表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1175/1179

1084話 「もしも」を考えて

冒険者ギルドに入ると、一瞬だけ静かになったけれど、すぐに騒がしくなった。

そして、あちこちから視線を感じた。


「少し面倒くさいな」


お父さんが、私の隣を歩きながら呟く。

お父さんと反対側にいたシファルさんも、周りを見ながら頷く。


「仕方ないよ。大物を狩った子供が、どんな子なのか、皆気になるんだから」


前を歩くラットルアさんが振り返って言う。


「まぁ、そうだけどな。でも、気にし過ぎだろう」


シファルさんが呆れた様子で溜め息を吐くと、ラットルアさんが笑った。


イーズイを狩ったら、こんなに注目を浴びてしまうんだ。

でも、私が狩ったというより、シエルが頑張ったというのが正しいんだけどな。


「あの子が? 本当に? 傍にいる冒険者の手を借りたんじゃないか?」


「うわ、不正で上位冒険者かよ。最悪だな」


少し離れたところから聞こえてきた声に、チラッと視線を向ける。

3人の若い冒険者が、私を睨むように見ていた。


「アイビー、気にしなくていい。自分達より幼いアイビーが、上位冒険者になったから気に入らないんだ」


不機嫌そうに言うお父さんに、私は笑って頷く。


「大丈夫、気にしていないから。それに、冒険者の手は借りなかったけど、シエルの力は借りたから」


私が小声で答えると、お父さんが首を横に振る。


「借りたではなく一緒に戦った、だな」


そうか、一緒に戦ったになるんだ。


「それにしても、あの日のシエルは凄いやる気だったよな」


「うん。目がキラキラしていたよね」


「見たかったな」


「俺も」


私とお父さんの話を聞いたシファルさんが呟くと、ラットルアさんも頷いた。


「やっぱり、絶対におかしいよな」


さっきの若い冒険者達は、もう少し周りに気を配った方がいいかもしれないね。

だって、周りの冒険者達が若い冒険者達を呆れた表情で見ているから。


「冒険者ギルドは金でも貰って――」


「お前達、いい加減にしろよ」


あっ、近くにいた冒険者が動いた。


「あの子の冒険者試験で試験官を務めたのは、ギルマスの相談役であるゴーコスさんだぞ。お前達、彼の決定に文句を言うのか?」


うわ~、若い冒険者達の顔色が一気に悪くなった。

でもまぁ、仕方ないよ。

冒険者ギルドまで馬鹿にしようとしていたから。


「お待たせ。今日の報告を済ませてきたわよ。ドルイド達の分も終わらせたからね」


えっ?

そういえば、ランカさんの姿が見えなくなっていたな。

報告をしに行ってくれていたのか。


「ありがとう、悪いな」


お父さんがランカさんに謝ると、彼女は笑って首を横に振る。


「気にしないで。ついでだから」


ランカさんはそう言いながら、怒られている若い冒険者達に視線を向ける。


「あの子達は何をしたの?」


ランカさんの質問に、ラットルアさんが簡単に説明する。


「そう。彼らの顔を覚えておかなくちゃ」


「顔を?」


ランカさんを不思議そうに見ると、彼女がにこっと笑う。


「そうよ。あぁいう子達と一緒に仕事をすると面倒くさい事になるから、顔を覚えておいて一緒の仕事にならないようにするの」


それで顔を覚えるのか。


「行きましょう」


ランカさんの言葉に頷くと、冒険者ギルドの外へ向かう。


「うわ、あの子達、凄い状態になっているわね」


ランカさんの視線の先を追うと、全身を血まみれにした4人の冒険者が、冒険者ギルドに入ってきているところだった。


「怪我をしたのかな?」


私の問いに、ランカさんが首を傾げる。


「それにしては、服はどこも破れていないわよ」


本当だ。

血が付いているけど、服はどこも破れていないみたい。

だったら、何があったんだろう?


魔物を討伐した時の返り血?

いや、4人が全身を血まみれになる事はないか。


「大丈夫? 怪我をしたの?」


4人の様子を見た冒険者ギルドの職員さんが、慌てた様子で彼らに近付く。


「違います。あの……」


職員さんの問いに、4人は困った表情を浮かべる。

そして、1人が少し前に出ると頭を下げた。


「ごめんなさい。木を細かくする時に魔法を使ったら……こうなりました」


「はぁ、魔法は使わないように言っておいたのに、使ったの?」


職員さんが溜め息を吐くと、冒険者達が体を小さくする。


「ごめん。まさか、こんな事になるとは思わなくて」


どうやら、4人の冒険者と職員さんは知り合いみたい。

呆れた表情になった職員さんに、冒険者達が本気で謝りだした。


「ふふっ。帰りましょう。お腹が空いたわ」


ランカさんが冒険者ギルドを出て行くので、少し冒険者達が気になったけど後を追う。


「お父さん、どうして彼らは全身が血まみれになったの?」


そういえば、木を細かくするのに魔法を使ったと言っていたよね?

魔法を使ったから全身血まみれになったの?


「俺達が片付けた場所にはいなかったけど、倒れた木の間に動物や小さな魔物が隠れていたり、討伐した魔物の一部が埋もれていたりするんだ」


「そうなんだ」


「うん。それに気付かず魔法を使って木を細かくすると、隠れていた魔物や動物、あと埋もれていた魔物の一部も一緒に細かくなってしまう。で、さっきの姿になるんだよ」


あぁ、なるほど。


「それで木を切る時は、斧を使ったんだ」


魔法を使わないから、少し不思議だったんだよね。


「うん。魔法を使って作業すれば、早く終わるだろうけどな」


ラットルアさんの呟きに、お父さんが頷いた。


大通りを抜け、貴族達の豪邸が並ぶ場所に来ると、ランカさんが振り返った。


「明日から、作業時間が短くなるから」


ランカさんの言葉に、全員が不思議そうな表情をする。


「何かあったのか?」


「うん。報告した時に聞いたんだけど、私達からは遠い場所を片付けていた上位冒険者を、巨大化したノースが襲ったらしいの」


「またノースが出たのか」


ランカさんの説明に、お父さんが嫌そうな表情をする。


「そうみたい。ただ、ドルイドが討伐したノースより小さいみたいだわ。明日になればもっと詳しくわかる筈よ」


「作業時間が短くなるのはどうして?」


ノースが出たのはわかったけど。


「力を残しておくためよ」


ランカさんの説明に首を傾げる。


「ノースに襲われた時に作業で疲れ切っていたら、戦う事も逃げる事も出来ないかもしれないでしょう?」


確かに、今日の皆の状態だったら、ノースを倒すのは大変かもしれない。

逃げる事は出来るだろうけど。


「片付けに魔法を使わないのも、もしもの時に魔力切れを起こさせないためでもあるのよ」


そうなんだ。


「ランカさん、教えてくれてありがとう」


私がお礼を言うと、ランカさんが微笑んだ。


「ノースか。あの魔物、多産だよな」


シファルさんの呟きに、ランカさんが嫌そうな表情をした。


「巨大化しても多産だった場合……考えたくないわね」


確かに、あんな魔物があちこちから出てきたら嫌だな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アイビーが上位冒険者になってしかも捨てられた大地に行くと知ったらオグト隊長とヴェリヴェラ副隊長はどんな反応するかな?めっちゃ見てみたい。 ソラやフレムやソルの存在は世間でも確認されててもう隠す必要は割…
なるほどシエルに粉砕してもらうわけにはいかんのか。
中にいたのにチェーンソーとかウッドチッパー的なのを使ってしまったのかな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ