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157話 最善の答え

人生思い通りになる人なんて少数だ。

ほとんどの人が色々な事を諦めながら、それでもその時その時の最善を選んで生きている。

ドルイドさんが星を奪った。

それが無意識だったとしても、怒りを抱くだろうし恨むだろう。

でも、それをいつまでも引きずっていても、現実は変わらない。

ならば、どんなに悔しくても恨んでも憎くても前に進むしかないのだ。


私は昔、両親を恨んだ。

でも今は違う。

今は正直感謝している。

産んでくれてありがとうと。

そう思えるようになったのは、きっと色々な人に出会い支えられたからだ。

ただ、両親に会いたいかと言われたら絶対に会いたくはないが。


「離れる事で落ち着く事もあります。まぁ、激高する人もいるでしょうが」


ドルイドさんを恨んでいるあの人は、目の前に恨む存在があるから囚われている可能性もある。


「俺の存在が……」


「まぁ、それも本人次第です」


ドルイドさんは随分と迷っているようだ。

答えは今すぐというわけではない。

このオール町のグルバルの問題が解決しないとドルイドさんはここを離れられないだろうから。

……そういえば、忘れていたけど幸香の問題もあったな。

あれ、どうなったんだろう。


「ドルイドさん、ゆっくり考えて答えを出してください。いつでもいいので」


「アイビーはいつまでここに?」


「あ~、とりあえず幸香の問題がしっかりと解決するまでは、旅に出る事はありません」


ギルマスさんは問題ないと言うだろうが、相手がそう思うとは限らない。

特に私に問題を、押し付けようとしているようだからな。

ここで旅立ったなんてことになったら、逃げたと騒がれそうだ。

……やっぱり、問題の中心部分にいつの間にか立ってるよね。


「あぁ、あれか。今度は俺が仲間を殺して魔物のせいにしていると騒いでいるらしい」


「……はっははは……もう、なんて言っていいのか」


「本当にな。旅の話だが、少し待ってほしい」


「もちろんです。ドルイドさんにとって最善の答えを出してください」


「あぁ、ありがとう。あっ!だからか」


「何がですか?」


「いや、アイビーと話していると、不思議な感覚になるんだ。年下なのにまるで年上と話しているような。これってやっぱり前世の記憶があるからなのかな?」


「……おそらく」


やはり影響は大きいよね。

知識は混じっているし、感情も時々同調していると感じる時があるし。

第三者から見ると不思議なもしくは不気味な存在なんだろうな。

……不気味って、自分で考えたことだけど悲しいな。


「アイビー?」


「ぷっぷぷ~」


不意にソラの声が響いたと思ったら、ドルイドさんの頭の上にソラ。


「「…………」」


どうしてそこなの!


「すみません」


謝るしかありません。


「いや、大丈夫。話が終わったのが分かったのかな?」


ドルイドさんの言葉に確かにと思う。

ソラは賢いからな。

道案内以外でだが。


「ぷぷ~」


「てぃりゅ~」


フレムも起きたようだ。

この子は本当によく寝る子だ。


グルルル


「フレム、シエルおはよう」


「にゃうん」


シエルを見ると可愛く首を傾げて私を見ている。

……忘れていたな。

シエルの額にある、テイムの印から私の魔力を感じる問題について。


「ドルイドさん。魔力がほとんどない者が上位魔物をテイムしたという話を何処かで聞いたことありますか?」


「残念ながら無いかな」


「そうですか」


無いのか。

いや、もしかしたら大変な事態だから隠している事もあるかもしれない。


「そういえば、シエルはテイムしてないって言っていたよな?」


「はい。シエル、私の魔力を真似して印につけたりした?」


「にっ!」


「そっか」


……違うのか。

だったら、本当にテイムできたという事?

どうやって?


「えっと、今のは?」


シエルとのやり取りを見たドルイドさんが不思議そうな表情をしている。


「あの『にっ』というのは、違うと言う意味です。なので魔力は真似していないそうです」


「すごいな。もしかして答え方で分かるの」


「はい」


すごい事なのかな?

それより私はシエルをテイム出来たのだろうか?

あの印から感じる魔力は、確実に私のだ。


「テイム出来たの?」


「出来ていると思うぞ。まぁ、テイムできる条件からはかなりかけ離れているが、アイビーだからな」


私だからで済ませないで欲しい。

それにしても、原因が分からないけどテイムはうれしい。


「テイム出来たんだって。シエルは問題ない? 私でいい?」


「にゃうん」


良いのか。

本人が良いのならいいか。


「これからもよろしくね」


「にゃうん!」


嬉しいのかな、声のトーンが上がった。

喜んでくれたのはうれしい。

でも。


「被害が出る前に、尻尾の動きは抑えようか」


相変わらず尻尾が激しく動くと、風で枝や葉っぱが舞っている。


「びっくり箱の中身がどんどん増えていくな」


ドルイドさん、その表現はどうなんだろう。

一緒に旅をすると、彼もその中身の1つに?

そういえば、さっきそんな内容の事を言っていたな。

びっくり箱か……いや、集めていないから!


「集めていません!」


「勝手に集合してきているって感じかな?」


私が星なしで、次に崩れスライムのソラ、次にアダンダラのシエル……。

考えたらもっと集まって来そうな気配が……。

慌てて考えを振り払う。


「ははは、まさか」


「アイビー、顔が強張っているよ」


「気にしないでください」


「ははっははは。あ~、アイビーといると時間が早く進むな。そろそろ町に戻るか」


「そうですね」


随分とここで話し込んでしまったな。


「このまま一緒に広場に行って、夕飯をご馳走になろうかな」


あっ、そういえば今日もよろしくお願いしますと言っていたな。

忘れていた。


「はい。今日もよろしくお願いします」


「アイビー、ご馳走になるのはこっちだから。ってそろそろソラ、頭から降りようか」


あっ、頭にソラが乗っていたんだった。

当たり前みたいに頭の上で寛いでいるから、気にならなくなっていたな。


「ぷ~?」


「ソラ、町へ戻るから頭から降りてね。さすがにソラを頭の上に乗せたまま町へは戻れないから」


そんな事をしたら、ドルイドさんの評判が。

……面白いおじさんに、ふっ。


「アイビー、いったい何を想像したのかな?」


「いえいえ、別に」


やばい、表情に出てしまったかな。


「戻りましょう!」


ソラとフレムを専用のバッグに入れて、シエルとはここで別れるのだが。

何故かシエルは、とてもうれしそうに森の奥へ走り去っていった。


「なんだかシエルの機嫌がかなり良くなかったか?」


「はい。あっ、罠の見張り」


「そういえば、やる気だったな」


「無理はしないで欲しいですけど」


強さは分かったが、やはり心配だ。


「大丈夫だよ、強さだけでなく頭もかなり良いみたいだからな」


確かにシエルはかなり頭が良い。

私の言っていることをしっかりと理解してくれている。

なんだか考えれば考えるほどすごい子をテイムしてしまったな。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 本当にテイム出来てるの?って聞いてほしかった
[一言] テイマーっていろんな小説に出てくるけど、優秀なテイマーって魔力以外に、テイムする対象と心を通わせることができるとか多いし、相手から好かれて勝手に強制的にテイム状態になるのとかあるから、シエル…
[気になる点] んぅ、一般論だと魔物側が抵抗するから魔力量がたくさん必要になると思うので信頼が築けてるなら必要最小限でいけると思う
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