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1065話 お父さんの再登録試験

試験を受けに行くため、シエルにはスライムに戻ってもらう。


「やっぱり不思議じゃなぁ」


スライムになったシエルを見て呟くゴーコスさん。

そんなゴーコスさんの様子に、ジナルさんが笑っている。


「あっ、ゴーコスさん」


「なんじゃ?」


ゴーコスさんがお父さんを見る。


「冒険者ギルドに再登録をしたいんですが、こちらも試験が必要なんですよね?」


「あぁ、そうじゃ。今の実力を確かめるために、冒険者同士で戦ってもらうんじゃ。冒険者を辞めた時に上位冒険者だったら上位冒険者と、中位冒険者だったら中位冒険者とじゃ。ドルイドだったら……」


ゴーコスさんはそう言いながら、お父さんの全身を見る。


「上位冒険者とじゃろう」


「んっ? 俺は冒険者を辞めた時、中位冒険者でしたので、再登録の試験では中位冒険者が相手になる筈ですよ」


「はっ?」


ゴーコスさんはお父さんを訝しんで見つめる。


「その筋肉の付き方や、使い込まれた武器と身のこなしを見れば、どう見ても上位冒険者、それもかなりの熟練者にしか思えんのじゃが?」


「いえ、本当に冒険者を辞めた時は中位冒険者でした」


お父さんの言葉に、ゴーコスさんは納得がいかない表情でジナルさんを見る。


「本当ですよ。まぁ、実力はゴーコスさんの想像通りだと思いますが」


「なるほど、訳ありなんじゃな。今回はどうするんじゃ?」


ジナルさんの説明を聞いたゴーコスさんは、何度か小さく頷くとお父さんを見た。


「上位冒険者を目指します」


「ん~、特別ルールでの試験を受けるのはどうじゃ? ドルイドを中位冒険者にしておくのは、少しの間だとしても勿体ないじゃろう」


お父さんの宣言に、ゴーコスさんが提案する。


「特別ルール?」


お父さんが不思議そうにゴーコスさんを見る。


「そうじゃ。冒険者ギルドが出す条件を達成できれば、上位冒険者になれるんじゃ。ただし、条件はかなり難しいから、最初の試験で合格出来る者は少ないんじゃけどな」


ゴーコスさんから話を聞いたお父さんは、少し考えると頷いた。


「それでお願いします。条件はなんでしょうか?」


「1人で上位魔物、もしくは冒険者ギルドで問題になっている魔物を討伐することが条件じゃ。ただし、問題になっている魔物が弱い場合は、上位魔物の討伐が条件となるんじゃが。できそうかの?」


ゴーコスさんがお父さんを見る。


「分かりました。今、冒険者ギルドで問題になっている魔物はいるんですか?」


「たぶん、少し前に出ているはずじゃ」


ゴーコスさんの返答に首を傾げる。


「では、それを確認しに行きますか」


ジナルさんが部屋の扉を開けると、冒険者ギルド内が騒がしい事に気付いた。


「やっぱり」


お父さんの呟きが聞こえ視線を向けると、お父さんは肩を竦めた。


「ギルマスを、凄い勢いで連れて行っただろう? さすがに書類が溜まっているくらいで、あれはないだろう」


あぁ、何かがあったから急いでギルマスを探していたのか。


「書類仕事をさせるために、逃げ回っているギルマスを探していたのは本当じゃろうけどな」


呆れた表情で言うゴーコスさんに、皆が苦笑した。


ゴーコスさんとお父さんが、特別ルールでの試験を受けるための手続きに向かう。

その間に、冒険者達の会話に耳を傾ける。


「巨大化したノースがまた出たらしい」


えっ、また出たの?

探した時は見つけられなかったけど、やっぱりいたんだ。


「少し前に倒したって噂が流れなかったか?」


「あぁ、あれとはどうも別みたいだ」


冒険者達の話に首を傾げる。


別ってなんだろう?


「別? どう言う事だ?」


「前回のノースには角があったと言われているだろう?」


うん、確かに角がついていた。


「今回見つかったノースは、角はないけど爪がかなり鋭いらしい。しかも、かなり動きが速いそうなんだ。巨大化したノースを見つけた冒険者達は、自分達では倒せないと判断して、すぐに逃げたみたいだ。かなりの距離があったから大丈夫だと思ったみたいだけど、一気に距離を詰められて襲われた。たまたま近くに上位冒険者がいたから命拾いしたみたいだけどな」


「その上位冒険者は、ノースを倒さなかったのか?」


「冒険者を襲っていたノースは、かなり追い詰めたみたいだけど、不意を突いて逃げられたらしい。探したみたいだけど見つけられなかったので、戻って来たと聞いたよ」


上位冒険者を前にして逃げ切れるだけの早さ?

かなり凄いと思う。


あれ?

お父さんが倒すのって、まさか巨大化したノース?

いや、さすがにこれはないか。


「巨大化したノースか、ドルイドは運がいいな」


「えっ、どこが?」


ジナルさんの呟きに、私は視線を向ける。


「ドルイドは、巨大化したノースと既に戦った事があるから、どう戦えがいいか分かる筈だ。確かに、変化している場所が前とは異なるようだけど、急所は変わっていないだろうし。それに動きに対しても、おそらく問題ない」


そういうものなの?

私には、とても難しく感じるけど。


「アイビー、どうしたんだ?」


戻って来たお父さんが、私を見て不思議そうな表情を浮かべた。


「倒すのって、巨大化したノース?」


「あぁ、既に戦った事がある魔物で良かったよ」


私の質問に、ホッとした様子で答えるお父さん。


「でも、今回は1人でしょ? 大丈夫?」


お父さんを見ると、笑って私の頭を撫でる。


「大丈夫じゃ。さすがに巨大化したノースだからの。試験官の他に、2人の上位冒険者も一緒に行く事になったんじゃ。ドルイドの戦いぶりをある程度見たら、2人が参戦する予定じゃ」


良かった、1人で戦うんじゃないんだね。


「で、わしがドルイドの試験官もする事になったんじゃ。まずはアイビーの試験、その後にドルイドじゃ」


ゴーコスさんはそう言うと、冒険者ギルド内を見回した。


「ゴーコスさん、嬉しそうだね」


お父さんの試験官をすると言った時に、なんだか凄く嬉しそうだったのはどうしてだろう?


「冒険者ギルドの職員は、俺の試験には別の者に頼むと言ったんだけど『こんな楽しそう……いや、大変な事は自分に任せるんじゃ」って言っていたよ」


楽しそうって。


「ぷっ、ゴーコスさんらしいな」


お父さんの話を聞いたジナルさんが笑い出す。


「こっちじゃ」


ゴーコスさんが呼んだ2人の冒険者を見て、お父さんと顔を見合わせた。


「確かチーム「豪」のパパスとパガスじゃなかったか?」


お父さんの言葉に頷く。


「うん。ラットルアさんの知り合いの冒険者達だよね?」


貴族の豪邸前で襲われた時に、助けてくれた冒険者達だ。

まさか、こんな形でまた会う事になるなんて、思ってもみなかったな。


「えっ、ドルイドさんにアイビーさん? あれ? 試験って再登録じゃなかった? アイビーさんが?」


パパスさんが驚いた声を上げる隣で、パガスさんも驚いた表情をしている。


「アイビーは、冒険者登録試験だ。ところで、この依頼内容はどう聞いたんだ?」


「『再登録の特別ルール試験があるから行ってくれ。巨大化したノースが相手だから、確認後は一緒に倒してきてくれ』だって」


えっ、それだけ?


お父さんの質問に答えたパパスさんは、ゴーコスさんを見た。


「ゴーコスさんからの指名だと聞いてきたんですが……巨大化したノースに3人だけですか?」


「大丈夫、4人じゃ。全員揃ったし、行こうかの」


えっ、4人?

それに、パパスさん達に詳しい説明は?


「ジナルが4人目か」


お父さんの呟きに、ジナルさんが頷く。


「アイビーの試験を見ていくだけのつもりだったけど、巨大化したノースは手伝うよ」


ジナルさんが一緒に戦ってくれるなら安心だね。

それより、パパスさん達に詳しい説明というか、シエルの説明はしないのかな?


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― 新着の感想 ―
ドルイドの戦いは周りを燃やすことを気をつけるほうが退治より大変そうだ。
むしろ、ドルイドひとりで余裕(過剰戦力)なんじゃないか説あるんだけど・・・
あれ、アイビー&ドルイドが上位になったら 冒険者グループ?チーム?はどうなるんだろ 2人でチーム組むのか、炎の剣に入るのか? ドルイドの剣も、いろんな意味で炎の剣だし?
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