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141話 私の性格?

「……本物のアダンダラか……」


グルバルの死骸の横にちょこんと座っているシエル。

その姿を呆然と見つめるギルマスさん。

何とも言えない光景に、ドルイドさんは苦笑いをしている。


「すごいな。本物か~」


やはりアダンダラという魔物は珍しいという事なんだろうな。

しきりにシエルを見つめてすごいと言っているギルマスを見て思う。

私にしたら、転がっているグルバルの死骸の方がすごいのだが。


「あの、グルバルの方は」


「おっ、あぁ、そうだったな」


もしかして、忘れてた?


「どうする? アダンダラに狩られたって発表できるか?」


「あ~、無理だな。アダンダラは冒険者にとっては興味の対象だ。怖いが見てみたいってな」


「確かに、若い連中は森に探しにきそうだな」


「あぁ、探すことを禁止しても聞かない連中もいるからな。ちょっと待て、確かめる」


ギルマスさんがグルバルの体を調べだす。

何をしているのだろう?


「そうだな、『何かの魔物』でいいだろう。牙が食い込んだ痕と爪の傷痕があるぐらいで他に目立った損傷はない。これだったら何が襲ったかは特定できないはずだ」


「それで納得するか?」


「俺が目撃したと言えば、誰も何も言わないだろう」


そんな事でいいの?


「アイビー、ギルマスってそれなりに信頼されているから」


「ドルイド、お前それなりっていうのはないだろうが」


「ん? あぁ、つい本音が出てしまった」


ドルイドさんって中位冒険者だと言っていたけど、ギルマスさんと随分と仲がいいな。

というか、言葉に容赦がないというか。


「ほら見ろ、お前のせいでアイビーが俺を疑っている」


「えっ?」


疑う?

何を?


「たぶん違うぞ。考えていたのは俺達の関係だろう?」


「はい」


「ギルマスと俺は、同じ人に基礎を叩き込まれたんだ。それもあって先輩として尊敬しているんだよ」


「……ドルイドの態度を見て、尊敬していると思う奴はまず1人もいないと思うがな」


確かに。

からかって楽しんでいるようにしか見えない。


「ハハハ、それより方針が決まったんだから戻って、これの処理をしよう。町の連中も落ち着くだろう」


そうだった。

グルバルをどうするか決めてほしいから、ギルマスさんを連れてきたんだった。

どうもギルマスさんとドルイドさんが一緒にいると、話がずれていくな。


「そうだな。あとは任せておけ。あ~グルバルの群れをアイビーが見つけてドルイドに伝えて、ドルイドが俺に伝えたって事にしておくから。で、俺達が来たら既にこの有様って事でいいな?」


「分かった。上手くやってくれよ。アイビーが目立たないように」


「目立たないように?」


「あぁ、アイビーは目立ちたくないようだ」


ドルイドさんの言葉に頷く。


「そうか。だが、その姿で1人旅だ、既に目立っていると思うが」


そうなんだよね。

私は気付いていなかったけど、ラットルアさんに言われた。

私の……幼い姿で1人だと目立つって。


「今回の事では、目立たないようにしてくれ」


「了解」


話が(まと)まったので、町へ戻る。

その前に、シエルの傍によってソラ達が入っているバッグを肩から掛ける。

バタバタするので、シエルに守ってもらっていたのだ。

ギルマスさんに聞こえないように、お礼を言ってグルバルの傍から離れるように言う。

喉をグルグルと鳴らすと、颯爽と森の奥へと走っていった。


「かっこいいな」


ギルマスさんの言葉に、ついつい何度も頷いてしまった。


ギルドではギルマスさんがいなかった事で、少し混乱が起こっていた。

だが、グルバルの群れの情報が入ったので確認していたとギルマスさんが話すと落ち着いたようだ。

それに、疑問が浮かぶ。

ギルマスさんが動くのってもっと後だと思うのだけど、誰も疑問に思わないのかな?


「あのドルイドさん」


「どうした?」


「上位冒険者はいないのですか? ギルマスさんが率先して動く事に違和感を覚えて」


救援に来てくれたのも、上位冒険者ではなかった。

何だかおかしい気がする。


「アイビーってちゃんと見ているんだね」


「えっ?」


「いや、なんでもない。オール町には少し前まで5チームの上位冒険者がいたんだが」


何だか歯切れが悪いな。


「言いにくい事でしたら……」


「いや、大丈夫。2チームの連中が組織に手を貸していたんだよ。それで上位冒険者が足りない状況ってわけなんだ」


またあの組織だ。

本当に被害が大きい。


「そうだったのですか」


「あぁ。それに今は、残った上位冒険者がグルバルの状況を確認するために森の奥に行ってて不在だし」


だからこの町の人達は異様に不安そうだったのかな?

広場まで行く間に見た人々の表情が、やたら怯えていたのを思い出す。

もしかしてシエルがグルバルを狩ったのは、良い事だったかも。


「話は、終わったみたいだな」


ドルイドさんの言葉にギルマスさんに視線を向ける。

周りにいる人達の表情が明るい。

やはりシエルは良い事をしたみたいだ。


「そうだ。ギルドに登録しているか? ってしてたら門の所でギルド証を提示しているな」


「そうですね。していません」


「だな。あとでギルマスに謝礼金は特別枠でと言っておくよ」


謝礼金の特別枠?

というか、また謝礼金?


「えっと、何に対しての謝礼金でしょうか? あと特別枠って何ですか?」


「謝礼金はグルバルを見つけた事に対して、特別枠とは手数料は引かないようにって事かな」


手数料?

もしかしてギルドに登録していないと、手数料が引かれるの?

でも、今までの謝礼金で手数料についての説明はなかったけどな。

引かれているのかな?


「どうした?」


「いえ、なんでもないです」


もしかして今までも特別枠とか?

そう言えば、ラットルアさんに謝礼金の金額を訊かれたな。

ボロルダさんにも、セイゼルクさんにも。

不思議に思ったんだけど、皆ももらっている謝礼金だから隠すことなく言ったけど。

そう言えば、訊ねてきた全員が嬉しそうに頷いていたっけ。

ラットルアさんに関しては、一緒だねって言われたな。

あの時は意味が分からなかったけど、そうか手数料を引かれない特別枠になっているか確かめていたのか。

何だか、こっそり優遇されているな。


「気にしないようにな」


「えっ?」


「アイビーって何と言うか、特別とか手助けされるのとか苦手そうだから」


そうかな?

でも確かに、同じ冒険者という思いはあるかもしれない。

ずっと年下だし、駆け出しだけど。

何かしてもらえるのはうれしいけど、なんだか悪いなって考えてしまう。


「あっ、そうだドルイドさん、夕飯を食べに来ませんか? 場所は広場なんですが」


今日のお礼がしたい。

だったら作るより、奢った方がよかったかな?


「アイビー、言ったそばから」


「えっ?」


「いや、アイビーの性格なんだろうな。今日はこの状態で慌ただしいから、明日お願いしようかな」


私の性格?

あ~、そうか。

対等でいたいという思いから、手助けされた事に対してお礼がしたいと考えるのか。

面倒くさい性格かな?


「どうした?」


少し下を向いて考え込んでいると、心配そうな声が聞こえてきた。

慌てて、顔をあげて首を横に振る。


「大丈夫です。夕飯ですが無理にとは言いませんので」


「無理ではないな。1人暮らしだから助かるし。ありがとう」


綺麗な笑顔で言われるとホッとする。


「苦手な食べ物ってありますか? あと好きな物も」


「嫌いな物は野菜で、好きなのは肉だな」


「えっ!」


何だかものすごい子供っぽい事を聞いたような。


「いやっ、冗談だぞ」


ドルイドさんは焦って否定しているが、おそらく本当の事だろうな。

言っている時の雰囲気が本気だった。

野菜が苦手……ソースにしてお肉に掛ければ、美味しく食べられるはずだ。


それにしても野菜が苦手なのか。

ドルイドさんの全身を見る。

冒険者だけあって、がっしりとした体格だ。

……背も高い。

野菜が苦手な人もちゃんと背が伸びるのか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 『ギルマスさんの言葉に、ついつい何度も頷いてしまった。』 そこね。 『野菜が苦手な人もちゃんと背が伸びるのか。』 そこ?
[良い点] 実家は散々でしたけど、出会う人たちには恵まれてるよね、アイビー。美少女だからこれから気をつけてほしいところ。新たな出会いに期待です。 [気になる点] 赤いスライム、何が得意になるのかしら。…
[気になる点] 食事をほぼ初対面の子供がお礼におごる・・・・・・事案?
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