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1081話 森の片付け

「チーム登録をしたいのでお願いします」


お父さんがカウンターでそう言うと、男性職員さんはお父さんと私を見て、笑顔で頷いた。


「わかりました。ギルドカードに記録しますので、カードの提出をお願いします」


お父さんと私が冒険者ギルドのカードを男性職員さんに渡すと、彼は2枚のカードを青い箱の上に置いた。


「チーム名はなんでしょうか?」


「あっ、えっと……」


男性職員さんの質問に、お父さんが私を見る。


「何がいい?」


「全く考えていなかったね」


急に言われても何も思い浮かばないな。


「アイビー。よかったら『星』なんてどうだ?」


お父さんが私を見る。


「星?」


「うん」


星かぁ。

呼びやすいしいいかも。


「うん、『星』にしよう」


お父さんと私の会話を聞いていた男性職員さんが、微笑ましそうに頷いた。


「では『星』で登録いたしますね。……はい、終わりました」


凄く簡単にチーム登録が出来るんだね。


「これは……。すみません、少しお待ちください」


男性職員さんがギルドカードを確認していると急に席を立ち、奥の部屋に向かった。


「どうしたんだろう?」


私の問いにお父さんが首を横に振る。


男性職員さんはすぐに戻ってくると、カウンターに2枚のギルドカードと小さな木箱を置いた。


「こちらの木箱は、冒険者になった記念品です。提出していただいたイーズイから……えっ、イーズイを君が? あっ、失礼しました。イーズイの一部を加工して作られた物となります」


書類を読んでいた男性職員さんが途中で目を大きくして私を見た。

狩った魔物がイーズイだと知って、驚いたみたい。


「ありがとうございます」


ギルドカードと木箱を受け取ると、隣のカウンターにいた冒険者達が私を見た。


「皆が待っているから行こうか」


お父さんが、ラットルアさん達がいる方を見て言う。


「うん」


皆の所へ向かっていると、後ろから「イーズイ」という言葉が聞こえてきた。


「これは、噂になるな」


お父さんの呟きに、私はお父さんを見た。


「やっぱり?」


隣の冒険者達が凄く興味津々みたいだったから、なんとなく嫌な予感がしたんだよね。


「うん」


「どうしたんだ?」


私とお父さんの様子に首を傾げるラットルアさん。


「冒険者になった記念品を貰ったんだけど、隣にいた冒険者達の興味を引いたみたいで」


私の説明に、皆の視線が私の持っている木箱に向く。


「『イーズイを狩って冒険者になった子供がいる』って、今日の夕方には噂になっているだろうな」


シファルさんの言葉に、ラットルアさんが笑う。


「森から戻ってきた時が楽しみだな。どんな噂になっているのか」


噂になるのは遠慮したいけど、どんな噂になるのかちょっと気になるな。


「私達はそれが本当の事だと知っているけど、ほとんどの者は噂を聞いても信じないわよね? 私だって本当の事を知らなければ、信じないと思うわ。だってあの面倒くさいイーズイを、子供が狩るのよ?」


ランカさんの言葉に、ラットルアさんが頷く。


「そうだろうな。だからこそ、どんな噂に育つのか楽しみなんだよ」


「まぁそうね。そうだ、ドルイド、アイビー。書類を読んで問題がなければサインをお願い」


ランカさんが、1枚の書類をお父さんに差し出した。


「上位冒険者に出された特別依頼か」


お父さんが書類を受け取ると、内容を確かめてからサインをした。


「アイビー」


お父さんが私に書類を渡す。


「これは、上位冒険者を集めた理由と仕事内容が書かれた書類だ。読んで問題がないと思ったら名前を記入してくれ」


「わかった」


書類を受け取り、内容を確かめると、お父さんの名前の下に自分の名前を書いた。


「ありがとう」


ランカさんに書類を渡すと、彼女は2枚の書類を提出しに行った。


「さぁ、行くわよ」


すぐに戻ってきたランカさんの手には、「冒険者ギルド」と書かれたマジックバッグが握られていた。


「お父さん、あれは何?」


ランカさんが持っているマジックバッグを指して、お父さんを見る。


「片付けるのに必要な物が詰め込まれているマジックバッグだ」


「必要な物?」


「そうよ。魔物自体は既に移動が終わっているでしょうけど、残った大量の血とか、出来てしまった魔物の通り道を、どうにかするのに必要な物が入っているのよ」


私が不思議そうに、ランカさんの持っているマジックバッグを見ていると、彼女が説明してくれた。


「倒した魔物が多いと、残る血の量も多くなる。そのままにしておくと魔物を惹きつけるし、木々にも影響が出たりするんだ」


ランカさんに続いて説明してくれたシファルさんに視線を向ける。


「今まで残った血を気にした事はなかったけど、あれも問題だったの?」


あれ?

でもシファルさん達も魔物を狩った後に残った血を気にした事はなかったよね。

血溜まりを燃やして処理した事はあるけど。


「数匹分の血くらいなら問題ないんだ。でも、今回はちょっと数が多くて、残された血も大量だから処理が必要なんだよ」


あぁ、残った量の問題か。


王都の門を抜け、森に出る。


「門、直っていたね」


私の呟きに、お父さんが門へ視線を向ける。


「王都を守る要だから、すぐに直したんだろう」


森の中を歩くと、木々ではなく血の臭いが漂ってきた。

問題が起こった日は感じなかったけど、時間が経って血の臭いが濃くなったのかな?


「ねっ、処理が必要でしょう?」


ランカさんが私を見る。


「そうですね」


これは、けっこうしんどい仕事になりそうだな。


冒険者ギルドから指示された場所に来ると、魔物が通ったのだろう。

大量の木々が倒れていた。


そして、あちこちに飛び散っている血に、血溜まりが多数あった。

森に入った時は濃い血の臭いに「うっ」としたけど、森の奥に入って来ると血の臭いと腐敗した臭いが混ざり始め、どんどん臭いが酷くなった。


「まず、この臭いをどうにかしないと作業出来ないわね」


ランカさんが冒険者ギルドから受け取ったマジックバッグの中身を確認する。


「血を処理するのは……これね」


ランカさんがマジックバッグから大きな瓶を20本取り出す。


「瓶の中身を血溜まりに注いでくれる?」


「「「「「わかった」」」」」


大きな瓶を持つと、周りを見渡す。


「アイビーは慣れていないでしょうから、近くの場所から処理してくれていいわよ」


ランカさんが一番近くにある血溜まりを指す。


「ありがとう」


瓶の蓋を開け、溜まった血に注ぐ。


ブクブク、ブクブク。


赤黒い血溜まりに瓶の中身が触れると、ブクブクと泡が出来る。

最初は赤黒い泡だったのが、時間が経つと白い泡に変わっていく。

そして、泡が消えると血溜まりがなくなっていた。


「凄い。血が消えた」


瓶を見ると、それほど大きな血溜まりではなかったため、半分くらい残っている。

周りを見ると、すぐ傍に今処理したのと同じくらいの大きさの血溜まりがあったので、残りをそこに注ぐ。


1本を使い切ると、次の瓶を持って血溜まりを探し、瓶の中身を注ぐ。

何度も繰り返していると、ほんの少しだけ臭いが落ち着いた気がした。


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― 新着の感想 ―
後れ馳せながら、明けましておめでとう御座います。 一昨年、アニメでアイビーに出会い、数ヵ月前にたまたまコミックを読む機会に恵まれ、続きが知りたくて原作を読み始めて、やっと追い付きました。 笑いあり…
これでアイビーも「星」一つ
星のせいで苦労してきた2人が星の名を冠するなんて何か良いなあ。自分は好きです。
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