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133話 洗濯日和

「ふ~、これで最後~」


絞った毛布を木に掛ける。

今日はかなり天気がいいので、太陽の光の下で乾かせば短時間で乾いてくれるだろう。

太陽の位置を確かめると、ちょうどお昼ぐらいだ。

見渡す限り青空なので、雨の心配もない。

洗濯日和というモノだな。


「それにしても疲れた」


汚れた服に、ござが5枚。

ござの上に敷く布が3枚。

これが大きいので、思ったより大変だった。

そして寝る時の毛布が2枚。

これも、水を含むと重く途中でシエルが協力してくれた。


ソラは最初、私の周りを元気に跳ね回っていたが疲れたのか今は寝ている。

オール町へ進みながら川を探す事を朝提案すると、2匹は賛成してくれた。

特にソラはテンションが高くなったので、もしかしたら寝ている毛布の汚れが気になっていたのかもしれない。


自分自身も川で汚れを落とす。

思ったより髪に砂が入り込んでいたのか、数回洗ってようやく綺麗になった。

夏の旅は汗をかくため毎日体を拭いてはいるが、やはり川などで汚れを落とすと違う。

全身がさっぱりする。


乾いた布で髪と体を拭いて服を着る。

使った布を洗って、木に掛ければ洗濯はおしまい。


シエルも、水が平気なようで川に入って汚れを落としていた。

それに触発されたのか、ソラが川に飛び込んだ時は驚いた。

すぐに、シエルに救出されていたので安心したが。

ときどき、ソラは無謀な挑戦をする。

ちなみにソラは、水にゆっくりと沈んで浮き上がってこなかった。


2匹が休憩をしている木陰に行く。

シエルの濡れた毛も、既にあらかた乾いたようだ。

隣に座ってお昼を食べる。

洗濯前に作っておいた、干し肉と根野菜のスープ。

旅立つ前日に、ギルマスさんから贈られた野菜だ。

栄養が何とか言っていたな。


「美味しい~」


オトルワ町を出てから初めてのスープだ。

少し熱いが、それもいい。


それにしても、暑いね~。

スープを飲みながら思うのもなんだけど。

この前の雨は、もしかしたら夏の中盤辺りになったらくる暴雨かもしれない。

これが来たという事は、夏も半分終わったという事だ。

そうなると、冬の事を考えないとな。


「冬はどこで過ごそうかな。慣れていないから2ヶ月ぐらいは動かない方がいいよね」


冬の旅はかなり余裕を持って動く事が基本だ。

雪がどれくらい降るか予測できないため、間違って動くと危ない。

特に私の様に旅に慣れていない者は、初めての冬で死ぬこともある。

というか、冒険者が冬で死ぬ理由の一番が凍死だそうだ。

なので、寒さを感じたら町や村で待機。


今が夏の半分として、移動できる期間は2か月ぐらいかな。

オール町からだと何処ぐらいまで進めるだろう。

バッグから地図を出す。

2つの村に大きな町が1つ。

移動できるとしたらこれぐらいかな。


オトルワ町のように、何があるか分からないから余裕を持った日程を組んでおこう。

寒さって早まる年もあるから、気を付けないと駄目なんだよね。

あれ?

シエルって冬眠するのかな?


「シエル」


私の呼ぶ声に、寝ていたシエルがスッと目を開ける。


「シエルは冬眠するの?」


「にっ」


この鳴き方は、しない方だな。


「冬の間、私とソラは村か町に待機になるのだけどシエルは近くの森にいる?」


「にゃうん」


「雪が酷い時は、会いに行けないのだけど大丈夫?」


大雪になると入口を閉めて出入りを止める事があると聞いている。

なので、会いに行くことが出来なくなってしまう。


「にゃうん」


1匹だけというのは心配だけど、仕方ないか。

シエルが大丈夫と言うのだから信じよう。


ん~、大きい町や村だと見回りなどでシエルと会える場所が遠くなるんだよね。

近くで会うためには、普通の村ぐらいがいいかな?

あっ、そうなると宿の値段が少し高くなるな。


通って来た村や町で宿を調べているが、大きな村や町だと下級冒険者のための安宿がある。

私は、それを狙うつもりだったのだが。

普通の村だと、安宿は少なく値段も大きな町より高めだった。

今年はお金に余裕があるから大丈夫としても、これからの事を考えると出費は抑えていかないとな。

やっぱり、旅のお供の人と話し合って商業ギルドに登録をお願いするしかないかな。

そうすれば、森で見つけた物や狩った獲物を安定して売れるはずだ。


今まで出会った肉屋の店主はいい人ばかりだった。

だが、運が良かっただけだとギルマスさんに注意を受けた。

やはり、商業ギルドを通さないと買い叩かれるのが当たり前の様だ。

話を聞いていると、ギルドの値段の半分という事もあるそうだ。

特に狩った肉は、鮮度が大切で時間がたてば値段が下がる。

そこに付け込まれるそうだ。

って、今は冬の宿の問題だった。

何だか、考える事がいっぱいあるな。


「ぷっぷぷ~」


ソラの声に、シエルのお腹の辺りを見る。

シエルのお腹の毛に埋もれるように寝ていたソラが、目を開けてじっとこちらを見ている。


「おはよう、ソラ」


「ぷ~、ふ~」


何とも力の抜けた鳴き声だな。

様子を見ていると、プルプルと揺れたと思ったらゆっくりと目が閉じていく。

……もしかして寝ぼけているのかな?


「ソラ?」


シエルもじっとソラの様子を見ている。

ソラは目を閉じて、また寝始めた。

やはり寝ぼけていたようだ。


「寝ちゃったね」


「にゃうん」


なんとなく小声になる私とシエル。

ソラの事だから普通に話しても起きる事はないと思うのだが。


「あ~。ぽかぽかして気持ちがいい~」


腕を上に思いっきり伸ばす。

暑いのだが、川の傍なので風が気持ちいい。

洗濯物が乾くのを待っているのだが、寝てしまいそうだ。

って、ここで寝てしまったら絶対に後悔する。


「乾いた洗濯物からしまっていこうかな。シエル、ソラの事お願いしていい?」


「にゃうん」


「ありがとう」


そっと頭を撫でてから、木陰の気持ちのいい場所から離れる。

太陽の下に出ると、ぐっと気温が上がった気がする。


「暑いな~」


洗濯物を触って確認していくと、服は既に乾いているようだ。

さすがに、夏の日差しと風で乾くのが早い。

毛布はまだ少し濡れているような気がするので後。

ゴザと、その上に敷く布は乾いていた。

1つ1つ、汚れを調べてからマジックバッグに仕舞っていく。

頑張って洗ったかいがあったようで、汚れは綺麗になっている。


「ふ~、あとは本当に毛布だけだな」


毛布もあと1時間もあれば乾く程度だ。

木陰に戻ると、何とも気持ちよさそうな寝顔が2つ。

そこに飛び込んで、一緒に寝たくなるな。

まぁ、無理なんだけどね。


「シエル、ソラ。そろそろ町へ向かう準備をしてください」


シエルが目を開けると、お腹にいるソラをツンツンと鼻でつつく。

それにプルプルと揺れるとソラが目を開ける。


「ソラ、今度こそおはよう。そろそろ準備をしてくれるかな?」


シエルは前足をぐっと伸ばして体をほぐしている。

ソラもその様子を見てから、体をプルプルと揺らして体をほぐしている? つもりなのだろう。

いや、もしかしたら、本当にほぐれているのかもしれないな。

起きたら、よく揺れているし。


使った食器やお鍋を洗って綺麗にしてからバッグに仕舞う。

こまごました準備をしている間に、毛布が完全に乾いていた。


「さて、行こうか」


太陽の位置から考えて、あまり町へは進めないだろうな。

まぁ、今日は仕方ない。

それにしても、久々の洗濯に気持ちがすっきりしている。

汚れた物が綺麗になるのっていいよね。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 『ちなみにソラは、水にゆっくりと沈んで浮き上がってこなかった。』 ソラちゃんには「魔法の水」じゃなくて「普通の水」が必要なのでしょうか?
[良い点] シエルとソラに用意してと話しかけるところが敬語になっていて可愛いな〜と思いました。 最初はミスかな?と思いましたが、普段から敬語を使ってるアイビーだから無意識に敬語に戻ってるんだと思えまし…
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