16話 思いがけず問題だらけ
目の前でプルプルしているソラに一安心。
消えなくてよかったと思った時に、崩れスライムには1日しか寿命がないと、本に書いてあったことを思い出した……。
明日になったら消えちゃうの?
不安を感じてソラを見ると、ソラも私を見ている。
なぜか見つめあって数分。
……何をしているのだろう?
もう一度、ソラの事について本で確かめてみる。
[最弱スライムと言われるレアスライムは、ほぼ1日で消える事が確認されている]とある。
ただ、[このスライムについては未知な事も多い]とも書いてあった。
……つまりは、分からないという事だろうか?
それだったら、大丈夫だと信じよう。
せっかく仲間になれたのに、消えてしまうなんて悲しすぎる。
……きっと大丈夫。
ソラは私を見つめたまま、プルプルと震えはじめた。
何かを訴えているような気がするけど…分からない。
テイムした魔物とは、意思の疎通ができると書いてあったけれど。
……ごめんね、分からない。
そっと抱えるように持ち上げると、村を目指すため村道へと戻る。
いつまでも、ここにいてもしょうがない。
村を目指しながら、これからの事を考える。
テイム出来た興奮が落ち着いてくると、問題がある事に気が付いた。
崩れスライムは弱すぎてテイムできないと、本に載っている。
それがテイムされていたら、どう思われるだろう?
……とりあえず、ソラの事は見られないようにしよう。
普通のスライムとは見た目が違うから、ばれる可能性が高い。
……もしかして、新しい仲間は問題だらけ?
……
進めていた足を止める。
人の声が聞こえたような気がした。
耳を澄ませると、複数の人の話し声が聞こえる。
どうやら村が近いようだ。
いつもより気が付くのが遅れた。
他の事に、気を取られていた。
気を付けないと。
腕の中にいるソラを見る。
どうしようかな。
森の中に置いていくなんてできないし。
悩みながら村に近づくと、人の気配が近づいて来るのが分かった。
やばいと思って、マジックバッグにソラを入れる。
すぐに3人の冒険者が森から姿を現す。
狩りでもして来たのだろう、少し大きいヘビを手で持っている。
なぜか解体もせずに、急ぎ足でラトト村へと向かうようだ。
ゆっくり歩きながら、彼らの姿が見えなくなるのを待った。
ホッとした瞬間。
「あっ、マジックバッグに入れちゃった!」
ソラを入れたマジックバッグを見つめる。
正規版も劣化版も、生き物はマジックバッグには入らないと聞いている。
入れようとすると弾き飛ばされるのだ。
周りを見るがソラの姿はない。
……もしかして消えちゃった?
急いで、森へ入って村道から離れる。
周りを確認して気配がない事を確かめながら、倒れた木の上にバッグを置く。
1つ深呼吸をして、バッグに手を入れてソラを探す。
すぐに手の上に少し冷たいモノが乗った。
…よかった。
手を引き出すと、ソラがプルプルと震えている。
はぁ~、全身から力が抜けて、その場に座り込んでしまう。
ソラはどういうわけか、マジックバッグに入れても大丈夫のようだ。
知られていないだけで劣化版の中には、大丈夫なモノがあったのかもしれない。
あっ、そうか!
バッグに入れられたら、一緒にいる事が出来るし、見られることもない。
思いがけず分かった事だけど、これで悩みが解決した。
解決……なんだけど……えっと。
「ごめんね、ソラ。ゴミ用のバッグに入れちゃって」
そう、とっさにソラを入れたのはゴミを溜めていたバッグ。
たしか変色したポーションとか破れてしまった服とかが入っていたはず。
「ごめんね」
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