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125話 謝礼金と懸賞金

良かった、大金を持ち歩く必要は無いみたいだ。

金額が金額なので口座に入れてくれるらしい。


「これを確認してほしい」


団長さんに数枚の紙を渡される。

見ると組織壊滅における功労者一覧とある。

そこに私の名前を見つけた。

私の他には、セイゼルクさん達の名前が並んでいる。

何だか、自分の名前が一緒に書かれている事が不思議だ。


2枚目に目を通す。

組織についての事が書かれている。

関わっていた貴族の一覧に見慣れない印があった。


「あの、これは何ですか?」


「あぁ、王家の親族という意味だ」


王家の親族……5つも印があるのだけど。

他にもこの町に関わりのある貴族や、近くの町や村の貴族達の名前が書かれているそうだ。

詳しくないので団長さんが教えてくれたが、本当に規模の大きい組織だったのだろう。

書かれている名前の数が多い。


3枚目は、冒険者ギルドからの報告書だ。

読んでいくと、捕まえた指名手配犯58人 調査対象45人とある。

この町で捕まえた人数以上の数だ。

他の場所にも匿われていた犯罪者がいたという事か。

殺人による指名手配犯が多いのだが、他にも窃盗団や盗賊団、結婚詐欺までいる。

本当にすごい集団だな。

こんな人達を抱え込んでいた組織に、狙われていたのかと思うと寒気がした。


「大丈夫か?」


私の表情が強張ったのだろうか?

団長さんが心配そうに聞いてくる。


「はい。あまりにすごい組織だったので、ちょっと怖くなりました」


「まぁな。俺もそこまで巨大な組織だとは考えていなかったから、情報が入ってくるたびに驚いたよ」


「そうなんですか?」


本当に壊滅してくれてよかった。


「ありがとうな、アイビー。ちゃんとお礼を言っていなかったからな」


「そんな。私は何もしていませんよ。団長さん達が諦めなかったからです」


「ハハハ、ありがとう」


しみじみと言われてしまうと照れてしまう。

ちょっと赤くなっているだろう顔を伏せて、最後の紙に目を通す。


「はっ?」


書かれている事に、思わず声が洩れる。

えっと、何度か瞬きをしてみる。

もしかしたら見間違いかもしれない。

うん、変わらない。

どうやら見間違いではないようだ。

最後の紙には謝礼金と懸賞金の金額が表示され、その下には内訳が書かれている。


『謝礼金として金板10枚100ラダル、懸賞金として金板5枚50ラダル』


金貨50枚は50ラダルで金板5枚だ。

ラットルアさんとシファルさんが予想した3倍。

さすがに覚悟をしてきたが……えっと、あっ、王家から謝礼金が特別に出ている。

これで金額が跳ね上がったみたいだ。


「すごい金額ですね」


「どうやら組織が手を伸ばしていた王家の親族に、かなりやばい人物が紛れ込んでいたみたいだな」


「かなりやばい人物?」


「今の王に影響を及ぼせる人物。それを防いだから、その金額のお礼が出ているんだよ」


なるほど。

……それにしても、すごいな。

怖いな。

あ~、この金額が口座にあると思うだけで怖い。


「どうした? 何か問題が?」


紙を見て眉間に皺を寄せていると、団長さんが訊いてくる。

この金額でも、団長さんにとっては少しの驚きで済むんだろうな。

おそらくセイゼルクさん達も。

お金の価値感が違うからね。


「いえ、問題ありません」


「そうか。納得出来たら名前を記入してくれ」


「はい」


最後の紙の下に、名前を書く欄がある。


「まだ誰も確認していないんですか?」


「アイビーが一番最初だよ。一番の功労者だからな」


いや、それは違うと思うが。

たぶん言っても流されるだけだろうな。

名前を書いて、紙を団長さんに渡す。


「よし、これで確認作業は完了。お金は口座に入れたらいいのか?」


「はい。お願いできますか?」


「問題はないが、明日になるがいいか?」


「はい」


「分かった。あっ、口座のプレートを預かる事になるんだが」


団長さんの言葉に、持ち歩いている口座管理のプレートを取り出し彼に渡す。

プレートを確認した団長さんは、何か紙を持ってきて名前を記入して私に差し出した。

見ると口座プレートを預かったという証明書のようだ。


「お金が入ったらすぐに旅立つのか?」


「準備は終わっています。ただ、肉屋の店主にあるお願いをされてしまって」


「お願い?」


「はい。野バトを狩って来てほしいと」


「野バト? あ~、そういえば結婚記念日か」


えっ?

結婚記念日?

私が首を傾げると、団長さんは笑って教えてくれた。

肉屋の店主の奥さんは、野バトが大好物らしい。

そして、4日後が結婚記念日らしい。

それで店主としては、野バトを手に入れたいのだろうと。


「なるほど」


だから、この話をした時に少し顔が赤かったのか。

体調を心配した時かなり慌てていたので、おかしいなと思ったのだが。

あれは照れていたのを言われて、恥ずかしかったのか。

……申し訳ない事をしてしまった。


「しかし、あいつが奥さんのために野バトをね~」


「知り合いですか?」


「まぁな。俺が自警団で駆け出しの頃、ちょっと悪さをしたから捕まえた事があるんだ」


そうなの?

ものすごく気のいい人に見えるけど。

それに若い人達の面倒も見ているようだし。


「まぁ、今は落ち着いて不安定な奴らの面倒を見ているよ。自分が経験してきたから分かるんだろうな、若い奴らの事が」


そうか。

シエルにお願いして、野バト頑張ってもらおう。

……私が自分で狩れないのが残念だな。


「はい」


目の前には、団長さんが差し出すカゴ。

受け取ってしまったが何だろう?

カゴの蓋を開けて中を確かめる。


「甘味が好きだと聞いたからな。やるよ」


カゴの中には美味しそうな焼き菓子。

昨日はラットルアさんの食べっぷりに引いてしまい、あまり食べられなかったのでうれしい。

さすがに目の前で、20人分ぐらいを勢いよく食べられると……引く。


「ありがとうございます。でも、いいのですか?」


何だかプレゼントの様に見えるのだが。


「あぁ、問題ない」


団長さんが問題ないというのだから、良いだろう。

ありがたく貰っておこう。

あっ、昨日ラットルアさんが食べていて気になった甘味も入っている。

うれしい。


「クッ、ハハハ」


いきなり団長さんが笑い出した。

何事かと視線を向ける。


「悪い。甘味を前にすると年相応だな」


どうやら甘味を前に顔がゆるんでいたようだ。

もしかして、にやけていたかも。

両手を頬にあて、ちょっとマッサージ。

……恥ずかしいな。


「悪い。悪い」


顔が熱い。

最近、照れることが多い。

ふ~、落ち着け。

深呼吸。


「えっと、ありがとうございます。頂きます」


「おう。プレートは、そうだな明日の昼以降に取りに来てくれるか?」


「はい。お願いします」


頭を下げてカゴを持って、団長さんの部屋を出る。

あ~、顔が少し赤いような気がするな。

それにしても、150ラダル。

金板15枚か、すごいな。

お金の事を思い出して、ちょっと震えてしまった。

奴隷を買う事や冬の事を考えるとうれしいが、少し金額が大きすぎる。


「この町もあと少しか、ちょっとさびしいな」


詰所を出て森へ向かう。

シエルに、野バトの狩りをお願いしなくてはいけないからだ。

ゆっくりと町を歩きながら周りを見る。

団長さんやセイゼルクさん達が守る、良い町だと思う。

また、必ず戻って来よう。


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― 新着の感想 ―
金貨150枚って日本円でいくらくらいだろう。 100ダルが5日分の食料ってことしか分からなくてこの世界のお金の価値がよく分からない。 150万円では少ない気がするけど1500万円だと高過ぎる気がするし…
[一言] そんなにいっぱいお金をもらったんだったら、奴隷を買うまで指名依頼したらいいのに…
[一言] 一気に小金持ちに! 悪い人に狙われない様にお金がある事も知られない様にする必要も出て来ましたね!
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