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206話 約束です!

12時を少し過ぎた商業ギルド前でドルイドさんを待っていると、走ってくる姿が見える。


「ごめん。遅れてしまった」


「いえ、って、どうしたんですか? 随分と疲れているようですけど」


ドルイドさんのようすに、走ってきた以上の疲れが見える。


「ハハハ、アルミに見つかった」


あらら、それは。


「ご苦労様です」


「アイビーと約束していてよかったよ。これが無かったら、今日は徹夜だったかもしれない」


大きなため息をつくドルイドさん。

徹夜は大変だな。


「あの、ギルマスさんは大丈夫でしたか?」


「ハハハ」


笑って答えないドルイドさん。

これは、大丈夫じゃないんだろうな。


「あとで差し入れでも持っていきましょうか?」


「ダメダメ。行ったら、帰れなくなる」


それは、ちょっと私も遠慮したいな。


「それより、登録と口座を作りに行こう」


「……そうですね」


ギルマスさん、ごめんなさい。

アルミさん、ちょっと勢いが怖いです。

それに徹夜もちょっと……なので、遠くから応援しておきます。


ドルイドさんの後に続いて商業ギルドに入る。

朝の喧騒が落ち着いている時間なので人はまばらだ。


「あっ、いたいた」


「えっ?」


「昨日、話を訊いた人だ。彼女にお願いしよう」


「はい」


ドルイドさんと私が、1人の女性に近づくとその人は笑顔であいさつをしてくれた。


「こんにちは」


「こんにちは、昨日訊いた家族登録をしたい。それと家族口座を作りたいのだが」


「分かりました。書類はこちらです。記入をお願いいたします」


ドルイドさんのことを覚えていたようで、滞りなく書類がでてくる。

さすが、ベテランさんかな?


「ありがとう。アイビー、あっちで書こうか」


「はい」


書類にそれぞれ名前と年齢を書きこむ。

そして、家族登録することをお互いが承諾していると言う欄にチェックを入れる。

ドルイドさんは親(保護者)の部分に何か書き込んでいたが、よく見えなかった。

書き終わると、書類と一緒に私の場合は口座カード、ドルイドさんは商業ギルドのカードを提出。

5分も掛からず家族登録が出来てしまった。


「すぐに出来るモノなんですね」


あっという間過ぎて、驚きだ。


「アイビーの口座カードがあったからな。アレが無かったら、もう少し時間がかかったとおもう」


「そうなんですか?」


「あぁ、なんせ保証人の欄にすごい名前が載っているからさ」


「えっ?」


私の口座カードの保証人?

私の保証人はラトメ村のオグト隊長にオトルワ町のギルマスさんに自警団団長のバークスビーさんだ。

彼らがすごい人たちだという事は知っている。

でも、それがどう関係してくるんだろう。

私が首を傾げると。


「俺はこの町の出身で、ある程度名前が知られているから問題ないが。アイビーはこの町とは今まで縁がなかっただろう?」


「はい」


「保証人があの3人以外だった場合、アイビーに調査が入った可能性がある。口座カードにある保証人に身元の確認がされただろうし」


「そうなんですか? あっ、もしかして彼らに迷惑が?」


「それは大丈夫。保証した人物を見て、アイビーは問題なしと判断されたみたいだから」


「そうですか。よかった」


「それにしても、最低2日はかかると説明されていたから、それがたった5分足らずで登録が完了するとは驚いたな。やはりあの3人はすごいな」


「最低2日が、たった5分ですか……すごいですね」


ドルイドさんの話に驚いていると、新たに2つのカードが机に置かれる。

家族登録が出来たので家族口座を作ってもらっていたのだ。


「お待たせいたしました。こちらが家族カードとなります。カードは2枚でよろしかったでしょうか?」


「はい」


私が持っている口座カードは白の無地だが、家族カードは白のプレートに赤と青の線が2本描かれている。

なんだかドキドキするな。


「では、こちらにそれぞれの血をお願いいたします」


2枚の家族カードの上に、それぞれ丸い透明の物が置かれる。

……これって、口座カードを作った時の。

うろ覚えの記憶を頼りに、凹んだ部分に指を入れてグッと押し付ける。

僅かにチクリとした痛みを感じた瞬間、プレートが光り名前と年齢と、ドルイドさんの名前が浮かび上がる。


「ドルイドさんの名前も出ました」


「こっちはアイビーの名前だったよ」


なるほど、家族の名前が表示されるのか。

面白いな。


「ご苦労様です。家族登録も家族口座開設も無事に終わりました。あと何かお手伝いできることはありますか?」


「大丈夫です、ありがとう」


「ありがとうございます」


ドルイドさんに続いてお礼を言う。


「可愛らしい娘さんですね。これからお父さんは色々と心配事が増えますね」


えっ?

心配事?


「アイビーはしっかりしているから大丈夫だと思うけど、周りがうるさくなるかな?」


「たぶん。だって、とても可愛らしいお嬢様ですもの」


「ハハハ、ありがとう。余計な虫がつかないように気を付けるよ」


何?

むしがつかないように?

無視? 虫?

余計な虫?

これから行く場所には、何か怖い虫でもいるのかな?

虫は平気だけど、怖い虫とかちょっと嫌だな。


お姉さんの所を離れてギルドの隅に並んでいる小部屋に向かう。

口座の確認と家族口座へのお金の移動だ。


「ドルイドさん、怖い虫ってどんな種類の虫なんですか?」


「えっ? 怖い虫? えっと、何の話?」


あれ?

もしかして何か間違えた?


「えっと、さっきお姉さんと話している時に、虫を寄せ付けないように気を付けるって。だからこれから向かう村には何か怖い虫でもいるのかと」


「なるほど」


何故かドルイドさんに頭を撫でられた。

そして嬉しそうに『気にする必要は全くないから気にするな』と力強く言われた。

なんだかそれ以上聞いてはいけない雰囲気。

気になるけど、話してくれないだろうな。

またの機会に、そっと訊いてみよう。


「さて、まずはアイビーの口座の入金確認だな。で、家族口座にお金の移動」


「はい」


「アイビーの口座にはしっかりとお金は残しておくこと。これは約束な」


「……はい」


私の口座からも旅費を出してもいいが、口座の半分以上は駄目だと言われた。

俺もアイビーが旅費を出すことに賛成したのだから、この意見に賛成すること、と。

言いくるめられたような気もするが、ずっと意地を張りあっていても進展しないので諦めた。


「では、確かめます」


「はい」


多額の入金に恐さもあるが、全ての金額の半分しか旅費に出来ないのでちょっとでも多いと嬉しいと言う気持ちもある。

複雑だ。


小部屋の1つの部屋に入って、小窓の前にある白い板の上に口座のプレートを置く。

すぐにずらっと数字が並び、最後に残高が浮かび上がる。


「おぉ~」


「えっ! 4分の1にすればよかった」


私が残高を見て驚いていると、後ろでドルイドさんが何かを呟いた。

不思議に思いドルイドさんを見ると、眉間に皺が刻まれている。


「ドルイドさん?」


「金額だが」


「半分です!」


私の断言に、軽くため息をつくドルイドさん。

絶対に譲りませんよ。


残高は190ラダルを超えていた。

金板19枚だ。

忘れていたけど組織を潰した時に100ラダル貰っていたな。

あまりのことに記憶の片隅に追いやって、すっかり忘れてた。

そう言えば、あの時は懸賞金もあったな。

この間のポーションと魔石の金額も含めて、いつの間にか190ラダルも稼いでいたみたい。

なので旅費には95ラダル。

えっと金貨にすると……95枚。


「やった、金貨95枚を旅費に回せます!」


私の言葉にドルイドさんがちょっと不満な声を出したけど約束は約束です。


「失敗したな、アイビーがここまで稼いでいるなんて」


なんだかぶつぶつ言っているけど無視しよう。

これでドルイドさんだけに負担をかけずに済みそうです。

ソラとフレムのお蔭だな。

シエルもグルバルを討伐してくれたし。

本当に私は仲間に助けられているよな。


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― 新着の感想 ―
>お待たせいたしました。こちらが家族カードとなります。カードは2枚でよろしかったでしょうか こちらから何も(二枚作ってください等)いってないなら『宜しいでしょうか』か『よろしいでしょうか』です。 よ…
[気になる点] じわじわとアルミとの絡みを見てみたい気持ちになる。 [一言] アイビーは稼ぎまくってるなー
[良い点] 孤独だったアイビーちゃんについて家族が良かったね。あっ、ごめん、ごめん、ソラもシエルもフレムもアイビーちゃんの家族でしたね。 [一言] アルミさん怖し。ドルイドさん、ギルドの役員では無いの…
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