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1078話 今の気持ちは?

コンコンコン。


「アイビー、入ってもいいか?」


お父さんの声に、ベッドの縁に座り、部屋の扉へ視線を向ける。


「どうぞ」


捨てられた大地からリュウが溢れた日の翌日から、私は熱を出して寝込んだ。

いつもだったらフレムが治してくれるんだけど、今回は少し良くなるだけで、完全には治らなかった。


不思議に思っていると、お父さんが「心労からくる体調不良だからだろう」と言った。

経験の浅い冒険者によくあるらしい。

でも、私は殺気にも慣れているし、魔物に囲まれる事も既に経験している。

だから「今さら?」と首を傾げていると「リュウの威圧と殺気のせいだろう」と教えてくれた。


確かにあれほどの殺気と威圧を感じた事は今までになかった。

今でも思い出すと、体が震える。


「大丈夫か?」


「うん、もう熱も引いたし大丈夫だよ」


熱を出してから3日目。

2日目に熱は引いたけど、無理をしないようにと皆に言われて、今日までゆっくり過ごした。


「良かった」


お父さんを見ると、真剣な表情をしていた。


「どうしたの?」


ベッドの傍にある椅子に座ったお父さんが、私を見る。


「聞きたい事があるんだけどいいか?」


「うん」


「捨てられた大地へ行きたいという思いは変わらないか?」


お父さんの問いに、私は自分の手を見る。


リュウに遭遇した日、捨てられた大地へ行こうという思いは強くなった。

でも、今の自分の状態から、すぐに「行きたい」とは言えなくなった。


私は弱い。

リュウに遭遇した事を思い出すだけで震えるなんて。

でも、木の魔物が王都を襲う原因があるなら、なんとかしたい。

その思いは強く心にある。


「アイビー」


「はい」


お父さんを見ると、微笑んで私を見ていた。


「リュウを見て震えたのはアイビーだけじゃないぞ。俺もあの時は震えていた」


「えっ?」


お父さんも?

いや、お父さんが震える筈はないから、私の為に嘘を言っているのかな?


「嘘だと思っているだろうけど本当だ。ちなみにジナルだって震えていたからな」


「……本当に?」


「当たり前だろう。あんな恐ろしい存在が目の前にいるんだぞ? 震えない者がいるなら、見てみたいものだ」


怖いと思ったのは私だけじゃなかったんだ。


「あんな存在がいる捨てられた大地へ行こうとするのは覚悟がいる」


「うん」


「今の、アイビーの気持ちは?」


リュウがいる場所に行くんだと思ったら怖いと感じる。

でも、


「行きたい。木の魔物が王都を襲う姿は見たくない」


だって、木の魔物はトロンのように、命を削って私達を守ってくれている。

そんな彼らが、どうして王都を襲うのか。

きっと原因があると思う。


「分かった」


「でも、今の私だと皆の足手まといになる。だから、もっと強くならないと駄目だよね」


「強さか」


「うん」


お父さんを見て真剣に頷く。


「アイビーが捨てられた大地へ行きたいと言うだろうと思って、今まで以上に強くなろうと特訓を積んできた」


お父さんの言葉に頷く。


「でも、リュウを目の前にして無駄だったと気付いたんだ」


「えっ?」


「いや、言い方が悪いな。強くなった事は無駄にはならない。でも、捨てられた大地にいるリュウと戦おうと考えた事が無駄だった、だな」


リュウと戦おうとした事が無駄?


「あんな強い存在に戦いを挑もうとしていたなんて、死にに行くようなものだ」


「あっ……それは、お父さんも?」


お父さんは凄く強いのに。


「あぁ、おそらく一瞬で死ぬな」


一瞬!

あのリュウは、そんなに強かったんだ。


「あれ? そんなに強いリュウがいるのに、未来の私はどうやって捨てられた大地の奥へ行ったの?」


未来視がくれた本には「1人の女性とその仲間達が封印された大地の奥に辿り着く」と書かれてあった。

あっ、そういえば「魔物の制圧が成功した」とあったから、木の魔物とリュウの暴走を食い止めたのかな?


「俺もそれが気になったから、もう一度本に載っていた内容を確かめて、気付いた事があるんだ」


お父さんに視線を向けると、険しい表情をしていた。


「『捨てられた大地より木の魔物達とリュウ達が溢れ出て王都を襲う』と書かれてあっただろう」


「うん」


「『魔物の制圧が成功した1年後、冒険者達は捨てられた大地の奥に向かう』とも」


「うん、覚えているよ」


「どうして最初はリュウ達と木の魔物達と書いておいて、次は魔物と書いたんだろうな」


お父さんの疑問に私は首を傾げる。


「リュウと木の魔物を纏めて『魔物』と表現したんだと思うけど?」


気になる事かな?


「それも考えたんだけど、リュウ達と書いてあっただろう?」


「うん」


「1匹ではなく複数のリュウが暴走したとして、人が制圧出来ると思うか?」


「それは……絶対無理だと思う」


リュウと遭遇した時の恐怖を思い出してぶるっと体が震える。

2匹で、あの状態。

複数のリュウに襲われるなんて……考えただけで恐ろしい。


「『数年続いた戦いにより、王都は崩壊寸前』と書いてあったけど、複数のリュウが暴走したら数ヶ月で崩壊する筈だ。もしかしたら、数ヶ月もいらないかもしれない」


「うん、数ヶ月もいらないと思う」


「魔法陣で狂ったリュウがもの凄く弱くなるのなら可能性はあるけど、リュウの子供を見る限りそれはなさそうだしな」


「そうだね」


未来視は、リュウ達と木の魔物達が王都を襲うのを見た。

でも、それが違った?


「お父さんは、王都を襲うのはリュウ達や木の魔物達ではないと思うの?」


私の問いにお父さんは神妙に頷く。


「そうだな。リュウの強さを考えれば、王都が崩壊寸前というのはおかしいからな」


「うん。そうだね」


未来視は、一体何を見たんだろう?


「あっ、アイビーの質問の答えだけど、『捨てられた大地に向かった冒険者の多くは、帰ってこなかった』とも書かれてあった事から、捨てられた大地から強い魔物がいなくなった訳でもないと思う。そうなると、未来のアイビーが捨てられた大地の奥へ行けたのは、きっと強さ以外の何かだと思う」


「強さ以外?」


私の呟きに、お父さんが頷く。


「もちろん、あそこにはリュウ以外の魔物がいる。だから、強さも必要だと思う。でも奥へ辿り着くには、強さだけでは駄目なんだと思う。まぁそれが何かと聞かれると困るんだけどな」


「強さ以外……私が持っている力?」


私にあるのはテイマーとしてのスキルだけど……。


「フォロンダ公爵に、未来視と話が出来ないか相談するつもりなんだ」


お父さんの言葉に驚いて目を見開く。


「未来視と? でも彼らは隠れているんでしょう?」


「うん。でも、隠れていた原因になった組織は壊滅したから、そろそろ密かに会うくらいは出来ないかと思って」


「そっか。彼らが隠れていた原因は、もういないんだったね」


教会の関係者は、奴隷落ちしているから。


「お父さんはフォロンダ公爵が、未来視が何処にいるか知っていると思っているの?」


「それは、分からない。でも、あのフォロンダ公爵だ。調べているだろう」


「それは、そうだね」


絶対に調べてはいるだろうね。


コンコンコン。


「アイビー、シファルだけど入っていいかな?」


「どうぞ」


皆が、毎日様子を見に来てくれるのがちょっと嬉しい。


部屋に入ってきたシファルさんは、私に近付くとおでこに手を当てる。


「熱もないし、顔色もいい。もう大丈夫そうだな」


「うん。心配してくれてありがとう」


シファルさんは小さく笑うと、私の頭を優しく撫でた。


「そうだ、明後日。セイゼルクのお別れ会とランカのリーダー就任祝いをする事になったんだ。2人も参加してくれるよな?」


「うん、もちろん」


「俺も参加させてもらうよ」


そっか。

セイゼルクさんとはあと少しでお別れなんだ。

寂しくなるなぁ。


「何かプレゼントを送りたいな」


「明日、一緒に買いに行こうか」


「うん」


お父さんの言葉に笑顔で頷いた。


家族皆で使える物を探そう。


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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます イロイロと勝手に未来視してワクワクしています アイビーはテイマーじゃなくて、いろんな魔物と お友達になれるステキなスキル持ちだから
リュうをテイムしよう!
帰ってこなかったということは、住み着いたかもしれない?
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