1085話 「剛」チーム
後片付け2日目の作業場所を確認するために、冒険者ギルドに入ると、ギルド職員さんの声が聞こえてきた。
「本日より、新しいチーム編成となります。体長1m超のノースが作業中の冒険者を襲ったためです。どのチームと組まれているか、確認をお願いします」
あれ?
もしかしたら「炎の剣」とは別の場所になるかもしれないの?
「アイビー、私達は一緒だから大丈夫よ」
不安そうな表情をしていたのか、ランカさんが私を見て微笑む。
「そうなんですね。よかったです」
ランカさんとお父さんがカウンターに向かうと、ギルド職員さんと話を始めた。
「話が長引いているな」
シファルさんが不思議そうに、ランカさん達を見る。
「ノースが出たから、予定が変わったのかもしれないな」
少し険しい表情でヌーガさんが呟くと、ラットルアさんが嫌そうな表情を浮かべた。
「ノースが出た場所に変更だったら嫌だな」
ランカさんとお父さんを見ていると、話が終わったのか戻ってきた。
「どうしたんだ?」
シファルさんの質問に、ランカさんが少し困った表情を浮かべた。
「まさか、作業場所が変わるのか?」
ラットルアさんが嫌そうに聞くと、ランカさんは首を横に振った。
「それは断ったわ。ただ、土魔法を持つ者達と一緒に行く事になったの」
「あれ? それは後片付けが終わってからじゃなかったか?」
ラットルアさんが不思議そうに首を傾げる。
「そうなんだけど、ノースが出た事で作業が遅れると予想されるから、森の整備も同時に行う事にしたみたい。その方が早く終わると思ったのかもね」
「森の整備は早い方がいいからな」
ランカさんに続きお父さんが説明すると、ラットルアさんも頷いた。
「誰が来るんだ?」
シファルさんが聞くと、ランカさんが肩を竦める。
「ここで待ってて欲しいそうよ。今、連れて来るからって言われたわ」
「大丈夫なのか?」
シファルさんが私をチラッと見る。
今日も噂のせいで、注目を浴びているから心配してくれているのかな?
「大丈夫でしょう。ギルマスも事情は分かっているでしょうから」
ランカさんがそう言うと、ある方向を見て、ホッとした表情をした。
「お待たせしました。土魔法を持つ『剛』チームです。今日から一緒に作業をしていただきますので、よろしくお願いいたします」
ギルド職員さんが紹介してくれた『剛』チームは4人。
土魔法使いだから体格は関係ないと思うけど、皆、かなり体格がいいな。
「お父さん、木の移動って、持ち上げて運ぶの?」
お父さんに小声で聞くと、傍にいたラットルアさんが笑い出した。
お父さんもちょっと笑っている。
「いや、魔法で移動させるんだ」
「あの体格だから、そう考えたのかもしれないけど、ちょっと無理があると思うぞ」
お父さんの説明に頷いていると、ラットルアさんが楽しそうに言う。
だって、木を持ち上げて移動している姿を思い浮かべても、違和感がなかったから……。
「はじめまして。剛のリーダー、ミンガです。仲間の、オッズ、ハグル、アートン。全員が土魔法を使います。今日からよろしくお願いしますね」
ミンガさんが頭を下げると、オッズさん達も頭を下げた。
「私の事は知っているわよね」
ランカさんがミンガさん達に視線を向ける。
「えぇ、何度か護衛で付いてもらいましたから」
ミンガさんの言葉に、オッズさん達が頷く。
「私、冒険者ギルドを辞めて、冒険者になったの。今は『炎の剣』のリーダーをしているわ。仲間の、シファル、ヌーガ、ラットルアよ」
ランカさんの紹介が終わると、シファルさん達が頭を下げた。
「はじめまして『星』のリーダー、ドルイドです。仲間は娘のアイビーだけですが、よろしくお願いします」
お父さんが紹介してくれたので、ミンガさん達に頭を下げる。
「この子が噂の……」
バシッ。
ハグルさんの小さな呟きに、オッズさんが彼の肩を叩く。
「すみません」
ミンガさんが謝ると、ハグルさんが少し罰の悪い表情をした。
「いえ、大丈夫です」
「行きましょうか。作業時間が短くなったから、早く始めないと、いつまでたっても終わらないわ」
ランカさんの言葉に、皆が森に向かって歩き出す。
「あのドルイドさん……」
王都の門を抜け森を歩いていると、ミンガさんがお父さんに声を掛けた。
「はい、なんでしょうか?」
「ギルマスから、ドルイドさん達について知った事は、全て内緒にするよう言われたんですが、理由はなんでしょうか?」
「ギルマス、面倒だからって、説明しなかったわね」
ミンガさんの話を聞いていたランカさんが、呆れた様子で呟く。
なぜかアートンさんが、ランカさんの話に深く頷いている。
「あ~、見せた方が早いですね」
お父さんが私を見て頷く。
ちょっと心配だけど、ランカさんも大丈夫というように頷くので、私はソラ達が入っているバッグを開けた。
「皆、出てきていいよ」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
「にゃうん」
バッグから出てくる4匹のスライムに、目を大きくするミンガさん達。
ハグルさんは、驚いたあと、嬉しそうに微笑んだ。
「可愛い」
あっ、ハグルさんは可愛い物が好きな人だ。
「なるほど、レアスライムのことを内緒にという……えっ!」
シエルが元の姿に戻ると、ミンガさん達の動きが止まった。
オッズさんは、その場に座り込んでしまう。
「「「「……」」」」
シエルをジッと見るミンガさん達。
「あの、ドルイドさん」
オッズさんがお父さんを見る。
「はい、なんでしょうか?」
「あじゃ……アダンダラに見えるのですか?」
一度言葉を噛んだオッズさんは、少し恥ずかしそうに言い直した。
「はい。アダンダラです。アイビーがテイムしています」
「なるほど、あぁ、そうですね。はい」
ミンガさんが何度も頷いている。
そして大きく深呼吸をすると、座り込んでいるオッズさんに手を差し出した。
「悪い」
ミンガさんの手を借りて立ち上がったオッズさんは、呆れた様子で呟く。
「戻ったらギルマスに文句を言いに行かないと。説明が面倒だからって、腰が抜けたらどうするんだよ」
えっ、腰が抜けそうだったの?
「俺も一緒に行くよ。さすがにこれは説明が欲しかった」
アートンさんも同じ気持ちなのか、二人で頷き合っている。
「歩ける?」
ランカさんが、オッズさんを見る。
「大丈夫です」
「では、行きましょうか」
ランカさんが歩き始めると、シエルが彼女の隣を歩き始める。
それを珍しそうに見るミンガさん達。
「なんだか、凄い光景ですよね」
オッズさんの呟きに、ミンガさんが頷く。
「俺は幸せだけど」
ハグルさんの呟きに視線を向けると、ソラ達を見ていた。
「あぁ、お前は幸せだろうな。それにしても、そのスライム達、ハグルが傍に来ても逃げないんだな」
アートンさんの言葉に、首を傾げる。
「逃げるってなんですか?」
ハグルさんはソラ達を近くで見ているだけなので、逃げる必要はないと思うけど。
「俺、動物や小さな魔物に、ことごとく逃げられるんですよ」
ハグルさんの説明に、ミンガさん達が頷く。
「そうなの?」
ランカさんも知らなかったのか、驚いた表情をする。
「はい。そうなんです」
凄く悲しそうに言うハグルさんに、ちょっと可哀想な気持ちになる。
「原因は?」
「それが分からないんです」
シファルさんの問いに、ハグルさんが首を横に振る。
「ちょっと傍に寄っただけで逃げるので……」
ハグルさんが悲しげに言うと、アートンさんが小さく笑う。
「体臭を気にしていた時期があったよな」
「うるさい」
ハグルさんがアートンさんを睨むと、アートンさんは肩を竦めた。




