる?」


「そうですね。他の手直しも少しありますから、2日後でお願いします」


お店から奥で作業をしているのが少し見えるが、皆忙しそうだ。


「分かった。今日は良い買い物が出来た、これからもよろしくな」


「はい。春物もよろしくお願いしますね」


「あぁ、もちろん。アイビーの服も必要だしな」


えっ?

私が首を傾げると、ドルイドさんに頭をぽんぽんと撫でられた。

撫でられるのはうれしいけど。


2人でお店を出ると、ひゅ~っと風が吹き抜ける。

暖かいお店にいたので寒い!


「2日後が楽しみだな」


「うん。ところで春物も買うの?」


「あぁ、これから俺の服もアイビーの服もお店で買おうな」


「お金、足りなくなりませんか?」


不意にバッグから振動が伝わる。

驚いてソラたちが入っているバッグを見る。


「どうした?」


「いえ、いきなり揺れたから」


「揺れた?」


「うん。どうしたんだろう」


「アイビーがお金の心配をしたから怒っているのかもな」


「えっ? まさか」


笑おうとすると、プルプルとバッグが振動する。

えっ、本当に私がお金の心配をしたから?


「まさか、揺れたのか?」


「うん」


「金稼ぎは任せろって事か」


いや、それはと思ったがまたバッグが揺れる。

バッグが揺れた事はドルイドさんにも分かったみたいで、驚いた表情をした。


「凄いな」


「駄目ですよ、頼り切ったら私がダメ人間になってしまいます」


「いや、アイビーなら大丈夫だろう」


私なら大丈夫?


「ソラたちがお金を稼いでくると言っても止めるだろう?」


「もちろんです、自分で出来ることは自分で。お金だって頑張って稼ぎます!」


「だから大丈夫なんだよ」


狩りを頑張るぞって拳を作ると、ドルイドさんが断言した。

『だから』の意味が分からない。


そう言えば今のドルイドさんは落ち着いている。

お店の中では、ちょっと今までに見たこと無いほど興奮しているように見えたのだけど。


「ドルイドさん、落ち着きました?」


「あ~、もう大丈夫」


「そうですか、ちょっと驚きました」


「ハハハ、悪い。誰かのために服を選ぶのって楽しいな」


ドルイドさんを見る。

ちょっと恥ずかしげに笑っている。


「次、私にドルイドさんの服を選ばせてくださいね」


ドルイドさんに選んでもらった服、みんな可愛かったな。

旅をしているとどうしても、汚れたり破れたりするけどなるべく大切に着よう。


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― 新着の感想 ―
娘への買い物なんてそんなもんだ。 予算決めてるだけ偉いぞ
[気になる点] さて、ドルイドさん呼びはいつまで続くやら(笑
[一言] 私も孫娘の服を選ぶ時両手に抱えるぐらい選んじゃう…そして、娘(孫娘のママ)に1〜2枚を残して却下される…
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